「鈴木」という名字に隠された「1円玉」との知られざる関係
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『写真:AFLO』

 

1円玉に描いてある植物は何でしょうか。神道やヤマトコトバを教えるときに、よくこの質問を生徒さんたちにいたしますが、正答率は極めて低いです。

 

神道文化の語り部として大尊敬する神社本庁総長、京都の石清水八幡宮宮司、神仏霊場会前会長の田中恆清(つねきよ)先生が神社本庁の研修で教えてくださったのですが、1円玉のデザインに採用された木は招魂(オガタマ)の木といいます。

 

よく神社の境内に生えているモクレン科の常緑樹です。実際には1円玉の木は特定の種をモデルにデザインされたのではないとされていますが、じつのところ招魂の木によく似ています。

 

招魂の木は1年に1度、こぶし大の実を付けます。神社の鈴はこの実をかたどったものです。招魂ですので、神霊や祖先の霊を招くために鈴を鳴らすわけです。日本のメジャーな苗字の「鈴木」もこの木に由来すると考えられます。

 

鈴の音が皆に鳴り響くように、最も小さな単位のお金のデザインに、鈴の原型となったアイコンを樹木からサンプリングして使用したわけです。

 

このように神道イズムはさりげない形で暮らしを祝福しています。神道イズムでは、ヤマトコトバは、「高天原(タカマノハラ/神道における天国・極楽・緑の園)で神様たちが話している言葉である」という信仰があります。

 

神社で御祈祷をするときには、神様に言挙げ(言葉に出してはっきりと表現すること)をするので、神様に通じるように全文をヤマトコトバで作文して、高らかに雅に奏上するのです。

 

ヤマトコトバは、心を耕し、和らげ、豊かな感情・情緒・精神を育む、数千年続いてきた私たちの母語です。ヤマトコトバの基となる、「アイウエオカキクケコ……」の五十音は、自然の音、森羅万象のすべてが、音として編集されたものです。

 

言葉の響きが心性をデザインしてきたと考えると、今の日本人の美徳であるエコロジー感、治安の良さ、非常時の落ち着きなどは、ヤマトコトバから来る感覚と関係があるという見立てができそうです。

 

人間関係も外交も、これからは道徳の時代です。相手の立場に立ち、共存共栄をはかる、言葉を尽くして共に栄えるくわだてをすることです。争えば滅び、和すれば栄えます。これはヤマトコトバの「ともいき(共生)」です。

 

言霊を活かして勇気と元気をシェアします。これを「たまふり(魂振り)」といいます。すべてに栄えあれ、と祝い、言挙げするのは「いやさか(弥栄)」です。古代言語であるヤマトコトバの世界には、この先の未来への知恵やエネルギーが蓄えられていると感じています。

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