「トクホのコーラ」欧米ではまったく認められていなかった
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『写真:AFLO』

 

国が認める特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品なら効くだろう……。そんなふうに思っていませんか? ところが、表示の含有量が含まれていなかったり、広告宣伝の行きすぎを消費者庁に指導されたりするなど、問題が表面化しています。そもそも、トクホであっても効果はごく小さく、欧米では「根拠が薄い」として表示を認められないものがいっぱいです。

食品は原則として、効果の表示を認められていません。例外的に認められているのは特定保健用食品(トクホ)と栄養機能食品、そして機能性表示食品の3つです。これらはまとめて保健機能食品と呼ばれています。

 

トクホは製品ごとに国が審査をして許可をしているので、信頼性はもっとも高いとされています。ただし、食品安全委員会、消費者委員会等が審査し許可するので、国に申請してから3年程度の時間がかかる場合もあり、企業の開発費用は1億円以上とみられます。食品の流行は激しく変わっていきますので、企業にとって利用しやすい制度ではありません。

 

栄養機能食品はビタミンやミネラル類など20成分の表示に限られます。含有量などの規格が定められ、それを満たしていれば国の審査や届け出などをせずに自主的に効果を表示できます。

 

でも、表示の文言は「ビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持を助けると共に、抗酸化作用を持つ栄養素です」などと所定のもので堅苦しく、こちらも企業にとってあまり魅力的とは言えません。

 

これらの欠点を踏まえ、機能性表示食品制度が2015年4月にはじまりました。国の審査がなく、企業が自己責任で表示します。その代わり、情報がある程度公開されて、消費者自身でチェックして購入するかどうかを決める仕組みです。

 

それ以外にも、巷には「○○に効く」と広告宣伝する製品があふれていますが、法的には表示を認められていません。役所はこれらを「いわゆる健康食品」と呼びます。「○○に効く」とパッケージにはっきり書けないからこそ、芸能人に体験談を語らせ雰囲気を盛り上げるような広告宣伝手法がとられています。深夜のBS放送や女性誌には、いわゆる健康食品の広告が氾濫しています。

 

トクホがはじまって25年。食品の機能性研究が盛んになりはじめた頃にできた表示制度で、当時は世界の最先端でした。関係する科学者たちは、世界の機能性研究を牽引する、と胸を張っていたものです。

 

しかし、時間がたち日本の研究は芳しくないものとなってきました。さらに、諸外国の表示制度も整ってくると、お粗末さも見えてくるようになりました。

 

健康効果の表示を認められる水準が、諸外国の食品に対する判断と比べると甘いのです。たとえば、かつお節オリゴペプチドは、欧州食品安全機関(EFSA)に対して、「ナチュラルな血圧をサポート」という表示をさせてほしい、という申請を出しましたが、2010年に却下されています。

 

EFSAの報告書によれば、人での科学的根拠はなく、「in vitro」、すなわち試験管内の試験や動物試験の結果も十分ではない、と説明しています。トクホ申請時に機能性を示す根拠となった論文がEFSAにも提出されたとみられ、同じ材料で判断が異なったのです。

 

同じように、トクホとして認められているけれどヨーロッパやアメリカでは科学的根拠が確立していないとして食品への健康表示が許可されなかった、という成分は、お腹の調子を整えるなどの効果をアピールするプロバイオティクス(ヨーグルトなどの乳酸菌製品)、脂肪の吸収を抑える、血糖値の上昇を抑えるなどとして大ブームになった清涼飲料水の主要成分である難消化性デキストリンなど、かなりの数があります。

 

日本ではあまりにも一般的で、効果が大々的に広告宣伝されているトクホ印のコーラなどが、EUでは表示を認められていない。これは、日本人にとっては結構ショックな事実ではないでしょうか。アメリカでも、政府は飲料に対しては、表示を許可していません。

 

今後研究が進み、効く根拠が積み重なれば、晴れて欧米でも「表示許可」となるのかもしれません。しかし、現時点ではダメ。トクホも機能性表示食品もその程度。なのに、広告・宣伝が派手で、大きな効果があり医薬品代わりにもなるかも、という過大な期待が持たれてしまっているのが現状です。

 

これらに薬のような効果を期待してはいけません。いえ、薬のような効果がないからこそ、食品としてあまり気を遣わずに食べられるのです。

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