2019/11/20
後藤由紀子 「hal」店主
『おいしい時間』アノニマ・スタジオ
高橋みどり/著
きちんと食べている人が好き。
精神的にも安定している人が多いように思う。
空腹時に語尾が強くなる人はいるけれど満腹時に不機嫌な人は少ないもの。
みどりさんは著書はじめスタイリングされている写真を長年拝見し続けてきた憧れのかた。
手がけるお仕事は食卓の中に、ちゃんと生活臭がして、
お茶や料理の香りまでも伝わってくるような体温を感じる。
日々きちんと暮らしきちんと食べていることが自然ににじみ出ているのだと思う。
1日の流れの中で軸となるのは食の時間。
その時間がおいしくたのしいときであることの大切さを、シーンごとにご紹介。
朝はお茶で始まりお茶で終わる。
どんなに忙しくても簡単な朝ごはんを食べ、体の調子を整えてその日ちゃんと動くための準備の時間ととらえている。
じゃこのおにぎりの写真がとても美味しそうな握り具合だった。
早速明日の朝、真似してみよう。
ふだんの食卓はご馳走ではなく旬のものをシンプルに楽しんでいるところも好き。
お茶についても、きめきめの作法で淹れるのではなく、みどりさんなりの端折り方と欠かせないポイントを読み、
端折りっぱなしの私は「それでも大丈夫よ」と言ってもらえているような安心感に包まれる。
10年先にいるそんな素敵な先輩の存在は財産だなーとしみじみ思う。
著書1冊目に登場する器を今もなお愛用されている。
長年かけて育ててきた器や道具は説得力がある。
どれもが過剰なデザインのものではなく実用性も伴っている。
器がかけても継いだり継がなかったり、その辺のゆるさもありがたい。
きっと買い物する先も同じパン屋さんだったりお茶屋さんだったり
長年かけて、お気に入りのものを選んでこられたんだろう。
派手さはないけれど、雰囲気がありしっくりくる。
その加減がとても心地いい。
誰にでも平等に与えられている食の時間。
「ただおなか一杯になればいい」という人もいれば「毎回楽しみ」という人もいる。
それはきっと十人十色でどれもが正解で、ちなみに私は後者。
類は友を呼びともいうべく、周りにはそんな人ばかりでありがたい。
ここ数年の暮らしに加わった黒磯の時間では都会にはないおおらかな暮らしがあるとのこと。
ご夫婦のお人柄も手伝って、お仲間もいる。
そんな変化をも自然な流れとして楽しんでいる姿勢は見習っていきたいなーと思う。
お母様の本棚の中もご紹介されていて、沢村貞子さんの「私の献立日記」について
「記録された献立の向こうには家族を思う気持ちを。仕事をしながらもきちんと毎日の料理を作る姿勢からは仕事する女性の生き方を自分というものさしを持つ大切さ、年を重ねていくことの覚悟をも感じます」
と書かれてあり、また私も読み返してみようと思った。
さて、今現在の私はこの本をどんな風に思うのだろう。
『おいしい時間』アノニマ・スタジオ
高橋みどり/著