危険なほどワクワクする。あなたは逃げたい自分を殺し、危険に飛び込めるか? 『自分の中に毒を持て』

大南武尊 研究員

『自分の中に毒を持て』青春出版社
岡本太郎/著

 

 

本書は、藝術家岡本太郎が自身の人生を振り返り、今までどう選択をしどう行動してきたか、その原動力は何かを語りかける人生論である。
大きな決断をしなければいけない人、やりたいことがないと悩む人、なんとなく惰性で生きている人、そして岡本太郎に興味のある人には是非読んで頂きたい。
キーワードは、自己との対峙である。

 

•『個』を出すということ

 

日本では他者と異なり、『個』を持つことが忌避されてきた。村というコミュニティを維持するために『個』を持った者は弾かれ、村八分に遭う。
しかし、歴史上この『個』が平穏を破壊し、変革を起こしてきた。事実、湯川秀樹や岡潔といった研究者然り、吉田松陰や杉原千畝といった偉人然り、そして岡本太郎自身然りである(早稲田でイノベーション研究をしている友人に話を聞いたが、『個』と変革について同じことを言っていた)。

 

集団で『個』を殺すのではなく、『個』を貫き通す。人と比べる必要なんてない。全力を注ぎ妥協せず、弱音を吐きたがる自分を殺し、無条件な情熱を持って挑む。『個』を貫くからこそ、出る杭となる。出る杭になるからこそ、変革を起こせるのである。

 

その過程で孤独を感じるかもしれない。しかし人間は生まれた時から死ぬまで本質的に孤独で闘い続けているのだから、「自分は孤独だ」という事で悩む必要はない。
そう、岡本太郎は語りかけてくる。

 

•危険に賭けるということ

 

現在の社会は、エスカレーター式にルートが決まっていることが多い。
例えば、普通に大学に入り普通に就活をして普通に就職したり、会社に入って適切に人間関係を処理し、型通りの家庭生活を過ごしたりする。先の見えるルートをちょっとでも外れたら先の見えない茨の道。でも茨の先には大いなる発見があるかもしれないし、悲惨な目にあうかもしれない。そういう時、危険に賭けることができるだろうか。

 

岡本太郎は言う。

 

「失敗したっていいじゃないか。成功なんて、結局は自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかどうか、ではないだろうか」

 

人生の瞬間瞬間で「危険に賭ける」からこそ、人生は輝き、だからこそワクワクするものではないだろうか?トム・ソーヤーも、インディ・ジョーンズも危険だからこそ魅力を感じた道に進んだのである。

 

人生において大いなる決断の時は必ず来る。それは孤独に戦わなければいけない。
その時、『個』が潰れるような先の見えたレールの上を走るのではなく、魅力に満ち溢れた危険な道に敢えて突き進む。危険で先が見えないから怖いに決まっている。しかし逃げたい自分と対峙し、危険に賭ける。そのほうが人生は輝き面白くなる。

 

是非本書を通して、自分の人生ついて考え、また藝術家岡本太郎の生涯を知ってほしい。いわゆる自己啓発書としても本書は大いに役に立つが、岡本太郎がどういう考えで生き、作品を遺してきたかを知る事もできる。それを通して太陽の塔といった太郎の作品を見ると、太郎藝術の違った側面が見えてくること、間違いない。

 

『自分の中に毒を持て』青春出版社
岡本太郎/著

この記事を書いた人

大南武尊

-ominami-takeru-

研究員

理論物理修士課程修了後、リトアニアのレーザー会社にてエンジニアとしてインターン。画像処理やレーザー評価等を行う。その後、AI研究員として化粧品会社に入社。機械学習やデータ分析、画像処理でデジタルビューティ創出に従事。最近はアクセラレーションプログラムの運営も行う。 興味の対象は、ネットワーク(理論と実践、人と人、言語と言語等任意の事象)の形成と遷移、科学と藝術の境界線、事象の表現方法、おいしいスイーツ。

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