悩める女性たちが陥る「考えすぎ」という泥沼

馬場紀衣 文筆家・ライター

『考えすぎる女たち』ブルームブックス
著/スーザン・ノーレン・ホークセマ

 

 

いったん「考えすぎ」に陥ると、否定的な考えばかりが頭に浮かんできて、どんどん気分が暗くなっていく。そのうえ、よせばいいのに、そのネガティブな考えをパン生地をこねるみたいにしつこくこねくりまわしてしまう。すると疑問がさらに疑問を生み、収拾がつかなくなってしまって、ある出来事について考えていたはずなのに、だんだんべつの出来事へ、しまいには深刻な疑問にまで発展してしまう……なんて経験をしたことがあるのはわたしだけではないはずだ。著者はこれを「イースト効果」と呼んでいる。イースト入りのパン種がこねると二倍に膨らむように、マイナス思考がどんどん膨れて、心のなかの空間をいっぱいにしてしまうのだ。

 

とはいえ、「考えすぎ」を止めるのはそう簡単なことではない。著者は、考えすぎには3つの種類があると述べている。まず考えすぎて大げさにわめきたてるタイプ。考えすぎが独り歩きするタイプ。最後が、ひとつの問題から次の問題へと支離滅裂に考えすぎるタイプだ。

 

仕事のプレッシャーや子育ての悩み、親族との関係、ちょっと体重が増えたこと、日常は頭の痛くなるような悩みの連続だ。20年かけてさまざまな職業や境遇の人たちを調査研究してきた著者は、女性は男性よりも人との関係のなかで自分を定義する癖をもつ人がおおいと指摘する。そのため、女性たちは考えすぎに陥りやすいのだという。

 

「女性は他人と感情的に結びつくだけでなく、さらに一歩踏み込んで、感情的に入れ込みすぎるところがあるのです。そういう女性たちは自尊心や幸福の基準を、他人から見た自分の姿や他人との関係におこうとします。このため、彼女たちはいつも不安で、相手との関係のわずかな変化にさえ何か重要な意味があるのではないかと心配し続けるのです」

 

考えすぎから解放されるためのもっともシンプルな方法は、楽しいことに熱中して頭を休ませること。楽しい気晴らしは「マイナス思考や偏った見方から離れて、前向きでバランスのとれた考え方」をできるように促してくれると著者は説く。

 

「考えすぎ」を止める方法はほかにもある。そのひとつが、近年若い女性たちのあいだでも人気が高まっている瞑想だ。瞑想といっても、祈りを唱える以外にもさまざまな種類がある。たとえば、心の中にあるイメージに集中することで考えすぎから離れることを目的としたもの。あるいは呼吸に意識を集中させることで体をリラックスさせ、心を乱す考えを退ける方法などもある。

 

心理学の研究によれば、不安や怒り、抑鬱状態の緊張を解きほぐしてくれる瞑想はパニック発作や摂食障害、薬物依存症などの患者たちにも好ましい効果をもたらしたという。瞑想は感情や思考をもコントロールしてくれるので、慢性的な疼痛や心血管患者などの病気の人にもおすすめらしい。

 

考えすぎの沼にハマる理由は人それぞれだ。けれど、抜け出す道もまたたくさんあることを覚えておいてほしい、と著者は語る。なにより大事なのは、不安をかりたてている問題を解決するために一歩踏み出すことだ。

 

『考えすぎる女たち』 ブルームブックス 2004年
 著/スーザン・ノーレン・ホークセマ

この記事を書いた人

馬場紀衣

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文筆家・ライター

東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。

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