2022/06/27
竹内敦 さわや書店フェザン店 店長
『サッカー店長の戦術入門 「ポジショナル」vs.「ストーミング」の未来』光文社新書
龍岡歩/著
戦術の歴史を俯瞰するとサッカーがより面白くなると気づかされた。
名前を聞いたことある知将名将監督のすごさがよくわかった。そして森保ジャパンが心配になった…。
コアなサッカーファンからも絶賛の本書。わたしはというとサッカー偏差値は高くはない。学校の昼休みはみんなでサッカーで遊んだ。「キャプテン翼」は好きで読んでいた。Jリーグ発足時にサッカーを観始めた。アルシンドが好きだった。ドーハの悲劇に悔しがり、ジョホールバルの歓喜に心踊らせた。オシムが大好きだった。ゲームの「ウイニングイレブン」や「プロサッカークラブをつくろう!」なんかを夢中になって遊んだ。今はワールドカップや日本代表戦くらいしか観ていない。しかもたまに見逃す。そのくらいのサッカー偏差値のファンです。しかしだからこそサッカー用語のイチからの解説が新鮮だったし、著者の戦術眼にうなった。本書を十二分に満喫できました。
世界のサッカー界での戦術の歴史と今と未来を書いてあります。ものすごく分かりやすい上にものすごく面白い。解説記事などで断片的に知っていた「ポジショニング」や「ゾーン」、などの単語が体系的に生き生きと繋がる。「ストーミング」は知らなかった。ゴールに最短で早く攻めることを主眼にしたワクワクする戦術で、今すごいらしい。ヨハン・クライフから始まるが圧倒的な戦術が世界を席巻すると、それに対抗した新たな戦術が編み出される。そしてさらにまた対抗した戦術が出現したときには古い戦術に回帰したりする。
また、資金力のない弱いチームを躍進させる「弱者の兵法」に長けた監督やフロントもある。戦術の進化で1トップまでFWが減っていったがついに0トップになるとか、モウリーニョの賞味期限は2年だとか、流行りの戦術のせいでロベルト・バッジオは生かされなかったとか、驚きの分析がモリモリある。
著者はサッカー未経験の戦術オタクなサッカー用品店の店長だったらしい。度を越したオタク度で戦術分析のブログを書いていたら、分析力がすごすぎてプロチームの戦術分析官に引き抜かれたという異色の経歴を持つ。発見された在野の軍師、みたいな出で立ちがまたいい。サッカーってこんな見方をするんだと驚きの連続だった。昔はよく観てたけどなんて人にこそおすすめしたい一冊だ。
『サッカー店長の戦術入門 「ポジショナル」vs.「ストーミング」の未来』
光文社新書 龍岡歩/著