ryomiyagi
2020/02/27
ryomiyagi
2020/02/27
市川:後半戦はですね、この度講談社から刊行されました『源匣記』についてお話ししたいと思います。まずは、担当編集の菅さんから。
菅さん:『源匣記』は私の前の担当から引き継いだんですけど、3年温め続けて書いていただいた超大作でして。これまで矢野さんが書いてきた、日本を舞台にした歴史小説の要素もあるんですけど、今回の帯にもあるように「日華融合ファンタジー大戦」という、盛り込みすぎだと思われるくらいのネームにふさわしい話でして。
一番大きな設定としては『源匣記』というタイトルの真ん中にあるこれ(「匣」)。「はこ」と読むんですけど、この匣が、ある大陸の世界観を決定する要因になる。実は、さっきゲームの話がありましたけど、その世界観にも通じる。匣に書かれた天字という文字があるんですけど、天字の発明が、この世界を小説ならではのものに拡げています。
ある大陸、中国大陸に近いようなニュアンスなんですけど、そこにある山が現れる。それが真天山。そこに源匣という匣が生まれてくるんですけど、それを主人公の敵となる一族が手にする。その一族が大陸で覇権を握ることになって、主人公は彼らに家族を殺されてしまうところからストーリーが始まります。それだけでも世界観の大きさがおわかりになるかと。
市川:菅さんに「すごい傑作なんでぜひ読んでください」と言われたとき、まずはこのスケールにびっくりしました。
菅さん:日本でもない中国でもないけれどどこか親しみがあって、だけど全く新しいストーリー。
市川:(これを)イチから作るの!?って感じ。
菅さん:ネタバレになるので読んでもらうとして、中身はどエンタメ。歴史の中に生きた人々の人生をぶつけ合うような、それを大陸規模でやるようなお話。400ページを超えますけど、その価値めちゃくちゃあります。ぜひ読んでいただきたいですね。
市川:ストーリーがすっごい王道。王道の中の王道というか。それを矢野さんの巧みなストーリーテリングで。めちゃくちゃ面白かったです。
矢野さん:ありがとうございます。
市川:どこまでこれはネタバレしていいんですか?(笑)
菅さん:まあ、いいんじゃないですか? 私がストップを(笑)
―レフェリー(笑)
市川:あんまり本編には触れない方がいいのかな? 作品自体ももちろん面白かったんですけど、何より驚いたのが年表。『源匣記』の1000年間の歴史が巻末に載っているんですけど、この物語中に描かれるのはそのうちの30年くらい。
菅さん:これ、タイトルも源匣「記」で、その中の「獲生伝」。源匣記の1000年にわたる物語の「獲生」の部分。
市川:だから、さっき菅さんが言ってたんですけど、「ロマサガ2」みたい。
※ロマンシング サ・ガ2……1993年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用コンピュータRPG。「フリーシナリオ」というシステムと時間軸の設定により、自分なりのストーリー展開を作り出せる特徴がある。前作では最初に主人公キャラクターを選択することで大きくストーリー分岐を設定させていたが、本作では皇位継承システムによって、核となるキャラクターが任意で(あるいは強制的に)交代していく。年月の経過による様々なイベント変化もあり、歴史群像のような物語性を持つ。(wikipediaより)
菅さん:ゲームの話もありましたけど、ロマサガ2は矢野さん…?
矢野さん:僕、ロマンシング サ・ガはあんまやってないんですよ実は……。
市川:あ、やってないんだ! これは(予想が)外れたな。
矢野さん:あー、そうですね。
一同:おぉー。すごい!
矢野さん:鉄山靠というよりは中国拳法の感じですね。八極拳の背中でドンっていう、あのイメージはあります。
市川:当たった~。
菅さん:すごいですね~、その読み方があるとは。
矢野さん:武の一族が年表にもずっと出てくるんですけど、それは僕の中ではストリートファイターの豪鬼的な設定。作品世界の中では常に強い。
※豪鬼……『ストリートファイター』シリーズに登場する架空の人物。欧米ではAkuma(アクマ)という名前になっている。「拳を極めし者」を名乗る格闘家。自身を闇の住人とも称している。常に全身から「殺意の波動」と呼ばれるオーラ(赤や紫など作品によって異なる)を放っており、これを源として鬼神のごとき力を発揮する。強者と命を懸けた真剣勝負「死合い」を行うことに己の存在価値を見出しており、多くの格闘家を葬っている。(wikipediaより) 要するに最強キャラ。
菅さん:市川さんと今日、この作品の感想を二人で話している時に「年表って付録じゃなくて、世界観の屋台骨。これがあるからこの物語で描かれた壮大なものもあくまで一部(とわかる)。さらにメタ的にこの物語、登場人物をとらえるというか。(登場人物たちは)色々やったけど、それも(作品世界の)一部でしかないっていうメッセージ」(という話をした)。
―1行でサラッと。
市川:僕も途中まで読んで気づいたんですよ。これ、年表から先に読むべきじゃないかなって。
そう思って年表を見て、まあオチがわかっちゃうんですよね、ある意味。わかっちゃうんですけど、そこに帰結していくくだり、逆に物語の見方が180度変わるというか。本当の歴史小説を読んでいるような。
例えば織田信長が本能寺の変で討たれるんだけど、討たれるまで何をやったのか、討たれないために何をしたのか、みたいな読み解き方ができるんですけど、これすごいなって思って。
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