akane
2019/02/12
akane
2019/02/12
漫画やアニメは私が生まれる前からあったが、ゲームに関しては、私はファミコン世代ど真ん中、ゲーム元年を経験してるだけあって、目覚ましい進化を目の当たりにしている。
家庭据置用から携帯用、今やスマホでゲームをやるなんて当たり前になってきた。それぞれの用途に合わせて、ゲームの形も進化してきている。
ネットワークにつながったゲームは、新たな未来を予感させてくれる。しかもスマホのGPSと連動するのだから、ゲームのギミックは今後ますます細分化されていくだろう。
その過程で出会ったのがIngressというゲームだった。
もう、ゲームというにはシンプル過ぎる内容で、ルールが複雑になるゲーム業界にあっては衝撃的だった。
これは、青軍と緑軍に分かれ、位置情報を使って陣取り合戦をするだけのゲームだ。
しかし、規模が桁外れだった。
世界中で戦いが繰り広げられるゲームなのだ。世界地図(Google Mapsと連動しているから、本当の意味の世界地図だ)のあちらこちらに設置されている、ポータルと呼ばれるポイントを取り合う。同じ色のポータル同士を線で結ぶ。三角形の面を作る。この面積の広さによって勝敗が決まるというゲームなのだから、スケールの大きさに驚かされる。
GPSと連動しているから、プレイヤーはその場所まで行かないと楽しめない。家の中にいては意味の薄いゲームなのだ。
しかもポータル同士、ほぼ無限といってもいい距離を線で結べる。海を渡り、国境を越えて巨大な三角形を作ることもできる。そのためには、各国のユーザー同士が連携したり、このゲームのために海外まで行ったり……。子供向けとは言えない内容だ。大人の利点を最大限利用しないと勝てないゲームである。
私は仕事先が日本全国に及ぶ。必然的にこのゲームでは重宝がられるのだ。その時いる場所が重要なゲームにおいて、常に移動している人は両軍ともに必要な戦力になるのだ。
落語家として、いや伝統芸能に携わる人全ての中で、Ingressをやり込んでいるのは私だけであった。当然、ライバルは全くいない。
コミュニケーションを取らないと面白くないゲームだから、私が落語家だということはすぐに広まる。
ある日、Ingressのイベントがあるという情報を入手した。すると、間もなく私にオファーが入る。
「イベントでちょっと喋ってもらえないか?」
多分、人前で喋れそうなユーザーが見つからなかったのだろう。そりゃそうだ。ゲームに夢中になってる落語家なんて、そうそういないのだから。
そして私は、世界大会のオープニングアクトを務めることになった。
会場となった仙台のゼビオアリーナには、4000人を超えるユーザーが世界各国から集結した。
そこで落語をやったわけではないが、これだけ多くの人の前で喋ることは、そうそうない。ゲームをやっていたからこそ、貴重な体験をすることができた。
さらにこれがきっかけで、Ingress落語会を開催した。
趣味は仕事になるのだ。
Ingressを運営している会社が次にリリースしたのがPokémon GOである。
これも位置情報を使ったゲームで、しかも世界的なキャラゲーである。やらないわけにはいかない。
そもそもPokemonは落語家になってから熱心にやったゲームである。全国大会の千葉予選に出場までした熱の入れようだ(残念ながら決勝トーナメント目前で敗退したが)。
Pokemonには収集するという目的がある。出ているキャラクターを全て集める、コンプリートするという目的だ。持ち前の機動力を活かして、次々と集めていく。
しかし!
埋まらない、集まらないモンスターがいるのだ。
「その場所に行かないと捕まらない」という位置情報を使ったギミックである。行けるところは全て行った。しかし捕まらない。
それもそのはずで、日本国内だけではコンプリートできない仕組みになっているのだ。
そう、海外限定のモンスターである。
ちょっと悩んだ。そして決めた。海外まで取りに行くことを。
たかがゲームにそこまで……と思うかもしれないが、私にしてみれば、たかが崖(グランドキャニオン)であり、たかが滝(ナイアガラ)である。人それぞれ価値観は違うのだ。
この時点で行かなくてはならない地域は3カ所。ヨーロッパ、北アメリカ大陸、オーストラリアだ。
もう大人なんだから、チケットを取ってパスポートを持って飛行機に乗ればいい。とっても簡単だ。
あまりにも簡単過ぎて拍子抜けしてしまう。
そこでもう一つ、私はオプションを付けてみた。
海外で落語会を開いてみる。
全くコネはない。しかも海外で落語会を開催しているのは、売れに売れている大先輩ばかりだ。強力なバックが付いていることは容易に想像できる。私は違う。何もないところから作るのだ。
あるのはPokémon GOへの情熱と、SNSだけ。
思いつく方法をいくつも試して、試行錯誤する。
その結果、オーストラリア(シドニー・ブリスベン・メルボルン)、スペイン(バルセロナ)、アメリカ(ヒューストン)と、3カ国5都市で落語会を開催できた。
その後、Pokémon GOのバージョンアップに伴い、対象地域が増えてメキシコ(メキシコシティ・グアナファト)も追加。
国外での落語会を実現させてしまったのである。
これもゲームがあったからやろうと思ったのだ。
この時期にPokémon GOがリリースされていなければ、私は生涯国外での落語会なんて考えなかっただろう。
その後もオーストラリアでは定期的に公演を続けている。私にとっては、九州での落語会(今のところ2回)をやるより、数多く訪れているのがオーストラリアなのだ。
趣味は本気でやっていると仕事になる。
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