ryomiyagi
2020/06/29
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2020/06/29
■『浪人街 RONINGAI』(映画 1990年)
製作:松竹/プロダクション:京都映画/監督:黒木和雄/脚本:笠原和夫/原作:山上伊太郎/出演:原田芳雄、勝新太郎、樋口可南子、石橋蓮司、田中邦衛 ほか
舞台となるのは江戸下町のスラム。
そこに暮らす夜鷹たちは、毎晩のように旗本たちに斬殺されていた。
「世の中が乱れる元は貴様ら淫売だ」という身勝手な理由によるものである。
この非道な旗本たちを懲らしめるべく、喰いつめ浪人たちが立ち上がる。
女を渡り歩いて金を掠める主人公・源内(原田)、粗暴で金に目のない赤牛(勝)、刀の「試し斬り」を大名から請け負って死体を斬る権兵衛(石橋)、庭先で飼っている鳥を売って生活する孫左衛門(田中)。
それぞれ世間的には「ロクデナシ」な男たちだ。
が、誰もが皆、純情で不器用で、そして熱い。
中でも筆者が惹かれたのは、権兵衛だ。
普段はムッツリしているが、実は源内の情婦お新(樋口)に惚れ込んでいる。
手を汚して稼いでいるのも、実は彼女を抱く金を貯めるためだ。
だが、ありったけの金をお新に差し出して頭を下げるも、そこに現れた源内にからかわれ、手出しできないまま立ち去ってしまう。
その情けない様からは、「モテない童貞男」の切なさが伝わってきた。
だが、権兵衛はそれだけでは終わらない。
旗本たちに捕らわれたお新を救うため、ラストで源内と共に敵地へ乗り込むのだ。
たとえ想いは通じなくとも、惚れた女のために身の危険を顧みずに立ち向かう。
まさに、「カッコいい男の博覧会」と言える作品だ。
時代劇の物語は、ほとんどが刀によって最終的な決着がなされる。
逃げることも、敗れることも許されない、過酷な闘争の世界だ。
守るべきものを守り抜くためには、文字通り命を懸けて戦うしかない。
本作は、その真骨頂とも言える。
そこに描かれるのは、「死」の恐怖と対峙し超克したところで戦う、「生き様」としてのカッコよさ。
表面的な見栄えを追いかけるような軽薄な輩どもが太刀打ちできる世界ではない。
本物の男たちの姿が息づいている。
【ソフト】
松竹(DVD)
【配信】
アマゾンプライムビデオ、Hulu、iTunes
(2020年5月現在)
※アマゾンプライムビデオ は、アマゾンプライムビデオ チャンネルの登録チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」「シネマコレクションby KADOKAWA」「+松竹」「d アニメストア for Prime Video」「JUNK FILM by TOEI」「TBS オンデマンド」を含んでいます。
●この記事は、6月11日に発売された『時代劇ベスト100+50』から引用・再編集したものです。
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