ryomiyagi
2020/06/12
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2020/06/12
■『十三人の刺客』(映画 1963年)
製作:東映/監督:工藤栄一/脚本:池上金男/出演:片岡千恵蔵、里見浩太郎(現・里見浩太朗)、嵐寛寿郎、内田良平、菅貫太郎 ほか
時は江戸後期。将軍の弟である明石藩主(菅)は異常なまでに暴虐な男だったが、それを知らない将軍が老中に抜擢しようとする。
苦慮した老中・土井(丹波哲郎)は最も信頼のおける旗本・島田新左衛門(片岡)に藩主暗殺を命じる。
新左衛門は13人の猛者を独自にスカウト、参勤交代で帰国する途中の藩主を襲撃せんと狙う。
13人のプロフェッショナルが一つの目的を果たす。
そのためには、人と人の情けは「余計なもの」と全て捨てて、いかなる困難があってもひたすら最後まで目的を遂行する。それが本作の狙いだった。
そのため、描き方は即物的なものになり、情緒的なものは極力排除されていった。
その結果、悪役も従来の時代劇に見られた「主人公にやられっ放し」ではなくなる。
暴君の家臣には新左衛門のかつての友(内田)がいて、軍師としてその前に立ちはだかった。
両者の知恵比べを縦軸にしながら、作戦が成功するかしないか、そのサスペンス一点に物語は絞り込まれていく。
刺客たちは宿場町を要塞化し、そこに暴君一行を追い込んで迎え撃とうと、新左衛門は道中にさまざまな策を講じ、宿場に一行が向かうしかないように仕向ける。
そうはさせまいとする敵方の軍師。静かなタッチの中、両者の読み合いが中盤をサスペンスフルに盛り上げる。
そして宿場には、13人vs 200人という数的不利をカバーするため、さまざまな仕掛けがほどこされた。
仕掛けに次ぐ仕掛け。そんな時代劇史上でも前代未聞の要塞攻防戦の壮絶な死闘が展開された。
個々には大きな力を持たない人間たちが、集団のチームワークによって任務を遂行していく。
彼らは、ただ命じられた目的のために壮絶な死闘に身を投じ、そして命を虚しく散らす。
その果てに、鮮烈なラストシーンが待ち受けている。
死屍累々(ししるいるい)の戦場からカメラが引いていくと、そこに映し出されるのは激闘の末に発狂した男の姿だった。
彼が常軌を逸した笑いを浮かべ続ける映像とともに物語を唐突に終わらせることで、いかに戦闘が尋常なものでなかったのかを観る側に伝えると同時に、その虚しさも伝わる。
【ソフト】
東映(DVD)
【配信】
アマゾンプライムビデオ、iTunes、U-NEXT、TSUTAYA、ひかりTV、ビデオマーケット
(2020年5月現在)
※アマゾンプライムビデオ は、アマゾンプライムビデオ チャンネルの登録チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」「シネマコレクションby KADOKAWA」「+松竹」「d アニメストア for Prime Video」「JUNK FILM by TOEI」「TBS オンデマンド」を含んでいます。
●この記事は、6月11日に発売された『時代劇ベスト100+50』から引用・再編集したものです。
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