ryomiyagi
2020/07/10
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2020/07/10
■『戦国自衛隊』(映画 1979年)
製作:東宝/プロダクション:角川春樹事務所/監督:斎藤光正/脚本:鎌田敏夫/原作:半村良/出演:千葉真一、夏木勲(後の夏八木勲)、渡瀬恒彦、真田広之、成田三樹夫 ほか
伊庭三尉(千葉)率いる陸上自衛隊の小隊は、演習中に戦国時代へタイムスリップしてしまう。
圧倒的な銃火器を持つ彼らが、戦国の世をいかにして生き抜くかが描かれる。
小隊の面々のとる行動は、必ずしも統一されているわけではない。
極限状況に置かれ、多くの人間が狂気に駆られていく。
状況が恐ろしくなって逃げ出し、野盗に殺される若者たちもいた。
また、印象的だったのは伊庭と当初から対立していた矢野(渡瀬)で、仲間たちと哨戒艇を盗んで武装し、川を下りながら住民を虐殺したり女を拉致して犯したり……と欲望のおもむくままにやりたい放題をするのだ。
一方の伊庭は下克上を企む戦国大名・長尾景虎(夏八木)と意気投合、景虎が天下をとれば歴史が変わり現代に戻れるかもしれないと考えるようになる。
そして、最新鋭の近代兵器をもって景虎の合戦に協力、ついには川中島で武田信玄を討ち果たす。
戦車&戦闘ヘリvs武田騎馬隊という奇抜な戦いももちろん楽しいが、本作で強烈な印象を残すのは伊庭と景虎が友情を育む序盤の場面だ。
海辺で互いにフンドシ一丁になりながら、笑顔で馬を駆り、海岸を走り、天下取りへの夢を語り合う――その姿は、「なっちゃん」「チバちゃん」と普段から呼び合う仲だった同い年の千葉と夏八木の関係性がそのままに映し出されているようにも見え、微笑ましさすら覚えてしまう。
だがそれだけに、伊庭の存在を許すまじとする京の権力者たちに景虎が屈伏してしまうラストが、切なく迫ってくる。
川中島の激戦で戦車もヘリも失った伊庭を恐れるに足りずと判断した権力者たちは、配下に伊庭の追討を命じる。
他の者に討たせるなら、自らの手で……。
そう思った景虎は、自ら伊庭討伐を買ってでる。
兵器を失った伊庭たちの籠もる荒れ寺を、景虎軍が取り囲む。
伊庭は景虎に斬りかかり、そして景虎は自らの手で伊庭を射殺する。
友の死骸に言葉もなく羽織をかける景虎を見ていると、その悔恨の念がこちらにまで伝わってきた。
【ソフト】
KADOKAWA(DVD)
【配信】
アマゾンプライムビデオ、DMM.com、dTV、Google Play、TSUTAYA、ビデオマーケット
(2020年5月現在)
※アマゾンプライムビデオ は、アマゾンプライムビデオ チャンネルの登録チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」「シネマコレクションby KADOKAWA」「+松竹」「d アニメストア for Prime Video」「JUNK FILM by TOEI」「TBS オンデマンド」を含んでいます。
●この記事は、6月11日に発売された『時代劇ベスト100+50』から引用・再編集したものです。
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