ryomiyagi
2020/07/13
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2020/07/13
■『七人の侍』(映画 1954年)
製作:東宝/監督:黒澤明/脚本:黒澤明、橋本忍、小國英雄/出演:三船敏郎、志村喬、津島恵子、藤原釜足、加東大介、木村功、千秋実、宮口精二 ほか
映画史上で不朽の名作として語られる時代劇である。
近年ではそのタイトルが大きくなりすぎたため、いろいろと高尚に語られることが多くなってはいるが、何より忘れてはならないのは、エンターテインメントやアクションの映像表現に革命をもたらした作品であるということだ。
物語はいたってシンプルで、残虐な野武士たちに村を襲われそうになった百姓たちが、毎日の食糧の保証を条件に6人の凄腕の浪人(と、もう1人、腕は立たないがめっぽう明るく、侍に強い憧れを抱く野人のような男・菊千代=三船)を雇い入れ、野武士と死闘を繰り広げるというものだ。
百姓たちが浪人たちを集める序盤、浪人たちが百姓たちを鍛えながら最初の戦闘を迎える中盤、そして最終決戦が描かれる終盤という章立てになっている。
序盤では7人のキャラクター紹介が、中盤では村人と浪人たちの交流がそれぞれユーモラスになされるなど、それぞれに見せ場が用意されているため、3時間以上の長丁場でも全く飽きが来ることなく、一気にラストまで行ってしまう。
そして、ラストの野武士との死闘は、壮絶の一言に尽きる。
猛烈な雨が叩きつける中、野武士の一団が村になだれ込んでくる。
迎え撃つ7人のリーダー・勘兵衛(志村)は野武士たちを村の中にあえて入らせ、これを取り囲んで一気に殲滅(せんめつ)するという策に出る。
視界がさえぎられるほどのおびただしい雨、足元さえおぼつかなくなるほどにぬかるんだ地面、泥だらけになりながらの凄惨な斬り合いが展開されていく。
雨という背景の劇的な効果、綺麗で美しいシルエットではなくボロボロに汚れた姿が実は格好が良い上に迫力が出るという発見、そして型にとらわれない実戦さながらの殺陣の迫力……今ではエンターテインメント表現の常識とも言えるこれらの演出は、全て本作から始まったものだった。
そしてその映像は、ただ古典というだけでなく、今もなお全てのエンターテインメント表現の頂点に君臨し続けている。
【ソフト】
東宝(ブルーレイディスク、DVD)
【配信】
アマゾンプライムビデオ、DMM.com、dTV、Google Play、iTunes、U-NEXT、TSUTAYA、スカパー!オンデマンド、ひかりTV、ビデオマーケット
(2020年5月現在)
※アマゾンプライムビデオ は、アマゾンプライムビデオ チャンネルの登録チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」「シネマコレクションby KADOKAWA」「+松竹」「d アニメストア for Prime Video」「JUNK FILM by TOEI」「TBS オンデマンド」を含んでいます。
●この記事は、6月11日に発売された『時代劇ベスト100+50』から引用・再編集したものです。
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