ryomiyagi
2020/06/01
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2020/06/01
■『隠し砦の三悪人』(映画 1958年)
製作:東宝/監督:黒澤明/脚本:黒澤明、菊島隆三、小國英雄、橋本忍/出演:三船敏郎、上原美佐、千秋実、藤原釜足、志村喬 ほか
戦国時代、山名家によって落城させられた秋月家の侍大将・真壁六郎太(三船)はお家再興のために、主家のただ一人の生き残りの雪姫(上原)と多額の軍資金を同盟国の早川領に運ばなければならない。
だが、国境には関所が設けられていた。六郎太は、巻き込まれた二人の百姓兵(千秋、藤原)と共に山名領内を突破することにする。
スタイリッシュでスピード感あふれる映像、敵中突破のアクションとサスペンス、武骨でいながらも颯爽(さっそう)とした三船のヒロイックなカッコよさ、百姓たちの交かわすユーモラスな会話……。
後にジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』の参考にしたというだけあって、日本映画離れしたスケール感とエンターテインメント性を味わえる作品である。
その上で大きな役割を果たしているのが、馬の存在だ。
たとえば中盤、二人の敵方の騎馬兵に自分たちの正体が露見してしまい、関所へ急報しに向かう敵兵を六郎太が馬を駆って追跡する場面がある。
ここでの、馬同士がぶつかり合う激しいチェイスや、三船が手綱を持たずに大上段に刀を構えて始める馬上対馬上の壮絶なチャンバラは、いずれも圧巻のド迫力だった。
そして、もう一つ忘れ難い場面がある。それは物語終盤に訪れる。
六郎太たちは山名勢の大軍による山狩りの前に万策尽きてしまい、ついに囚われの身となってしまう。馬上で縛りつけられ護送される一行。
と、これまで六郎太の前に立ちはだかってきた敵方の侍大将・田所兵衛(藤田進)が「裏切り御免」と一喝、一行を救い出す。
兵衛は六郎太を取り逃がした際に主君から激しく面罵(めんば)される恥辱を受けており、一方で自分を高く評価してくれる姫や六郎太に心移りしていたのだ。
六郎太たちは馬を駆って敵勢から逃げていく。その様を、黒澤は望遠レンズで映し出している。
そのため、画面に広がる壮大なスペクタクル感と、その中を何頭もの馬たちが颯爽と駆け抜けていく様の躍動感は圧倒的なものになっていた。
戦うことよりも逃げることに主眼を置いているにもかかわらず、本作が痛快で爽快な印象を残すのは、こうした馬の描写の心地よさによるものが大きい。
【ソフト】
東宝(ブルーレイディスク)
【配信】
アマゾンプライムビデオ、DMM.com、dTV、Google Play、iTunes、U-NEXT、TSUTAYA、スカパー!オンデマンド、ひかりTV、ビデオマーケット
(2020年5月現在)
※アマゾンプライムビデオ は、アマゾンプライムビデオ チャンネルの登録チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」「シネマコレクションby KADOKAWA」「+松竹」「d アニメストア for Prime Video」「JUNK FILM by TOEI」「TBS オンデマンド」を含んでい
ます。
●この記事は、6月11日発売予定の『時代劇ベスト100+50』から引用・再編集したものです。
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