ryomiyagi
2020/06/08
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2020/06/08
■『魔界転生』(映画 1981年)
製作:東映/監督:深作欣二/脚本:野上龍雄、石川孝人、深作欣二/原作:山田風太郎/出演:沢田研二、千葉真一、緒形拳、丹波哲郎、若山富三郎 ほか
幕府によって滅ぼされたキリシタン・天草四郎(沢田)が魔界の力で蘇り、その妖力をもって並み居る武芸者たちを籠絡。世の中を混沌に陥れ、幕府への復讐を果たさんとする。
それに対するは、妖刀・村正を手にした若き剣豪・柳生十兵衛(千葉)だった。
本作で深作は、当時の時代劇で軽視されつつあった《剣の迫力=チャンバラの魅力》を追求している。
特に物語終盤、十兵衛の前には次々と圧倒的な強敵が現れ、観客を煽りに煽っていった。
まずは《天下一の剣豪》宮本武蔵。「十兵衛vs武蔵」これだけでも大興奮のカードだが、その上、武蔵を演じるのは名優・緒形拳だ。
両者の距離が近づくにつれ、その戦いへの期待は当然の如く高まっていく。
そして決闘は巌流島よろしく、見晴らしのよい海岸で繰り広げられる。
互いに波や岩を利用しながら、壮絶に斬り合う十兵衛と武蔵。
そして、一瞬の隙をついた十兵衛が、櫂もろとも武蔵を斬り伏せる。
そして、最後に十兵衛を待ち受けるのは、柳生但馬守。演じるのは十年前に映画『子連れ狼』シリーズをヒットさせた《伝説の剣豪スター》若山富三郎だ。
但馬守と十兵衛は役柄の上では実の父子だが、殺陣の上では若山は千葉の師匠に当たる。
それだけに、剣を突きつけて対峙し合う両者の間には、ただのフィクションではない迫力があった。
その迫力を生み出すには、深作の用意した凄まじい舞台効果も大きく作用している。
江戸城は天草四郎たちの攻撃により、火に包まれる。そして、炎で燃え盛る天守閣の中が父子の決戦の場となった。
「十兵衛と戦いたい」――その妄執に取り憑かれた但馬守は、ひたすら息子の名前を叫び続ける。
BGMが転調すると同時に炎の向こうから現れる十兵衛。
観ていて思わず武者震いする。
両者は戦いの前の口上を言い合うのだが、この間にもセットは炎で崩れ落ちていく。
そして、合わさる剣と剣。稽古場でも長年にわたり木刀を交えてきた両俳優だけに、スピーディーな斬り合いは圧倒的なド迫力。
しかもそれが、画面一杯に燃え盛る炎をバックに展開されるため、観ていて興奮が止まらない。
【ソフト】
東映(DVD)
【配信】
アマゾンプライムビデオ、DMM.com、Hulu、iTunes、U-NEXT、TSUTAYA、ひかりTV、ビデオマーケット
(2020年5月現在)
※アマゾンプライムビデオ は、アマゾンプライムビデオ チャンネルの登録チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」「シネマコレクションby KADOKAWA」「+松竹」「d アニメストア for Prime Video」「JUNK FILM by TOEI」「TBS オンデマンド」を含んでいます。
●この記事は、6月11日発売予定の『時代劇ベスト100+50』から引用・再編集したものです。
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