新型コロナウイルスによるプロ野球開幕延期がシーズンに与える影響の大きさ
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

2020年東京オリンピックが控えている中、3月9日にプロ野球の開幕延期が正式に決定した。延期が決定するまでは、オープン戦の段階で「無観客試合」にする他、Jリーグと提携を組むなど様々な対策が行われていたが、最終的にはペナントレース自体の開幕延期となった。現状は4月10日以降の開幕に向けて前向きに検討しているそうだが、この延期に至るまでの原因や、今後の影響はどうなっていくのだろうか。お股クラスタの一人、ゴジキ氏(@godziki_55)に寄稿してもらいました。

 

 

■国内屈指の人気スポーツでさえも苦渋の決断を

 

野球といえば、サッカー同様に国内では屈指の人気を誇るスポーツである。人気の証として毎年日本シリーズや国際大会は地上波で放送されているし、インターネット配信が普及した今でも、その根強い人気からDAZNを始めとした配信サイトに多くのユーザーが加入している。
さらに、シーズン中はもちろんのことドラフト会議や契約更改、移籍情報が報道されるオフシーズンまで、プロ野球を中心に野球がスポーツニュースの主役を飾っている。

 

プロ野球も長い歴史の中でストライキや震災後など様々な問題が起きたが、今回のコロナウィルスによる騒動は日本国内だけではない問題に発展し、非常に難しい選択を強いられたのはまず間違いない。

 

シーズン開幕前のオープン戦の段階で「無観客試合」という対策を取りつつ、プロ野球同様に人気のあるJリーグと異例の提携を組み、さらに対策を強化した。
今回、プロ野球が延期を正式発表する前に、Jリーグが公式戦の一時休止や延期を発表していた。このことがプロ野球界に与えた影響は無視できないだろう。

 

今回の延期によって選手のコンディションはもちろんのこと、チケットやグッズ等の販売に対して莫大な影響が生じるのは間違いない。
プロ野球は高校野球や代表戦のように短期的なものではなく、3月から11月までのシーズンで長期的に利益を生み出さなければならない。この長いシーズンの中でトップクラスの興行が見込める開幕戦を無観客試合にしてまでやることは、相当な痛手になると考えたのかもしれない。
オープン戦の無観客試合は国内の状況が良化するまでの施策として行なったと思われるが、度重なる他競技やイベントなどの延期や中止、Jリーグの延期や中断なども含めて自粛ムードがさらに加速した状況を鑑みての「開幕延期」という選択だったのだろう。

 

■プロ野球とJリーグが提携を組んだことによる影響力は?

 

今回、プロ野球とJリーグが急遽タッグを組んだことは、プロスポーツ全体で見ても非常に注目度が高かったのではないだろうか。
どちらも一定以上の影響力を持つプロフェッショナルなスポーツ同士が提携を結んだ。これにより、各地で対策の「拡大解釈」に繋がってしまった印象を受ける。

 

プロ野球とJリーグが組んだことによって、他競技のプロスポーツの協会や連盟はもちろん、国民も、彼らがプラスな方向性で対策を行いつつ試合の延期や中断よりも開始に向けて前向きに動いていくことを期待していただろう。

 

しかしプロ野球の開幕は延期が決定し、開幕時期も4月10日以降(予定)というのが現状であり、Jリーグはプロ野球よりも先に中断という判断が下された。
プロ野球とJリーグのこうした判断は間違いなく、他競技のプロスポーツに大きな影響を与えているだろう。結局、3月いっぱいほぼ全てのプロスポーツは延期や中止になり、夏に開催される予定の(それすら不透明だが)東京オリンピックにも影響が出るのは間違いない。選手の状態はもちろんのこと、球場や施設を使用する日程調整なども懸念される。

 

さらに、今回のプロ野球の開幕延期によって、他競技含めて足並みを揃えてさらに開催を延期する恐れがある。なぜなら、他競技のプロスポーツやアマチュアスポーツの開催状況は、約1年間通してスポーツニュースの主役を張り、影響力が強いプロ野球に合わせている可能性が高いからである。

 

プロ野球が4月10日以降に先陣を切って開幕するか延期期間を延長するか。どちらにしても、多かれ少なかれバッシングはされる。ただ、スポーツ界で主役を張るコンテンツであるプロ野球は率先してプラス方向に行動していくしかないと思う。

 

■今シーズンのペナントレースにおける影響は?

 

いずれ開幕するにせよ、ペナントレースに大きな影響をもたらすのは間違いない。今年は東京オリンピックとの兼ね合いもあり、当初の開幕日が例年より早い時期の3月20日だった。その日程に合わせて調整してきた選手には、多大なる負担がかかるだろう。

 

特に昨年のプレミア12に選出された選手は、昨年の11月半ばまで実戦に出ていた状況の中で、今年は急ピッチの調整をしてきた。つまり、オフシーズンで身体を休める期間が例年より短期間であった。そのため、開幕前やシーズン中の怪我や故障、コンディション不良のリスクは通常以上に出てくるだろう。

 

一例をあげると、日本のプロ野球球団に所属しているキューバの選手は、キューバ代表としての国際大会を掛け持ちしている。
その過密日程の影響か、ソフトバンクのアルフレド・デスパイネは2014年、2015年の2シーズンは怪我をしており、WBCが開催された2017年も怪我で離脱している。また、同じくキューバ代表であるジュリスベル・グラシアルは、怪我や故障こそなかったが、昨シーズン中盤にキューバ代表へ派遣された後の数試合はパフォーマンスが落ちていた。

 

このようなケースはキューバの選手に限らない。突然のペナントレースの日程変更が選手達のコンディションに与える影響は私たちの想像以上のものになると考える。

 

加えて、本来は休止期間の予定だった東京オリンピックの期間中にも公式戦が開催されるならば、選手達にかかる負担は相当なものになる。いずれにせよ、かなりの過密日程が予測される中、当初の開幕までに一度負荷をかけたコンディションをうまく調整していくことが鍵になる。

 

■今後の展望は?

 

現状は公式戦開催に向けて様々な案を出しつつ、できる範囲で最短での開幕に向かっているだろう。まずは「公式戦開催」を大前提として検討していくことが必要だ。
一時的な応援の禁止や球場内の飲食物販売も禁止の方向性だが、これは仕方のない対策だろう。ファンも初期段階としては、試合の開催に向けて理解を示す必要がある。その後、段階を踏んで応援や飲食物販売などもできる環境作りが大事になっていくのだろう。

 

もちろん、鳴り物を使用した上で選手を応援する外野席の存在は重要だし、球場内での飲食が球団の利益につながるのは事実だ。これらが禁じられると球団経営に痛手なのは間違いない。
だが、この状況を打開する手段とはいえ、従来のような選手を大声で応援する文化とは真逆の静観して観戦する文化が少しづつ浸透していくのも悪くはないだろう(以前までの国際大会のようなイメージだ)。
それによってファンもさまざまな応援の仕方を楽しめるようになり、プロ野球のエンターテインメントとしての質も向上するのではないだろうか。

 

さらに、今後のプロ野球の施策は、今現在自粛している「世界のスポーツ」が参考にしていくかもしれない。

 

選手達も開幕まで先の見えない中、公式戦で高いパフォーマンスを残すために「野球のプロフェッショナル」として入念に前準備をしている。
選手やファンはもちろんのこと、プロ野球機構なども一体となり、一日でも早く開幕できる状態にできるように、前向きな方向で動いてほしいと願っている。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
関連記事

この記事の書籍

セイバーメトリクスの落とし穴

セイバーメトリクスの落とし穴マネー・ボールを超える野球論

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を

この記事の書籍

セイバーメトリクスの落とし穴

セイバーメトリクスの落とし穴マネー・ボールを超える野球論

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)