「西洋思考」と「東洋思考」はどこが違うのか?
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『論語』という言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか? 古くてわかりにくいものだと思っていませんか? そんなことはありません。先人たちが人間の悩みを考えに考え抜いた結晶で、後世まで読みつがれるいわば生きるための指南書です。明治以来、日本は西洋中心主義に傾いてきましたが、その限界が見え隠れする現在に、「東洋思想の力」を見直してみてはいかがでしょうか。

 

 

これまでの世界の主流の考え方は、西洋型の考え方でした。西洋の人は怒るかもしれませんが、西洋型の考え方は基本的に枝葉末節論が多い。なぜかというと、要素還元主義だからです。「突き詰めて、区分していく」思考法ですから、当然ながら細かいところへと向かっていきます。ですから枝葉の論議が多くなる。

 

また、「分析専門主義」とも言えるでしょう。医学でいえば、「心臓専門医」といった特定の臓器を対象とする専門家はたくさんいますが、医学の本質であると思われる「人間自体」や「心と身体」を対象とする専門家はあまりいません。

 

加えて言えば、「計数至上主義」という側面も強い。なにごとも計数で評価するようになったために、「得点至上主義」を生み、得点を手早く挙げるための「効率主義」をもたらしました。そのため、本来は「効率」で測ってはならない「教育」や「医療」の現場にも、効率主義がはびこるようになりました。

 

「立派な人間を育てたか」「健康体に戻したか」といった本質を忘れ、「教科書をすべて終わらせたか」「何人の患者を診察したか」といった数量を重視するようになってしまったところがあります。

 

それに対して、東洋型の思考は、その対象が何であっても、「根本に還る」考え方です。「その根本は何だろう?」「この問題の根本には何があるのだろう?」と考えていく。「区分」「専門化」していくのではなく、全体を全体として捉え、その根本に何があるかを考えます。 枝葉に向かうのか、根本に向かうのか──ここが西洋型と東洋型の思考法の大きな違いです。

 

また、視点を変えるだけで解決策が出てきたりします。

 

世の中を見るときにも、「こちらから見てみたら?」「反対側から見ると?」「今度は上から見てみよう」と、視点を変えるだけで全く新しい解決策が見えてくる。だから、思考回路はできるだけ豊富に持っていたほうがいい。その意味でも、東洋思考という、東洋的な考え方が役に立ちます。

 

たとえば、「プロフェッショナルという言葉を日本語では何というでしょう?」と質問することがあります。そう聞かれたときに、どうやって考えるか? です。西洋的な考え方は、テーマに対してしゃにむにドーッと何度も当たっていく感じですね。「あれかな」「これかな」とぶつかっていきます。

 

東洋思考ではどう考えるかというと、「プロ、これは陽だ」「では、プロの陽に対して陰は何かな?」と考える。「アマチュア」ですよね。そうすると、「アマチュアは日本語で何と言うか? 素人だ。あ、そうか、じゃプロは玄人と言うんだ」と答えが出ます。

 

この「東洋思考」という、東洋的な考え方、東洋的な思考回路を持っていることがものすごく大切です。何でもそうやって「対比的陰陽」を見る。「こちらがこうだったら、対は何かな?」と考えるのです。すると、意外なほどすぐに答えが出て来ることが多い。私の発想や思考にびっくりされることも多いが、いつもそうやって考えているのです。

 

 

以上、『ぶれない軸をつくる東洋思想の力』(光文社新書)より、一部改変してお届けしました。

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ぶれない軸をつくる東洋思想の力

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田口佳史(たぐちよしふみ)/枝廣淳子(えだひろじゅんこ)

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