ryomiyagi
2020/09/09
ryomiyagi
2020/09/09
※本稿は、斉藤徹『業界破壊企業 第二のGAFAを狙う革新者たち』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
いつの時代も、古い文化を打破する革新は、新しい世代が持ち込みます。はじめに、続々と生まれてくる「破壊的なイノベーション」の主役について考えてみましょう。
「2019年度 ディスラプター50」に登場する、世界でもトップクラスのスタートアップ50社はどのような人物が創業したのか、共同創業者も含めて調査してみると、興味深いことがわかりました。
創業者(共同創業者)118名のうち、なんと48名(41パーセント)は、1981年以降に生まれた「ミレニアル世代」だったのです。
政治の世界では、未だにベビーブーマー世代が岩盤のように実権を握っており、「オーケー、ブーマー」という嘆きの言葉が世界的なブームになりましたが、経済における主役は、すでにミレニアル世代にシフトしつつあるということです。
2020年の米国においては、全人口3億2800万人のうちミレニアル世代は1億7300万人、人口比で53パーセントと過半数を超えており、消費人口を考えても、企業の多くがミレニアル世代を強く意識したビジネスを展開していることは間違いありません。
参考までに2020年の日本を見てみると、全人口1億2600万人のうちミレニアル世代は4700万人、人口比で37パーセント。米国よりかなり高齢化が進んでいるのがわかります。
ミレニアル世代最大の特徴は、物心ついたときからデジタル文化を身近に感じながら育ってきた「デジタルネイティブ」であることです。
また、この世代をさらに分解すると、「インターネットや携帯電話とともに育ったY世代(1981年〜1995年)」と、さらに進化して「スマホやSNSとともに育ったZ世代(1996年〜2010年)」に分類できます。
テクノロジーの急激な進化は、人々のつながりを深め、リベラルで多様性を大切にする若者を生み出しました。
SNSからリアルタイムに情報をキャッチし、自らもSNSで情報を発信する。他者とのつながりや共感を大切にする。価値観の押しつけを嫌う。環境保護や社会貢献意識が強い。モノよりコト。お金より時間。多機能よりシンプル。高価なブランド品よりも自分自身にフィットしたオンリーワン。そのような価値観や行動様式を持つ世代です。
彼らのコミュニケーションスタイル、ライフスタイル、さらには購買行動や価値観などを、多くの業界破壊企業は強く意識しています。
ミレニアル世代は、インターネット上でさまざまな情報交換を当たり前のように行っており、多くの人々と情報や感情をシェアし、ときに行動をともにします。
SNSにおけるキーワードは「共感」です。今や、ビジネスを構築する上で「共感」はもっとも大切にすべきテーマとなってきました。
アメリカの未来学者、アルビン・トフラー氏は著書『パワーシフト』(中公文庫)のなかで、「人類の進化とともに、パワーの源泉が変わってきた」と述べています。
古くは「暴力」が、唯一のパワーの源泉でした。暴力(あるいは暴力に裏打ちされた権力、司法力)を持っていることで、人々を動かし、強力な影響力を発揮できた時代がありました。
しかし、産業革命によって新しいパワーの源泉が生まれました。それは「富」です。お金で暴力も買えるようになり、富は暴力を上回るパワーの源泉となりました。
さらに、情報革命によって「知識」が第三のパワーの源泉となりました。知識や情報があれば、お金を生むことができ、影響力を行使することもできます。
つまり「暴力→富→知識」というパワーシフトが起こったことを、トフラー氏は説いたのです。
しかし、トフラー氏が『パワーシフト』を著した1990年から、さらに時は流れました。グーグルの登場により、世界中の人が、インターネット上にある情報や知識にアクセスすることができるようになり、知識の価値が相対的に低下したのです。
一方で、SNSで人々が深くつながった世界が登場し、新しいパワーの源泉が登場してきました。
それが人々の気持ち、集団的な感情を誘起する「共感」のチカラです。
政治においても、経済においても、透明な時代のなかで情報を隠蔽することが困難になるとともに、人々のつながりが可視化されたことで「共感」されることの重要性が増してきたのです。このパラダイムシフトを、私は「ソーシャルシフト」と呼んでいます。
ここではミレニアル世代の特徴として語っていますが、これは、もはや世代を超えた大きな潮流といえるでしょう。
株式会社光文社Copyright (C) Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved.