akane
2018/07/25
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2018/07/25
ヤフーが週休3日制を導入する――。働き方改革に関係するニュースとしてはかなり衝撃的だったので、覚えている方も多いでしょう。
ただ、その伝えられ方、ニュースを見た人の抱いた印象は、実際の思惑とは少し異なっているようです。では、いったいヤフーはどういう狙いがあってこのような制度を考え付いたのでしょうか?「週休3日」の裏側には何があるのでしょうか?
7月に光文社から発売された『残業の9割はいらない』にて、ヤフーの人事トップ・本間浩輔さんが語ってくれました。
週休三日と聞いて、どう思いますか?
二〇一六年九月二五日、日本経済新聞の朝刊に「ヤフー、週休三日制検討 全従業員対象」という見出しで、次のような記事が掲載されました。
ヤフーは、約5800人の全従業員を対象に週休3日制の導入を検討していることを明らかにした。働き方の多様化を進めることが目的で数年内の実現を目指す。
この制度は、ヤフーでは「えらべる勤務制度」と名づけられ、翌二〇一七年の四月に導入されました。当面は、子育てや介護などの事情を抱えた正社員や契約社員が対象で、土曜・日曜以外にもう一日休暇を取得し、週休三日で働くことが可能となっており、記事の通り、いずれは全従業員が週休三日で働けるようにすることを目指しています。
この記事はかなりインパクトがあったと聞いています。これを読んだ世の中の企業経営者の中には、「社員がそんなに休んで、ヤフーは大丈夫か。社員が努力しない会社になるのではないか」といぶかしく思った人もいたかもしれません。
けれども、そういう指摘はやや的外れで、この「えらべる勤務」はけっして努力しない社員を許容するような制度ではありません。ただし、今後、この制度を運用し、拡大していくためには、いくつかの問題について今のうちによく考えておく必要があります。
たとえば、給料はどうするかという問題です。現行の「えらべる勤務制度」では土日以外の休暇は無給の扱いとなり、週休三日で働く人の給料は下がることになります。
しかし、今後、この制度を利用する社員の中に「私は週休三日でも効率よく働きますから、給料は下げないでください」と言う人がいたら、どうすべきでしょうか。仮にその人の言い分を認めるとして、本人の「効率のよい働き」を会社としてどのように把握すればいいのでしょうか。
週休二日という一般的な枠組みがいったん崩れれば、「私は三日間で四日分働くので、週に四日休んでもいいですか」と言う人も出てくるかもしれません。週休四日はさすがに極論のようにも聞こえますが、働く時間の総和が変わらないのであれば、週に四日休んでもべつに構わないではないかと考える人がいたとしてもおかしくありません。
いつ働くべきなのかという問題にも向き合う必要がありそうです。「取引先から電話やメールが来ない日の方が集中して働けるので、土曜日に出勤して、日曜、月曜、火曜と休んでいいですか」などと言う人が現れるかもしれないからです。
土曜日や日曜日に出勤するのは、百貨店や飲食店などのサービス業ではふつうの働き方ですし、同様に週末働きたいと希望する社員がヤフーにいたとしても、まったく不思議ではないでしょう。
実際、私の友人のある会社社長は、金曜日と土曜日に休んで、日曜日に出勤しています。彼には、経営者として重要な意思決定をするためには、日曜日に静かなオフィスに来て、ひとりでじっくりものを考えたり資料を読み込んだりするのがいいという持論があって、自らそれを実践しているのです。
このように完全週休三日を念頭に置くと、いろいろと検討しておかなくてはいけないことが出てきます。そして、私はここに働き方改革の本質があると思っています。
以前、私が、他社で管理職を務める知り合いに、この「えらべる勤務制度」について話したところ、感覚の鋭い彼は即座に、「ああ、ヤフーの社員さんはこれから大変になりますね」と感想を述べてくれました。
たしかにその通りで、週休三日はけっして社員に甘いだけの制度ではありません。なぜなら、この制度の裏側には、「成果主義の徹底」というコンセプトがあるからです。「時間にとらわれずに自由な働き方をしてください。だけど会社はあなたの成果をもとに評価しますよ」というのが、ヤフーの進めようとしている働き方改革にほかなりません。会社は社員に対して、拘束時間の対価としてではなく、成果の対価としてお金を払う。そういう考え方に立っていると言ってもいいでしょう。
週休3日と耳にして「ヤフーに転職したい!」と反射的に感じた人もいるかと思います。しかし一口に週休3日と言っても、生産性を上げることをセットにしてはじめて意味があるのですね。
働き方と休み方のことを考えると「日本企業の生産性」という本質的な問題点に行き着くようです。
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