酵素ドリンクはニセ科学!信用するのはお金の無駄
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『写真:AFLO』

 

酵素ドリンク、酵素ジュース……。生の酵素をとると、体の中で代謝を促してくれるという情報が氾濫しています。でもそれはウソ。酵素はたんぱく質です。肉や魚、卵などと同じで、消化され分解されてしまうのです。

 

 

体の中では、さまざまな種類の酵素が働いています。化学反応を促す触媒の働きをするもので、酵素なしでは生命活動は成り立ちません。

 

とても重要なものなので、外から補いたくなるのは人情。そのためか、「酵素を食べて健康に」というブームは繰り返されています。

 

何度かのブームを経て、酵素ドリンクや酵素ジュースが流行りだしたのは2010年頃。ダイエットにいいとか、きれいになれるとか、盛んにインターネットで宣伝され、ドラッグストアに並んでいます。自然の原料を発酵させて酵素を増やした、などという製品も目立ちます。

 

現代人は、加工食品を多く食べ酵素をとる量が減っているので体の代謝が悪くなっている。したがって、酵素を補給して体の代謝を活発化しましょう。そうしたら痩せますよ、きれいになりますよ……。

 

でも、酵素ってなにか、知っていますか?

 

酵素はたんぱく質です。たんぱく質は、20種のアミノ酸がつながってできた化学物質で、アミノ酸の配列によって種類が変わり構造が変化し、さまざまな役割を担うのです。筋肉や内臓、皮膚や髪の毛などもたんぱく質でできていますし、血液中で物質を運ぶ役割を果たすヘモグロビンや、インスリンなどのホルモンもたんぱく質です。

 

人の体の中には、数万種類のたんぱく質がある、とみられています。人は、肉や魚など食べ物としてとったたんぱく質を、消化により分解してアミノ酸や、アミノ酸が数個程度つながったペプチドにして、小腸から吸収しています。そして、このアミノ酸を用いて体内でたんぱく質を作り出し、生命活動を営んでいるのです。

 

これらのたんぱく質の中でも非常に重要なのが、体の中で起きる化学反応を促す働きを持つ酵素。生き物の体、生命はすべて、化学物質から成り立っていて、化学反応が止まったら死んでしまいます。

 

だから、外から補給する?

 

でも、酵素もたんぱく質なのです。肉や魚などと同じ。加熱すると変成します。生でとっても、肉や魚などと同じように、消化されてしまいます。

 

胃の中は強酸性。食酢より酸性度は強く、食べ物はばらばらに。さらに、胃液に含まれるペプシンという強力な消化酵素が、たんぱく質を細切れにし、そして、小腸で働く酵素が働いてアミノ酸にし、吸収されるのです。そして、アミノ酸は体内のそれぞれの場所で再構成されて体の構成物になったり、しっかりと効く酵素になったりします。

 

消化器官の過酷な環境で、酵素ドリンクの中の酵素も、ばらばらに壊され、そのまま小腸から吸収され体内で活性を持つことなどありません。

 

わずかに、人の消化酵素と同じものを外からとった場合には、分解されずに消化酵素に混じって一緒に働いてくれる可能性はあります。しかし、植物や動物に含まれる消化酵素と人のものは、違う場合も多く、ほとんどは消化管内でやっぱりばらばらになります。

 

「酵素は年齢と共に低下するので、補給する必要がある」などという広告もありますが、まっ赤なウソ、です。

 

結論を言うと、市販の酵素ドリンクや酵素ジュースに手を出すのは、止めた方がいいでしょう。だって、酵素が効く、というニセ科学を利用しているんですよ。そのような企業が、科学的根拠をもとにきちんと品質や衛生を管理して食品を作ってくれるとは、考えにくいと思います。

 

 

以上、松永和紀氏の新刊『効かない健康食品 危ない自然・天然』(光文社新書)より引用しました。ニセ情報が氾濫している「食」の世界を、科学ジャーナリストが科学的根拠をもとに正しく読み解きます!

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効かない健康食品 危ない自然・天然

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松永和紀(まつながわき)

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