天国は本当に存在するのか? 臨死体験をした脳外科医が科学的に考察してみた『プルーフ・オブ・ヘヴン』

るな 元書店員の書評ライター

『プルーフ・オブ・ヘヴン』新潮文庫
エベン アレグザンダー/著、白川 貴子/翻訳

 

 

年間自殺者はおよそ3万人。
平成30年10月現在ですでに18000人近くが自殺しているけれど、もし、死んでもこんな世界がありますよとわかっていたら、自殺者は減るかもしれない。

 

「ちょっとコンビニ行ってくるわ」ぐらいのノリで死んでも帰ってこられたなら、1回くらいは死んでみてもいいかなと思う。けど実際、そうはいかない。

 

けれど、その、「ちょっと死んでくるわ」を実際やった人が世界のあちこちにいて、臨死体験として書き記されている。
この本は、それが「脳神経外科医の医者だった場合」 だ。

 

長年人の脳を研究し、手術してきた現役バリバリのエベン医師。
彼が死んでアッチの世界を見てきたから話をさせてくれ!というのがこの本の主題だ。

 

既視感のあるストーリーだけれど、それを医学や科学、物理的見地を持ってして冷静に分析したところにこの本の存在価値があると思う。
こういうテーマの本って、抽象的で感覚的なものが多いものだからだ。
彼の肉体が死にゆく緊迫した現実世界と、穏やかで深いアッチの思考世界との対比はさすが医師、論理的で見事だった。

 

それどころか、医学専門用語ビシバシで話が素粒子物理学まで及ぶから、理解が難しい箇所もあるくらいで、たたずまいはまるで専門書だ。

 

彼の体験した世界は、現実ではないけど現実と密接に絡み合う。
自分の内側にいるようだし、量子のもつれのようでもあった。

 

自然科学者のはしくれとして生きてきて、誰よりも脳を学んできた自分がまさか臨死体験するなんて信じられないだろ?
でも、あったんだ、どうにかして説明したいんだ!
という彼の強い意思が、本の全編を通して感じられるし、プルーフ・オブ・ヘヴン(天国の証明)というタイトルにも大いに納得した。

 

彼は、ただ死んだだけではない。現実世界とアッチの世界を繋ぐ「何か」の存在をつかんで帰ってきた。
彼は、それは脳ではないか?という仮説を立て、証明を試みた。

 

私は、臨死体験は「人が死に瀕した時にその痛みを和らげる幻覚」というより、実は平行世界があって脳がその信号をキャッチしていると考えた方が、ロマンスがありあまって良いと思っている。

 

結局のところあるかないかはわからないんだけど、その方が死後の楽しみがあっていいじゃないかと。科学が立ち入れない場所は、確かにあるのだ。

 

「えー、あなたは生きている時の良い行いが6987万と飛んで719ポイント。悪いことが7021万1104ポイント。よってあなたは中の下、そこそこ普通のエリアに入ってもらいます。ここでは働かないといけませんよ。」
「いいことが1ポイントでも上回ってたら、働かないでも構わないエリアに入れたんですけどね…。残念でした。死んでも働け!」

 

もし私が死んだ時、こんな世界に放り込まれたら……と考えるとぞっとする。笑
何が待っているかは死んだ後のお楽しみとして、しばらくはコッチで徳を積みましょうか。

 

最後に、なぜ彼はこちら側に帰ってこられたのか、それを証明する言葉で締めたい。

 

私たちはあなたを逝かせたりしない
みんなに必要とされているこの世界に、錨を下ろしてもらわなくては。
私たちがその錨になります
(エベン医師の家族、フィリスの言葉)

 

人生には二通りしかない。
ひとつは、奇跡などまったくないというような生き方。
もうひとつは、すべてを奇跡と思う生き方だ。

 

と、物理学の父であるアインシュタインは言った。「THE 現実の権化」であるような彼でさえそう言っているのだ。
まだ少し私はこちら側の世界に錨を下ろし、必死でしがみついていたい。

 

『プルーフ・オブ・ヘヴン』新潮文庫
エベン アレグザンダー/著、白川 貴子/翻訳

この記事を書いた人

るな

-runa-

元書店員の書評ライター

関西圏在住。銀行員から塾講師、書店員を経て広報とウェブライター。得意なのは泣ける書籍紹介。三度の飯のうち二度までは本!

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