東えりかが読む『クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』現場に残された洋服から事件を解決!

小説宝石 

『クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』講談社
川瀬七緒/著

 

桐ヶ谷京介は高級ブランドと特殊な技術を持つ職人や工場を結びつける服飾ブローカーだ。コロナ禍でも、高円寺南商店街の小さな店にはオンラインでの依頼が引きも切らない。それだけではない。服のシワや傷み方を見れば、美術解剖学に基づいた知識で筋肉のダメージを読み取れるし、服飾史にも通じているため、事件の背景を推理することが出来る。

 

前作『ヴィンテージガール 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』に続く二作目の本書では、本格的に杉並警察署の未解決事件捜査の依頼を受け、現場を調査することになった。相棒は同じ商店街にある古着屋のカリスマ店主、水森小春。彼女はいつのまにかゲーム実況でも人気を博し、登録者数が百万人に到達しそうな勢いである。杉並警察署のお馴染み、南雲隆史警部とともに新人で爽やかな八木橋充巡査部長も仲間に加わった。

 

今回手掛けた事件は六つ。「ゆりかごの行方」では捨て子に着せられていた大人もののTシャツから親の職業を当て、「緑色の誘惑」は独居老婦人を殺した犯人を最近の着衣の趣味から探り当てる。「ルーティンの痕跡」では水森小春の下着泥棒を遺留品の男性用下着の傷み方から割り出した。「攻撃のSOS」では女子中学生の制服のシワから虐待を見抜き、「キラー・ファブリック」ではアナフィラキシーショック死の原因を突き止めた。「美しさの定義」では服飾学校の生徒が使ったミシンの中に残された糸くずと埃から犯人を割り出す。

 

洋服というわかりやすいアイテムを使った物語は推理小説の入門編としてうってつけ。桐ヶ谷京介のファンになるにちがいない。

 

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『復活への底力 運命を受け入れ、前向きに生きる』講談社現代新書
出口治明/著

 

人生は楽しまなければ損! 復活への記録

 

別府市にある立命館アジア太平洋大学の学長、出口治明さんは二〇二一年一月脳卒中で倒れた。本書は現場復帰を目指す出口学長の血のにじむ努力の記録である。

 

一命はとりとめたものの右半身麻痺と失語症が残った。復職できることを信じ「障害を克服するのは新たなチャレンジ」と言い切り、リハビリの専門職を全面的に信頼し身を任せた。その上で、自分で出来るリハビリを工夫し、専門家でも見たことのないほどの反復練習を自らに課した。その効果は絶大であった。

 

二〇二二年四月、入学式に出口さんは電動車椅子で登壇、祝辞を述べた。来春には新学部が創設される。さらなる活躍を期待したい。

 

『クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介』講談社
川瀬七緒/著

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-syosetsuhouseki-

伝統のミステリーをはじめ、現代小説、時代小説、さらには官能小説まで、さまざまなジャンルの小説やエッセイをお届けしています。「本がすき。」のコーナーでは光文社の新刊を中心に、インタビュー、エッセイ、書評などを掲載。読書ガイドとしてもぜひお読みください。(※一部書評記事を、当サイトでも特別掲載いたします)

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