謝らない人をどうすれば受け入れることができるの?『こじれた仲の処方箋』

今泉愛子 ライター

『こじれた仲の処方箋』
ハリエット・トレーナー/著 吉井智津/訳

 

 

人間関係をこじらせる要因の一つに、謝罪がある。原題は「Why won’t you apologize?」

 

あなたはなぜ謝らないのか。迷惑をかけられた側、傷ついた側は、相手が謝ってくれさえすれば許すのに、と思うのだが、謝らない人は徹底して謝らないし、形だけの謝罪でゴマかす人も多い。
 

一方で、理不尽な謝罪を求めてくる人もいれば、せっかく謝ったのに、相手が許してくれないことも少なくない。

 

そんなとき、私たちはどうやって気持ちを切り替えればいいのか。心理学者で、クリニックで20年以上にわたりセラピーを担当しているという著者は、たくさんの事例をもとに解説する。
 

浮気した夫を許せない妻、仕事で妹の結婚式を欠席した姉、子どものささいないたずらに激昂する夫、パーティでの振る舞いに難癖をつけてくる友人。大げさな言い方をすれば、私たちはつねに相手を許せるかどうかの瀬戸際に立たされている。

 

本書がすぐれているのは、相手を謝罪させる方法を指南するのではなく、どう“解釈”すれば、謝罪しない相手を受け入れることができるかを解説する点だ。

 

なぜ、彼、あるいは彼女は謝らないのか。完璧主義者は、自己防衛の気持ちが強く働くし、自分にとって不都合な現実に向き合うことが即、自分を否定することにつながってしまう人もいる。そんな相手に謝罪を求めても苦しくなるだけだ。

 

謝罪してもらっても受け入れられない場合もある。職場のトラブルを、自分のせいにして処罰を逃れた同僚から、数年後に謝罪のメールが届いた。この場合、相手を許せるだろうか。許さない自分が狭量なのではないかと思う必要はない。「あなたの謝罪は受け入れられません」と伝えていいのだ。

 

ここまで書いて気づいたが、私は本書を一貫して自分が「謝罪を受ける側」として読んでいた。著者は、「謝罪する側」にも謝罪の方法を丁寧に解説しているのに、その部分は、あまり熱心に読んでいなかった。私だって、適切に謝罪できていないこともあるはず。例えば、子どもたちに。あるいは親に。それに思い当たったことが本書を読んだ最大の収穫かもしれない。

 

『こじれた仲の処方箋』
ハリエット・トレーナー/著 吉井智津/訳

この記事を書いた人

今泉愛子

-imaizumi-aiko-

ライター

雑誌「Pen」の書評を2002年から担当。インタビューや書籍の構成ライターとしても活動している。手がけた書籍は出口治明『教養は児童書で学べ』(光文社新書)、太田哲雄『アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所』(講談社)など。ランナーとして800mで日本一になったこともあり、長いブランクを経て、再び日本記録に挑戦中。


・Twitter:@aikocoolup
・オフィシャルブログ「Dessert Island」:http://aikoimaizumi.jugem.jp/

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