akane
2019/10/19
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2019/10/19
攻撃面だけでなく、当然ながら投手起用も鍵となる。
CSでは1戦目の山口俊、2戦目のメルセデスともに先発として及第点以上の内容だったことから、2人らを中心にローテを回していくだろう。交流戦のソフトバンク戦でも、山口俊は7回1失点、メルセデスは6回途中まで投げて3失点という結果を残しているのは大きい。特に山口俊に関しては、DeNA時代を含めて対ソフトバンクの成績が非常に良い(※対ソフトバンク戦 通算 4試合先発 4勝0敗 防御率0.95)。
メルセデスも、長いイニングを投げるスタミナには不安材料があるものの、スロースターターではないので、5回までゲームメイクする投球をする能力がある。シーズンより比較的早い段階から救援陣を注ぎ込めることができる短期決戦に向いたタイプだと見ている。
現段階では、昨年まで投手陣の大黒柱だった菅野智之が日本シリーズに先発できるか不明確なため、5回まで試合を作れる山口俊かメルセデスの登板試合で必ず勝ちたいところだ。
CSを見た限りの懸念材料を言うならば、3戦目に2番手で出てきた桜井俊貴を引っ張り過ぎたことがある。また、シーズンの夏場から調子の波が激しい中川皓太を勝ちパターンや接戦試合で起用するのは、ギャンブルの要素が強すぎる。日本シリーズでは命取りになりかねない。CSで素晴らしい救援を見せた大竹寛、田口麗斗、澤村拓一や、クローザーのデラロサを勝ちパターンとして確立させるのは必須だろう。
先発投手が早い段階で降りた場合に、高木京介以外に投げられる投手を用意することや、複数枚を上手く繋いで起用できるかも鍵だ。
さらに、CS4戦目に先発したルーキーである高橋優貴にも注目だ。後半戦以降は先制点を与える傾向にあったが、交流戦では登板がなかったため、スラッターを投げる戸郷翔征同様に、パリーグ球団を相手に投げるのは初めてになる。
※戸郷についてはこちらの記事の「高卒ルーキー、戸郷翔征への期待」を参照
シリーズを通した戦術面では、原辰徳氏の日本シリーズに対する「先手より2戦目必勝”論」は非常に興味深いものを感じた。
原氏は監督として5度日本シリーズに出場した中で、2戦目に勝利したことが3度あり、そのうち2002年と2012年は日本一に輝いた。
また、2013年の楽天とのシリーズでは初戦で勝利したものの、2戦目を落としたことが日本一を逃した大きな原因だと考えているのかもしれない。この時、楽天は当時の絶対的なエース田中将大ではなく、ルーキーだった則本昂大が初戦の先発を務めた。
もちろん初戦でどちらが勝つかは注目されるところだし、勝てば大きなアドバンテージになる。だが、2戦目で突き放せるか追いつくかもシリーズの通して見ると極めて重要になるだろう。
それに紐付けて考えると、短期決戦で1試合単位でも同様のことが言える。すなわち、先制点を許した後いかに早い段階で追いつけるかである。
特に巨人の場合、CSの1、2戦目は先制しての逃げ切り勝利だったが、3、4戦目は先制点を許しながらも中盤までには追いつき、追い越している。
短期決戦で流れが傾いたらすぐに終わってしまう中、そういった意識付けが日本シリーズ進出に結びついたのだろうし、日本一になるための重要な要素でもある。
最後に、日本一を知る2人について触れたい。
坂本と阿部の経験や調子が、シリーズを通して鍵になることは間違いないだろう。
過去の日本シリーズに阿部は5回、坂本は4回出場している。中でも、日本一になった2009年と2012年にはともに高い打撃成績を残している。
特に阿部の場合は、2009年はサヨナラ本塁打を放つなどして日本シリーズ MVP、2012年は6戦目の日本一を決定づける決勝打によって優秀選手賞を獲得した。坂本も2012年は初のクリーンアップを任され打率.360という成績を残し、日本一に貢献した。
しかし、2013年の日本シリーズでは、坂本と阿部が不調に終わり、敗退してしまった。
今シーズン、数々の修羅場を潜り抜けてきた巨人。CSでは、トップバッターの亀井義行やCSファイナルステージMVPに輝いた4番岡本和真の活躍、丸佳浩のセーフティスクイズなどが噛み合って日本シリーズ進出を決めたが、日本シリーズで実力以上の戦いをしていくには、やはり坂本や阿部といった、長年巨人を支えてきたコア選手の活躍が必須である。
坂本は、今年の交流戦優勝を占う試合でもあったソフトバンク戦は不調の時期だったこともあり打率.182と悔しい結果だっただけに、シリーズでの奮起に期待だ。逆に阿部はソフトバンク戦では千賀からのタイムリーを含む打率.571と相性が良かったので、主軸として活躍が期待される。
両選手が最後に競演するこの日本シリーズで互いに活躍することによって、巨人の士気はさらに高まり、勝利に近づくことは間違いない。
そして、「日本一」が新キャプテンである坂本勇人の真の意味での独り立ちの証であり、旧キャプテンで原政権を長年担っていた阿部慎之助の、輝かしい最後の花道になる。それをしっかりと見届けていきたい。
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