ryomiyagi
2020/11/11
ryomiyagi
2020/11/11
『バブル』が一冊になったのを機に、会社時代の物を処分している。
いまは使っていないのに、なかなか手放せなかったモノモノが、家の中にあふれていた。しかしここへきて、「もういいかげんよかろう」という気持ちにようやくなった。
会社時代を総括した『バブル』のおかげで、<禊の力>が上がっているのだろう。
20年編集者をやっていたので、本と雑誌、CDサンプル資料などはもちろん多い。折々整理してきたが、まだある。
そして、もう着ない服・靴・バッグ。もう着ない、というより、装う機会がない。
編集者時代後期の戦闘服だったベルサーチは、子連れ狼(編集者の千ちゃん)に引き取ってもらった。全身ベルサーチにするとなんの人だかわからないほどコワくなってしまうが、今後の彼女に着る機会があることを願う。
クローゼットや引き出しを整理していて気がついた。
さくらももこさんと<おそろい>の品の多いこと。
一時期のももこさんと私はいい年をして少女のように、いろんなものを<おそろい>で持っていた。
色違いのワンピース、おそろいの指輪・ブレスレット、サンダル、などがいまも私の手もとにあって、それらをあらためて眺めると、一緒に旅した先での出来事などが思い出される。
プラダのリュックは、香港で買った。
あるとき、ももこさんがまだ日本に出店していなかった「糖朝」のスイーツを食べたいと言い出して、二人で出かけた。「糖朝」のスイーツを食べることだけが目的だったので、「一泊でいいよ」とももこさんは言い、そのとおり一泊で行って帰ってきた。
買い物はおまけだった。
当時プラダの黒のリュックがちまたで流行っていたので、私は黒が欲しかったのだが、ももこさんが「ぜったい茶色がいい、ミルコも茶色にしなよ」と言うので、折れた。
結果私は濃いベージュ、ももこさんはそれより薄色のベージュを一緒に買った。
そんなふうにももこさんは急にどこそこへ行こう!と言い出すことがよくあった。
一泊で温泉にはもちろん出かけ、それと同じレベルの勢いでアメリカの超能力者に会いに行ったこともある(この話は『ももこのトンデモ大冒険』という本に入っている)。
そのようにしてゆく先々で手に入れた、<おそろい>の品。その片割れだけが、私の手もとに残された。本人は、もういない。
やりたいことぜんぶやって、行きたい場所ぜんぶ行って、先に逝っちゃった。本人がいないのだから、すでに<おそろい>でもなんでもない。
これ、どうすればいい?と訊くわけにもいかず、<おそろい>を発掘するたび、片づけの手が止まってしまうのである。
『バブル』
山口ミルコ / 著
illustration:飯田淳
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