シャリ一粒で握る江戸前寿司!「小さすぎて」泣ける店「すし屋の野八」
寺井広樹の東京いい店泣ける店withおとよ

最近、いつ涙を流しましたか?現代人に必要なことは、もっと「泣くこと」。涙を1粒流しただけでストレス解消効果が1週間続くと言われています。
「家にも職場にも泣く場所がない」「思いっきり泣きたい!」そんな声をよく耳にします。そこで、厳選した“泣ける店”を紹介。案内人は、これまで1万7000人を泣かせてきた“涙活”発案者である寺井広樹、そして、助手の“おとよ”こと、とよしま亜紀。
店主の感動的なエピソードで泣ける店、懐かし過ぎて泣ける店、辛すぎて泣ける店……、東京の泣ける店を、美女の涙と共にお届けします!様々な泣きをご堪能あれ。

 

東京下町の「一粒寿司」に涙したスウェーデンからの女性客

 

前回は「大きすぎて」泣ける店だったので、今回はその逆の「小さすぎて」泣ける店へ。泣き美女の橋本柚、助手のおとよ、そして、私、寺井で行ってきました。

 

 

場所は東京下町、台東区雷門にある「すし屋の野八」で、江戸前寿司が味わえます。

 

店に入るなり、「お寿司、久しぶりです」とおとよが言えば、「回る寿司じゃないなんて緊張しますね」と柚。

 

 

「初めての寿司屋って硬くなる人が多いでしょ。だけど、一粒寿司を出すと、それが話のきっかけになって、リラックスしてくれるんですよ」と「すし屋の野八」の池野弘礼さんが優しく声をかけてくれました。

 

 

さらっと池野さんの口から飛び出した「一粒寿司」という言葉に、「一粒って、どういうことですか?」と尋ねる柚。

 

実は、ココはシャリ一粒で握ったお寿司が出てくるんですよ。通常は一貫につき、シャリ300粒ぐらいありますから、約300分の1サイズのお寿司ということになりますね。

 

そもそも池野さんが、一粒寿司を生み出したきっかけは何だったんでしょうか。

 

「昔からお客さんに小さい寿司を出していたんですよ」と池野さん。「すると、お客さんが“おもしろい”って喜んでくれて、“じゃあ、もっと小さく、小さく”って、お客さんとのやり取りでどんどん小さくなっていったんです。そして、どこまで小さくできるかやってみたところ、最終的には一粒寿司に行き着いたんです」

 

それが今ではネットを通じて拡散して、日本はもちろんのこと、世界中で知られるようになったのだとか。

 

すると、池野さんが「涙活と言えば……」とこんな話をしてくれました。

 

スウェーデンからネットで一粒寿司の存在を知ったと言う女性のお客さんが来てくれたときのことなんですけど……。一粒寿司を出すと、泣いて喜んでくれたんですよ。池野さんも他のお客さんも“泣いて喜んでくれるなんて”とうれしく思っていたんですが、1時間経っても、2時間経ってもまだ泣いていて……。“もうそろそろ泣き止みなさいよ”って、涙活をストップしてしまいました(笑)」

 

話を聞いて、「私たちよりも先に、遠くスウェーデンから涙活を!」と驚くおとよ。それぐらい感動する一粒寿司ってことなんですよ! 楽しみですね。

 

職人の技が光る一粒寿司に一同感涙

 

では、池野さん、一粒寿司をお願いします!

 

 

 

 

「一粒でもちゃんと握ります」と池野さん。ただし、通常の寿司よりも細かい作業のため、握るのには時間がかかります。七貫セットで、およそ7~8分です。

 

左上から 赤身、ヒラメ、中トロ、ほっき貝 左下から ウニ、タコ、玉子、ガリ

 

 

一粒寿司を初めて見て、感動で目に涙をためる柚。おとよの目もうるんでいます。もちろん、私もです。

 

小さくても、普通のお寿司と変わらないんですよ。ウニも海苔で巻いて、軍艦巻きになっています。クオリティの高さに、スウェーデンからの女性客が泣いたのも頷けます。

 

さあ、食べましょう。しかし、2人とも手をつけようとしません。「もう少し見ていてもいいですか」とおとよ。確かに、すぐに食べるのはもったいないですね。

 

 

通常の寿司を並べて、大きさを比べてみました。

 

ちなみに、一粒寿司は多い日は、4、5セット出るそう。お値段はと聞くと「一粒寿司はサービスです。お金を取るものじゃありませんから」と池野さん。

 

その心意気も泣かせてくれるじゃないですか。

 

一粒サイズでも味は本格的な江戸前寿司

 

さあさあ、目で十分楽しんだことですし、いただきましょう。

 

 

「あ、ちゃんと赤身の握りの味がする」と柚。

 

一粒と言っても、味は本格的です。池野さんの職人技には感涙です。

 

寿司はわさび抜きです。一粒寿司を食べた子供がわさびに泣いたことがあるからだそう。わさびは接着剤の代わりになるので、本当は入れた方が作りやすいのだとか。

 

私達がゆっくりと味わっていると、池野さんが赤いモノを取り出しました。

 

 

正体は“乙女の涙”という名前の高知産のトマトです。確かに涙の形をしています。涙活にぴったりですね。

 

 

「口直しにお出ししているんです。そのまま食べてもらっています」と池野さん。糖度12度なのだとか。普通のトマトは糖度5度くらいと聞いたことがありますから、かなり高い数字です。こんなに甘いトマトを食べるのは初めてです。“乙女の涙”の甘さにも、感激して泣かされてしまいますね。

 

なごやかな雰囲気の中、一粒寿司を楽しむ私達。

 

すると、おとよが「関西の両親が上京したときは、連れてきてあげたいです」 と言い出しました。店から雷門も近いですし、東京スカイツリーも見えますし、きっとご両親も喜んで涙してくれることでしょう。ただし、一粒寿司はあくまでもサービス。混んでいる時は難しいかも。

 

けど、そこは池野さん、「前もって連絡してもらえれば、ちゃんと作りますよ」とのこと。ありがとうございます。

 

ちなみに、店には文化人やスポーツ選手、芸能人も多く来店。奥の座敷は2部屋とも“出世部屋”と呼ばれており、中で寿司を食べると実力以上の力を発揮できると言われているのだとか。ある野球選手は“出世部屋”で寿司を食べたら、次の日、大活躍でヒーローインタビューに。

 

 

しかし、右の“出世部屋”と左の“出世部屋”とでは、威力に違いがあるのだそう。「あるとき、同じ会社の人が来店したんですよ。こちら側に入った人は会長に、あちら側に入った人は社長に」と池野さん。

 

さて、右と左、どちらがより“出世”するのかは、お店に来たときに聞いてみてくださいね。

 

 

●お店の情報
住所:東京都台東区雷門1-3-7(東京メトロ銀座線「田原町駅」から徒歩5分、都営地下鉄浅草線「浅草駅」から徒歩7分)
営業時間:17:00~26:00(L.O.25:00)
定休日:日曜
電話:03-3841-3841
URL:http://www.edo.net/no8/
※一粒寿司はお客へのサービス。“おまかせ(税抜5000円)”とのセットでの注文をお勧めします。

東京いい店泣ける店

寺井広樹・とよしま亜紀

【寺井広樹】
泣いて心のデトックスを図る「涙活」を発案。『涙活公式ガイドブック』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)、『泣く技術』(PHP研究所)、絵本『ナミダロイド』(辰巳出版)など著書多数。
【とよしま亜紀】
雑誌・書籍編集兼ライター。現在、師匠である寺井氏の元で“涙のスペシャリスト”として修業中。著書に、あの世とこの世の情けに泣ける『宮城の怖い話』『新潟の怖い話』『静岡の怖い話』(TOブックス)。

イラスト:えんどうまめ
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