ゴジキが振り返る2010年代の高校野球(2018年夏)
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2020/08/24

新型コロナウイルスの影響で中止となった今年の春のセンバツ、夏の甲子園。代替案として「甲子園高校野球交流試合」が開催されることになりました。高校野球ロスを取り戻すために、お股クラスタの1人でもあるゴジキ氏(@godziki_55)に2010年代の高校野球界を振り返ってもらうプレイバック企画。

 

 

2018年夏の甲子園 優勝:大阪桐蔭(大阪、4年ぶり5回目)

 

プレッシャーを押しのけ、圧倒的な強さで春夏連覇を飾った大阪桐蔭

 

この年の大阪桐蔭は「春夏連覇」に対して使命感を持って野球をしていたように思える。
センバツ後の春季大会では、エースの柿木蓮や4番の藤原恭太、トップバッターの宮崎仁斗をベンチ外にしながらも大阪を制する。続く近畿大会も藤原恭太が復帰したが、柿木と宮崎抜きで智辯和歌山を下して優勝した。
春季大会の時点で、主将・中川卓也を中心にチームとしての選手層と完成度は相当高かった。

 

夏の大会も盤石と思われたが、予選では厳しいマークをされていた。それが顕著に現れたのが、準々決勝の金光大阪戦だった。スライダーの切れ味鋭い左腕の久下奨太と小気味良い投球を見せる鰺坂由樹が交互に投げる金光大阪の継投策に、わずか2点しか取れなかったのだ。
先発の根尾昂は制球に苦しんだが、悪いなりに試合を作る投球を見せた。打線は3回に山田健太がチャンスメイクし、センバツで決勝点を記録した宮崎が先制のタイムリーを放つ。同点に追いつかれた直後の5回にも山田がチャンスメイクし、井坂太一が勝ち越しタイムリーを放った。この1点を守り切り、苦戦しながらも準決勝に進んだ。

 

準決勝の履正社戦も壮絶な戦いとなった。この試合も先発は根尾が務めたが、前回の登板とはうって変わり、素晴らしい立ち上がりを見せた。
対する履正社は、濱内太陽がこの大会初先発としてマウンドに上がった。大阪桐蔭から見たら想定外の起用だったに違いない。
試合は両校の先発が6回まで3安打に抑える投手戦となった。その中で大阪桐蔭は、藤原がチャンスを作り、根尾がタイムリーを放ち先制。その後、青地斗舞のタイムリーなどで3点差をつけて優位に試合を進めていく。

 

ただ履正社は、このままでは終わらなかった。疲れが見え始めた根尾をたたみ掛けるように、1年生ながら5番に座っている小深田大地の2塁打を足掛かりに1点を返し、8回裏には筒井大成、西山虎太郎の連打で1点差として、濱内の一塁ゴロで追いつく。さらには、松原任耶が浮いた球を左中間に放ち、逆転に成功。

 

1点ビハインドの状況で9回の攻撃を迎えた大阪桐蔭だが、焦る様子はなく冷静だった。代打の俵藤夏冴がヒットで出塁し、石川瑞貴のバントミスがあったものの、宮崎・中川・藤原・根尾の連続四球で追いつく。そして山田がタイムリーを放ち、大阪桐蔭が逆転。最後はエースの柿木が抑えてこの激戦を勝利した。センバツの三重戦のような、劣勢の場面でも跳ね返すメンタリティや集中力の高さを見せつけるような戦いぶりだった。決勝は23対2で大勝し、第100回記念大会の甲子園出場を決めた。

 

大阪桐蔭は、甲子園に入ってからも安定した強さを見せる。
初戦の作新学院戦は、4番藤原のタイムリーとエース柿木を中心とした固い守備で接戦を勝利した。2回戦の沖学園戦は、根尾が打ち込まれる部分があったものの、藤原の1ホーマー3打点を筆頭に1番宮崎から5番根尾までの全員が打点をあげて勝利した。

 

3回戦の高岡商戦は横川凱が先発した。2回に一死満塁のピンチから死球で先制を許すが、その1点に収めた。打線は3回、中川の2点タイムリーツーベースですぐさま逆転。さらに6回には山田が追加点となるレフトオーバーのタイムリーを放つ。
相手投手の山田龍聖の前に11奪三振を喫したものの、要所での得点や横川から柿木の投手リレーで、2017年夏に悔しい思いをした3回戦を競り勝った。

 

準々決勝の浦和学院戦も好投手渡邉勇太朗を含む投手陣に対して、藤原根尾のアベック弾を含む11得点で、勝利した。中盤までは競り合った試合だったが、中盤から終盤にかけての長短打の集中打で畳み掛けた。

 

準決勝の済美戦は、先制点を許したものの、4回と5回に得点して勝利。この試合では、クリーンアップに打点がなかったものの石川や山田と言った打者が打点を挙げて、得点パターンの豊富さを見せつけた。

 

そして決勝では、この大会最も注目されていた吉田輝星を擁する金足農業との対戦となったが、屈することなく初回から圧倒的な力を見せつける。最終的には13点を得点して、史上初となる2度目の春夏連覇を飾った。

 

この年の大阪桐蔭は、逆境を迎えても必ず追いつき逆転する姿が特徴的だった。選手の能力はもちろんのこと、西谷浩一監督と選手の冷静さはまさに「勝者のメンタリティ」を体現していたのではないだろうか。

 

打線も、勝負強さと出塁率が光ったトップバッターの宮崎やクリーンアップの中川、藤原、根尾を軸として計算しつつ、下位打線の山田、石川の一発を含む長打など、得点パターンが極めて多彩だった。

 

また、エース柿木と二刀流の根尾、左腕の横川を中心とした投手陣の運用のバランスも素晴らしいものがあった。このような左右含めた投手が複数人いることは重要で、球数制限のルール化にもいち早く対応できるチーム作りが可能になる。2020年代以降に勝ち抜くチームをわけるポイントにもなるだろう。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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セイバーメトリクスの落とし穴マネー・ボールを超える野球論

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