5万5千人を動員ーー「大銀座落語祭2008」【第19回】著:広瀬和生
広瀬和生『21世紀落語史』

21世紀早々、落語界を大激震が襲う。
当代随一の人気を誇る、古今亭志ん朝の早すぎる死だ(2001年10月)。
志ん朝の死は、落語界の先行きに暗い影を落としたはずだった。しかし、落語界はそこから奇跡的に巻き返す。様々な人々の尽力により「落語ブーム」という言葉がたびたびメディアに躍るようになった。本連載は、平成が終わりを告げようとする今、激動の21世紀の落語界を振り返る試みである。

 

「大銀座落語祭2008」のサブタイトルは「落語の明日」。7月17日(木)〜21日(月・祝)の5日間で5万5千人の観客動員があった。

 

中央会館の「究極の東西寄席」はA(18夜)「コロッケ」「鶴瓶・笑瓶」「文珍」、B(19昼)「正蔵・風間杜夫」「圓歌・小金治」「三枝」、C(19夜)「花緑vs渡辺正行・ラサール石井・小宮孝泰」「清水ミチコ」「昇太」、D(20昼)「木久扇・ケーシー高峰」「春團治・可朝」「歌丸」、E(20夜)「八方・きん枝・小枝」「ノブ&フッキーものまね」「志の輔」の5公演。

 

最終日の21日にはメインステージが有楽町よみうりホールに移り、昼に「小朝」「三枝」「小三治」の三本立て公演、夜にはグランドフィナーレと銘打って「昇太・志の輔 夢の二人会」を開催。そのグランドフィナーレの裏では新橋演舞場で正蔵が武蔵坊弁慶を演じる「勧進帳」を第1部、「三枝・鶴瓶二人会」を第2部とする特別公演が行なわれている。

 

その他の会場を見ると、博品館劇場では17日・18日に「談春と上方落語」、20日と21日に「喬太郎と上方落語」があり、談春に関しては先に述べたが、喬太郎のほうには福笑・たま(20日)、雀々・都丸(21日)が出演している。博品館ではその他、19日には「権太楼/松喬・小里ん・志ん橋」「小米朝/可朝・鶴光」が、20日には「白鳥と旬のお笑いたち/電撃ネットワーク/桃太郎の『死神』」が、21日には「チャンバラの会(時代劇コント、侍らくご他)」等が行なわれている。

 

時事通信ホールは17日「オール鳴り物入りの会(市馬、菊之丞他)」、18日「ザ・ニュースペーパー/ブラック&談笑」、19日は「雲助/小満ん」(昼)と「映画『深海獣レイゴー』(林家しん平監督作品)/福笑・しん平・彦いち・あやめ・遊方」(夜)、20日は「亜郎ミュージカル落語/狂言と落語の会(野村萬蔵、鈴々舎馬桜他)」(昼)と「春團治トリビュート(春團治、喜多八、歌武蔵他)/米朝トリビュート(米朝。ざこば、南光、雀々他)」(夜)、21日は「雀三郎の『らくだ』を聴く会(ゲスト鶴瓶)」(昼)と「芸能人らくご大会(南原清隆、千原ジュニア、コロッケ他)」(夜)。

 

銀座みゆき館劇場で行なわれたのは、17日「キレル!の会(馬生、小満ん、小燕枝、小金馬、正朝)」、18日「待ってました!笑福亭!(鶴光、呂鶴、小つる他)」、19日「志らく・白鳥/つく枝・三三」「おにぎやか!馬生一座(馬生、馬楽、正雀、菊春、世之介)第1部:落語/第2部:鹿芝居」、20日「大河らくご東の旅(松枝、九雀、佐ん吉他)」「文楽・志ん生 芸の継承(楽太郎、文楽、南喬、今松他)」、21日「歌之介・歌る多・歌武蔵/ひな太郎・圓太郎・遊雀」「市馬の世界(落語と唄)/遊びの会(小さん、一朝、喜多八、文左衛門)」。

 

JUJIYAホールは17日「京の噺の会(たい平、金馬、かい枝他)」、18日「オール鳴り物入りの会2(染丸、馬桜、扇遊他)」、19日「やられた!の会(馬風、小袁治、川柳他)」「長講特選会(圓窓、藤兵衛他)」「東京で聴けない噺(吉坊、雀松他)」、20日「ほろりの会1(燕路、まん我他)」「米朝イズムの会(千朝、宗助、小米他)」「愉快な仲間(左談次、志ん五、米助他)」、21日「ほろりの会2(梅團治、喬太郎他)」「遊三・小遊三/圓蔵・福團治」「NHK『ちりとてちん』出演者の会(松尾貴史、吉弥他)」。

 

教文館ウェンライトホールは17日「三三の世界」、18日「ラクゴリラ(生喬、花丸他)」、19日「圓菊一門会/馬生一門会」「はやかぶの会(瓶太、文華他)」、20日「『真景累ヶ淵』通し(丈二、馬るこ他)」「繁盛亭in銀座(春之輔、仁福他)」、21日「芸協(鯉昇、平治他)/女流三人会(神田陽子、桂あやめ他)」「春團治一門&文枝一門/鶴笑・小春團治・仁智」。

 

そして銀座小劇場は17日「白酒独演会」、18日「一之輔独演会(ゲスト:文左衛門)」、19日「栄助独演会」「かい枝独演会」、20日「志の吉独演会」「朝太独演会」、21日「好二郎独演会」「たま独演会」。この会場のプログラムは「これからの落語界はオレたちに任せろ!!」と銘打ってのもの。栄助は現在の百栄、好二郎は現在の兼好だ。

 

その他、入場無料・完全入替制の会として山野楽器で9公演(馬桜、志ん馬、こみち、天どん他)、銀座東芝ビルで6公演(好二郎、王楽、きつつき他)、フェニックスホールで4回(白酒、左龍、金時他)、博品館劇場で「英語らくご(志の輔他)」「手話らくご(正蔵ほか)」、OPUSで「韓国語らくご」「子供寄席」他が行なわれた。

 

ファイナルとなった「大銀座落語祭」は、落語を盛り上げるためというより、むしろ既に訪れていた落語ブームを象徴するイベントのような見え方をしていたと思う。これだけの規模でこれほど盛り沢山な落語フェスを実行できたのは、小朝あってこそ。落語ブームの起爆剤としての「大銀座落語祭」は役割を見事に果たして幕を閉じた。

 

なお、前述したように僕はこの年、博品館に17・18・20日と通って「談春と上方落語」「喬太郎と上方落語」を観たが、それは「大銀座落語祭」への参加というより、追いかけていた談春や喬太郎の会だから。残る2日間は「大銀座」には不参加で、19日には小三治・さん喬・扇遊他が出演する「朝日名人会」(14時開演)と鯉昇・喜多八・龍志が出演する「ビクター落語会」(18時開演)に、21日には「志の輔らくご 21世紀は21日」(14時開演)と「立川談笑月例独演会」(18時半開演)に足を運んでいる。

21世紀落語史

広瀬和生(ひろせかずお)

1960年生まれ。東京大学工学部卒。ハードロック/ヘヴィメタル月刊音楽誌「BURRN! 」編集長。落語評論家。1970年代からの落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に生で接している。また、数々の落語会をプロデュース。著書に『この落語家を聴け! 』(集英社文庫)、『落語評論はなぜ役に立たないのか』(光文社新書)、『談志は「これ」を聴け!』(光文社知恵の森文庫)、『噺は生きている』(毎日新聞出版)などがある。
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