冷食晩酌
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

冷食オールドスクール

 

今日は「冷凍食品」で飲んでみようと思います。

 

近年の冷凍食品の進化っぷりには眼を見張るものがありますよね、たぶん。たぶんというのは、僕、晩酌のおつまみは自作するのが好きなほうなので、普段あんまり食べないんです。冷凍食品。なので、「〇〇ってメーカーの『こだわりの〇〇』って商品が超ウマイ!」とか、そういう話ではありません。それこそ実家の冷凍庫に常備してあった、昔ながらの、冷凍食品ならではの、ちょっとチープなんだけど嫌いになれない、むしろ大好き、そんな冷凍食品を3種類ほど買ってきて、久々にそいつらとじっくり向き合いながら飲んでみようというわけです。

 

ラインナップは、まずからあげ。これは外せないでしょう。今回は、ニッスイの「若鶏のから揚げ」というのを買ってみました。
それからたこ焼き。これもマストじゃないですか? 違ったらすいません。うちの実家ではそうだったんです。テーブルマーク「ごっつ旨いたこ焼き」をチョイス。
ここからが人によって大きく分かれるところですよね。スーパーの冷凍食品売り場に行くと、それはもう膨大な種類の商品があります。コロッケやメンチカツなどの揚げ物系、餃子やシュウマイなどの点心系、あと「みんなそんなに好き!?」って驚かされるパスタ類などなど。そんな数ある冷凍食品の中でも僕が妙~に好きなのが「イカ天」。イカの天ぷら。前2つと比べると急にメジャー感が薄れるので、食べたことないって人も多いかもしれません。が、これが冷食ならではの味わいで大好きなんです。マルハニチロ「いかの天ぷら」をチョイス。

 

 

トッピングも惜しみなく

 

お皿に、からあげ、たこ焼き、イカ天をそれぞれ3つずつ乗せ、レンジでチンします。3ついっぺんに温めるので、それぞれの袋にあるワット数および時間設定には、今回は目をつぶってもらいましょう。結果、からあげとたこやきに対して体積の小さいイカ天が、若干温まりすぎ、蒸気をあげながらフニャッフニャになってしまうんですが、こいつはそれでこそ真価を発揮するのでぜんぜんオッケー。
温まったらこんどは、からあげの横にマヨネーズたっぷり。たこ焼きにはソース&マヨドボドボ。イカ天はもともと天つゆに浸してあるのでそのままで、全体に、わざとかかっているところといないところがまばらになるように、七味唐辛子をふります。無論、味に幅を持たせるため。え? カロリーが? そんなことを気にして冷食晩酌は楽しめないでしょうよ。
お酒はプレーンのチューハイを用意しました。おつまみがどれも強力に濃い味なので、ここはこの世で最も潔い酒ことチューハイで迎え撃とうと。つってまぁ、普段からプレーンチューハイばっかり飲んでるんですけどね。
ではでは、魅惑の冷食晩酌を始めていきましょう。

 

 

完成! 茶色い3種のプレート

 

まずはお皿全体を眺めてみます。清々しいほどに全茶色。飲食店で出てきたらギャグですよこれ。で、何からいくと思います? これがまさかの、イカ天なんですねぇ。
イカ天といったって、ゲソやらエンペラやらいろいろな部位が入ってるわけじゃありません。巨大なイカから切り出したと思われる細長く真っ白な立方体。それにたっぷりと衣をつけて揚げ、惜しみなく天つゆを染みこませてある。箸で持ち上げてみると、やる気なくフニャリとしなだれる身。半分かじってみる。サクッ! なんて食感がないことは言わずもがな。なんですが、つゆの甘辛い旨味と油の香ばしさが強烈に感じられ、まだ歯がイカに到達する前から超うまいです。イカに到達。イカって本当、味も食感もどこか主張がぼんやりしていて、にも関わらず、やたらにうまいから不思議ですよね。クニュクニュクニュ。イカと衣の美味しさが渾然一体となったところに、シュワーっとチューハイを流し込む。うん、最高。
このイカ天、きっと老舗天ぷら店の頑固店主なんかからしたら、到底天ぷらとは認められないものでしょう。だけどね、けっこういると思いますよ。実は自室の冷蔵庫の氷の下に冷食のイカ天を隠し持っていて、夜中に誰にも見つからないよう、コソコソと食べてる大将。

 

さて次だ。たこ焼き。これまた冷食特有で、形がまず球体じゃない。砲弾型っていうんでしょうか? 上から見ると丸いんだけど、底は平らになってて、それがかわいい。真ん中から箸を入れ、半分に割ってパクリと食べてみると、お、タコが入ってるほうが当たったぞ。これまた決して、外カリッ、中フワッみたいな食感じゃない。全体ベチャッ。だがそれがいい。濃厚なマヨソース風味、それから、意外にもしっかりと感じられるダシの旨味。あぁうまい。っていうか、こんなに美味しかったっけ? 久しぶりに食べたけれども、実は冷食のたこ焼きの世界も進歩しているのかなぁ。商品名に「ごっつ旨い」って書いてありましたけど、ほんとにごっつうまいですね。これ、ご飯にも会うんだよなぁ。とかいいつつ、お酒が進んでしょうがない。

 

さて、からあげいきましょう。ちょっと待ってください、このからあげ、はっきり言って、見た目が立派すぎる気がします。僕が知ってる冷食からあげは、もっと衣がしなしなしてて、大きさも頼りなく、「からあげと呼べなくもない」というようなものだった気がしますが、このニッスイのからあげは、堂々としたからあげそのもの。試しにマヨ七味のかかっていない素の部分をかじってみると、なんと、ちゃんと鶏肉に醤油ダレを揉み込んであるような風味を感じる。もちろん衣はカリッとはしていませんが、冷食にしてはうますぎる。ニッスイさんの相談窓口に電話してそのまま伝えてみようかとも思いましたが、担当者の方の困惑の顔しか浮かばないので思いとどまりました。とにかく、お子様のお弁当などに入れるための、きちんと美味しいからあげとして、この商品は超おすすめ! ただ、今日の僕の気分は、もうちょっとチープな冷食らしいからあげだったんです。って、なんつーめんどくさい酔っ払いだ。それにまぁ、けっきょくマヨ七味にドボンでバカみたいな味にして食べてしまうんですけどね。

 

あぁ、楽しかったし美味しかった。またやろう、冷食晩酌。ただ、明日は野菜中心のおつまみで飲むことにしようかな。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
関連記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を