トランプ大統領による鉄鋼追加関税を免除された韓国のその後
ピックアップ

 

自分の交渉術に酔いしれるトランプ大統領

 

トランプ大統領による鉄鋼追加関税の焦点は、EUと日本が対象国・地域に含まれるか、だった。日本とEUは、それぞれ日米同盟、北大西洋条約機構(NATO)という同盟国であることを理由に、安全保障上の懸念がないことから、関税引き上げ対象国からの除外を求め続けた。

 

しかし日本は除外の対象になっていない。同盟国であること、安倍・トランプの蜜月関係を考えると、当初、日本は当然除外されるだろうと高をくくっていた向きも多かった。そうあって日本が除外対象でないことに衝撃が走った。EUも一時的に適用が猶予されながら、交渉を続けていたが、結局EUも除外されなかった。

 

除外されたのは米国の要求する対米輸出の数量規制を飲んだ国々だった。

 

これこそトランプ流交渉術だ。

 

韓国はトランプ流交渉術の餌食になった

 

このトランプ大統領の交渉術の術中にはまって、餌食になったのが韓国だ。韓国は米国と米韓FTA見直しの交渉中であったが、鉄鋼の追加関税からの除外をこの交渉と絡めて取引されたのだ。

 

具体的には、鉄鋼の追加関税からの除外と引き換えに、自動車分野で韓国への米国車の輸入で大幅譲歩を強いられた。さらに鉄鋼の対米輸出量をこれまでの7割にするという数量制限を飲まされたのだ。

 

当初、韓国が除外されて、日本が除外されていないことに日本国内では首を傾げ、憤慨する声も聞かれた。日本に対抗心を燃やす韓国国内は、一時は溜飲を下げたようだ。

 

しかし、その代償は思いのほか大きかった。

 

蓋を開けてみると、その数量制限は鉄鋼の54品目ごとに過去3年実績の7割が上限だ。しかも四半期ごとにチェックする。まさに鉄鋼の対米輸出は「がんじがらめ」にされて悲惨な状況に追いやられているのだ。

 

韓国高官からは、「こんなことなら、追加関税をかけられていた方がましだった」との恨み節も聞こえて来る。

 

トランプ政権と安易な妥協をすると、嵩にかかって攻めてこられ、代償は大きい。

 

そしてトランプ政権の狙いは、対米輸出の数量規制という「管理貿易」であることも露呈した。 日本も欧州も、「韓国を他山の石とすべし」と、肝に銘じることとなったのだ。

 

以上、光文社新書『暴走トランプと独裁の習近平に、どう立ち向かうか?』(細川昌彦著)より一部抜粋、再構成してお届けしました。

関連記事

この記事の書籍

暴走トランプと独裁の習近平に、どう立ち向かうか?

暴走トランプと独裁の習近平に、どう立ち向かうか?

細川昌彦(ほそかわまさひこ)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を

この記事の書籍

暴走トランプと独裁の習近平に、どう立ち向かうか?

暴走トランプと独裁の習近平に、どう立ち向かうか?

細川昌彦(ほそかわまさひこ)