akane
2019/06/20
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2019/06/20
乾癬は、単なる皮膚の病気ではなく、全身の慢性炎症性疾患である。
慢性の炎症によりインスリン抵抗性を起こすと考える人もいるが、私はインスリン抵抗性の方が先に起こっているのではないかと考えている。
「乾癬マーチ」と言われるほど、乾癬は、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、高血圧、糖尿病など、様々な病気を併発するリスクを増加させる。
乾癬の患者では、アテローム性動脈硬化症は2・18倍、虚血性心疾患は1・78倍、脳血管疾患は1・7倍起こりやすい。
(Boehncke,WH. et al. The ‘psoriatic march’: a concept of how severe psoriasis may drive cardiovascular comorbidity. Exp Dermatol. 2011,Apr;20(4):303-7.)
メタボリックシンドロームの有病率は、乾癬において約3倍である。乾癬における肥満や糖尿病は多い。
(Zindanci,I. et al. Prevalence of Metabolic Syndrome in Patients with Psoriasis. ScientificWorldJournal. 2012,2012:312463.)
イギリスの成人の乾癬患者8124人と、乾癬のない7万6599人を、約4年間追跡してみた研究によると、重症の乾癬では、乾癬のない人と比べて糖尿病のリスクが64%高かった。
また、重症の乾癬患者では、体表面積に占める病変の割合が10%増えるごとに、糖尿病リスクは20%上昇していた。
乾癬の病変が体表面積の20%の患者では、糖尿病のリスクが84%高く、30%の患者では104%高くなった。
(Wan,MT. et al. Psoriasis and the risk of diabetes: A prospective population-based cohort study. J Am Acad Dermatol. 2018,Feb;78(2):315-322.e1.)
乾癬の人はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の有病率も高い(PCOSも糖質過剰が原因で起こる)。乾癬がない人と比較すると、PCOSを併発する可能性は6倍以上も高いのである。
(Moro,F. et al. Psoriatic patients have an increased risk of polycystic ovary syndrome: results of a cross-sectional analysis. Fertil Steril. 2013,Mar 1;99(3):936-42.)
成長ホルモンの治療中に乾癬を発症したという報告も多く、IGF‐1(インスリン様成長因子1)の増殖促進作用により、皮膚の組織の過剰な増殖が乾癬を引き起こしていると考えられる。
(Pirgon,O. et al. Psoriasis following growth hormone therapy in a child. Ann Pharmacother. 2007,Jan;41(1):157-60.)
ニキビは非常に一般的な皮膚疾患である。思春期に多くの人が経験する。
そして単純に皮膚の病気だという認識が広まっているが、一方でインスリン抵抗性との関連が指摘されている。
(Napolitano,M. et al. Insulin Resistance and Skin Diseases. The Scientific World Journal,Volume 2015. 2015, Article ID 479354, 11.)
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の患者では、70%の症例においてニキビを示し、中程度から重度のニキビを有する女性の19~37%が、このPCOSの基準を満たしている。
インスリンは、アンドロゲン(男性ホルモン)の合成を刺激し、高度の皮脂の生成をもたらし、ニキビの重症度との相関が認められている。
男性でも、思春期後のニキビ患者では、インスリン抵抗性発生率が有意に増加していた。
(Nagpal,M. et al. Insulin Resistance and Metabolic Syndrome in Young Men With Acne. JAMA Dermatol. 2016,Apr;152(4):399-404.)
ニキビ患者では、しばしば、血糖値、インスリン値やインスリン抵抗性の増加を示す。糖質制限食は、皮脂腺の大きさを減少させ、炎症を減少させる。
(Kwon,HH. et al. Clinical and histological effect of a low glycaemic load diet in treatment of acne vulgaris in Korean patients: a randomized, controlled trial. Acta Derm Venereol. 2012,May;92(3):241-6.)
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以上、『「糖質過剰」症候群――あらゆる病に共通する原因』(清水泰行著、光文社新書刊)から抜粋・引用して構成しました。
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