『美しすぎる教育評論家の依頼 よろず請負業 さくら屋』著者新刊エッセイ 叶紙器
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gimahiromi

2019/06/27

執拗すぎる担当編集者の依頼

短編「美しすぎる教育評論家の依頼」を発表した約半年後、二〇一六年六月、Mさんからメールをいただきました。

「それぞれの話に謎解きがあり、一話一話で完結しているけれど、全体をとおしてさらに一つの大きな謎が解ける、というような大枠のストーリーも組み立てられるとベストです」

 

短編の第二話を書き、その後、連作短編集として世に出しましょうという依頼です。正直、困りました。第一話を書いた時点で続編など想定しておらず、ましてや連作なんて不可能だと思いました。どうしたものか、と同じ福ミス作家である、C念M希人さんの『優しいS神の飼い方』を参考にさせてもらいました。(パクってませんからね)

 

プロットでは三話構成で、元々温めていたトリックを使った、第三話「うさん臭すぎる祈祷師の依頼」が先に出来ました。そして、漠然と全体の構想が浮かんだところで、監視カメラの話が要(い)る、となったのです。

 

呆然(ぼうぜん)としました。要る、といって書けるものではありませんから。どうしよう、と悩んだ末に出した結論は「やるしかない」でした。何もない白紙の状態から、ひたすら話を捻(ひね)り出す作業に没頭しました。結果、出ました。第二話「がめつすぎる警備会社の依頼」が。必要に駆られ一から話を組み立てるなんて、やれば出来るものですね。

 

でも最後まで書き上げられたのは、懇切丁寧な指摘をひたすら続けてくれた、担当編集者さんのお陰です。それはもう、執拗と言えるほどのレベルで、です。考えてみると、いつもそうです。長編第一作を書いた時も、知人から「ミステリを書け」と執拗すぎるほどの後押しを受け、無理と思われた執筆を成し遂げました。そして今回も、“執拗すぎる担当編集者の依頼”を受け、無事の執筆が成ったのです。作品の出来やいかに、それは読者の皆さんに判断してもらうしかありませんが、書き終えた今、充実感だけはあります。

 


『美しすぎる教育評論家の依頼 よろず請負業 さくら屋』
叶紙器/著

 

多村安佐郎は趦よろず請負業 さくら屋趦を営む20代。有名教育評論家の認知症を抱える母の世話、防犯カメラに映る子供の万引き犯の保護、不気味な大声が響き渡る病院の祈祷……舞い込む依頼はいつもなぜか謎に満ちていて?!福ミス受賞作家による連作ミステリー。

 

PROFILE
かのう・しき 1965年大阪市生まれ。2009年『伽羅の橋』で第2回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。ほかの著書に『回廊の鬼』がある。

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