akane
2018/04/05
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2018/04/05
女性自身が管理職に就くことを拒んでいるという実態は、国の調査からはなかなか浮かび上がってはこない。ただ、民間調査機関の調査結果やコンサルタント業務の一環で行ったアンケート調査などからは、そうした女性たちの動向を推察することが可能である。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングが2015年に公表した「女性管理職の育成・登用に関する調査」(正社員の男女3000人対象)によると、管理職に就いていない社員のうち、管理職(課長クラス以上)を目指している割合は、男性43・0%に対し、女性は12・9%と低い水準だった。
管理職を目指さない理由(複数回答)として、女性は管理職になると、「ストレスが増えるため」が47・2%で最も多く、次いで「責任が増えるため」(37・4%)、「自分には管理職が向いていないため」(34・1%)、「家庭(プライベート)との両立が難しいため」(27・1%)と続いた(図表2)。子どもの有無別で女性が管理職を目指さない理由として「家庭(プライベート)との両立が難しいため」と回答した割合を見ると、子どものいる女性では34・9%と、子どものいない女性(24・1%)に比べて約1・5倍に上り(図表3)、管理職への昇進意欲にブレーキをかける家庭との両立では、子育てが大きな比重を占めていることがわかった。
労働政策研究・研修機構の「男女正社員のキャリアと両立支援に関する調査」(2013年)では、管理職に就いている女性が未婚か既婚か、また子どもの有無についても調べており、未婚者が42・3%(300人以上企業)と33・5%(100~299人企業)で最多で、次に結婚していて子どもがいない女性が15・3%(300人以上企業)と18・7%(100~299人企業)で続き、女性管理職の5~6割が未婚者と子どものいない既婚者で占められていることが明らかになっている。
また、日本生産性本部雇用システム研究センターが2014年に、女性の管理職昇任試験の受験率が数パーセントと低水準で推移していることを問題視した、ある首都圏の自治体の委託を受け、非管理職の女性職員を対象に実施したアンケート調査によると、昇任試験を受けない理由について、管理職は「難しい問題や複雑な政策課題を抱え、仕事が大変そうだから」が6割強を占めて最も多かった。次いで、「部下の職員指導や人事・労務管理を行うのが面倒」「住民やマスコミ対応など困難な仕事を任されたくない」がそれぞれ4割弱と多かった。同センターが同じ年に行った関東のある信用金庫の非管理職の全女性職員への意識調査でも、「管理職になりたくない」という回答が7割弱に上った。このケースも、管理職に就くには職務経験として必須である営業職に就きたがらない女性が多いという、問題の解決策を検討する判断材料とするため、信金から調査委託を受けたものだ。
地方公務員も信金職員も限られた地域での事業展開のため、家庭との両立という課題を抱えた女性が比較的働きやすい職場環境といえるだろう。それにもかかわらず、女性自身が管理職に就きたくないと考えているという事実は、いかに幅広い業界にそうした傾向が広がっているかということを示唆しているのではないだろうか。
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以上、奥田祥子氏の新刊『「女性活躍」に翻弄される人びと』からを元に作成いたしました。管理職への昇進を拒む葛藤、やりがいと低賃金の狭間に生きる姿、「勝ち組」の敗北感、そして男をも襲うプレッシャー……「女性活躍」時代のリアルを描きます。
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