京都の割烹の料金が10年で2倍になった理由
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作家の柏井壽さんは、2003年に『京都の値段』という書籍を発表しています。2015年に改訂版を出すにあたって価格を調べたところ、物価の上昇以上に「京都の値段」が軒並み上がっていたことに驚いたそうです。4月18日発売の新書『グルメぎらい』より、バブル化する京都の割烹についての考察をお届けしましょう。

 

夜のコースは20000円超え

 

京都の割烹屋さんの値段はどう変遷したか。
当時は今ほどの過熱人気ではありませんでしたが、とある料理雑誌で一年半にわたって、密着取材し、巻頭グラビアで連載したのは、銀閣寺の参道に暖簾を上げる『草喰なかひがし』という店です。その連載が火を点けたのでしょう。今では京都でも一、二を争う人気割烹になりました。

 

15年前、このお店のお昼は4000円でした。それが今は6000円です。もちろんこれは安いほうのコースです。高いほうは8000円です。
これを、わずか2000円の値上げ、と見るか、50パーセントアップと見るか、意見の分かれるところでしょうね。

 

もう一軒。『草喰なかひがし』と負けず劣らずの人気を誇り、予約の取り辛さは京都一とも言われる『祇園さゝ木』の場合。

 

15年前に紹介した際の夕食は13000円でした。それが今は24000円以上となっています。こちらは100パーセント近い値上げ率になります。それでも満席が続くのですから、それだけの価値を認められているに違いありません。

 

何しろ最近では、若手の料理人さんが新しく開く割烹店でさえ、昼は10000円を下ることは少ないようですし、夜ともなれば20000円は当たり前のようになりつつあります。(中略)

 

では、なぜ割烹店だけが突出して値上げをしているのでしょう。

 

よく見かける〈価格改定のお知らせ〉の文字

 

すべて価格は需要と供給の関係で決まります。家を建てたい人がたくさん居れば住宅地の価格が騰がり、街が寂れれば商業地価格は下がります。
それと同じく、食の値段も需要が高ければ騰がり、需要が低ければ値上げなどとんでもない。据え置くか、ときには値下げしなければなりません。
京都における〈食の値段〉を10年以上も前のものと比較してきて、ほかの食はさほどでもないのに、割烹料理店の価格が、急激な高騰を続けているのです。なぜなのでしょう。

 

最近の割烹料理店は、多くがホームページを持っていて、そのトップページで〈価格改定のお知らせ〉なる項目を見かけることがあります。

 

――今般、急激な食材価格の高騰、人件費の上昇により、やむなく料金を改定させていただくことになりました。食材、人材とも質を落とすことなく店を維持する為の措置として、ご理解賜りますようお願いします――

 

とある花街の割烹店のホームページにそう記してあり、12000円の夕食が15000円に改定されたと書いてありました。
最近よく聞く話ですね。

 

中国をはじめとして、日本食ブームが世界に広がっていて、良質の食材は輸出に流れてしまい、国内での価格が急上昇している。今のままの価格では到底やっていけない。多くの料理人がそう口を揃えます。

 

割烹の値段が明らかに上がっている

 

しかしながら、茶懐石の名店で知られる『辻留』の花見弁当などは十五年前と、まったく同じ価格です。それ以外にもいくつもの和食店では、据え置きか、もしくはわずかな値上げに留まっています。

ということは、割烹料理店が使う食材だけが高騰しているのでしょうか。答えは否だろうと思います。
冒頭で述べた土地価格と同じ理屈なのだろうと思います。ニーズがあるから高騰しているのは間違いないでしょう。

 

今の京都では〈割烹バブル〉と呼びたくなるような状態が続いています。京都の和食店の中で、割烹店の人気は突出していますから、ひとり勝ちは当分続くことでしょう。となれば、少しくらい値上げをしてもお客さんは減るどころか、増えるいっぽうです。稼げるときに稼ごうと値上げするのもよく分かります。

 

<プロフィール>
柏井壽(かしわいひさし)
1952年京都府生まれ。1976年、大阪歯科大学卒業後、京都市北区に歯科医院を開業。生粋の京都人であり、かつ食通でもあることから京都案内本を多数執筆。テレビ番組や雑誌の京都特集でも監修役を務める。『日本百名宿』(光文社知恵の森文庫)、『京都人のいつものお昼』(淡交社)、『できる人の京都術』(朝日新書)、『京都の定番』(幻冬舎新書)、『二十四節気の京都』(PHP研究所)など著書多数。「鴨川食堂」シリーズ(小学館)や「名探偵・星井裕の事件簿」シリーズ(柏木圭一郎名義)など、小説家としても活動する。

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