コロナ禍を軽視したトランプ元大統領!彼だからこそできた対策とは?
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BW_machida

2021/02/26

 

2020年、新型コロナウィルスの流行で世界はパンデミックに包まれた。渡航制限にロックダウン、それによる経済の低迷、失業者の増加や医療崩壊といった未曽有の事態に、各国中枢の政治手腕が今までになく問われることとなった。未だ終息の見えないコロナ禍。この危機を乗り越えるためのリーダーとは、市民社会とはどのようなものなのか? 『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』(光文社新書)では、海外在住の7人のジャーナリストたちがコロナ禍での各国対応を読み解く。

 

23か国中最下位!日本のコロナ対策評価

 

2020年5月、シンガポールの調査会社が23の国と地域に対してそれぞれの指導者のコロナ対策への満足度を聞いた結果を発表した。その調査によると、日本国民の満足度は最下位。当時の首相・安倍晋三氏に対する評価が政治、経済、地域社会、メディアの各分野において最下位で、総合指数も最低だった。
緊急事態宣言に伴う休校、休業、外出自粛は日本人にとって大きなストレスであり、先行きの見えなさから来る不安はそのまま政府への不満に還元され、このような結果になったのかもしれない。しかし、同様のロックダウンを敷いていた他国に比べて日本人の自国コロナ対策に対する評価は突出して低い。なぜなのか。
本書の著者の一人で、企画発起人であるベルギー在住のジャーナリスト・栗田路子さんは、他国の様子をテレビを通して知る時、次のように感じたと話す。

 

“未曽有の危機に、それぞれの国のリーダーたちが市民に向ける姿勢や言葉に圧倒された。それは良い意味でも悪い意味でも、日本では感じることのできないほどの熱量を持っていた。”

 

誰かに用意してもらった原稿話読み上げるだけ、標語が書かれたフリップを使ってもっともらしく説明するだけ、そうした日本の政治家とは、彼らは明らかに違っていたのだ。
本書では、イギリス、フランス、ドイツ、ベルギーなど各国に日本人ジャーナリストとして、かつその地の一市民として長く住む人の目を通して、コロナ禍の国を率いたリーダーの物語が記されている。その記録は、日本のメディアを通してだけでは知りえない実情を伝える。

 

 

アメリカ在住ジャーナリストが語る「トランプだからできたこと」

 

例えば、元アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏についてだ。彼の過激な言動からは、コロナ禍に適切に対応したリーダー像は読み取れない。医療物資の調達にも真剣に取り組まず、州の判断によって行われるロックダウンを非難し、マスクの着用を拒否し続け、大規模な政治集会を各所で開き、「コロナは中国のせいだ」と責任逃れの言葉や、「(ウィルスは)消える。ある日、奇跡のように、消えてなくなる。」などコロナ対策を軽視するようなことも言っている。
はたから見ればいいとこなしのトランプ氏だが、こんなトランプ氏だからこそ実現できたこともあると、アメリカ在住のジャーナリスト・片瀬ケイさんは指摘する。

 

“トランプ政権はアメリカの財政力と科学力を結集し、通常なら何年もかかるワクチン開発で、「1年以内の実用化」という奇跡に近い目標を掲げた。……(中略)
特にワクチン開発では、FDA(アメリカ食品医薬品局)承認直後に確実に大量のワクチンを入手するために、巨額の公的資金をつぎ込んで、有望な、しかし承認される保証はないワクチン候補薬の生産を開始させた。承認されなければ、作ったワクチンも、それに使った税金も無駄になる。普通の政治家なら考えないギャンブルのような計画を決行できたのは、やはり、「既成政治のアウトサイダー」であるトランプ大統領だったからだろう。”

 

コロナ社会を導くリーダー像とは?

 

ワクチン実用化を推し進めることに成功したトランプ氏だが、結局は大統領選でバイデン氏に敗れその座から降りることになった。「強いアメリカ経済」や「パワフルな大統領」としての再選を優先し、自らの支持者層をあおる発言を連発したことは団結よりも分断を招くこととなった。

 

“コロナ下で国を率いたリーダーにはいくつかの共通項があるように思う。まずはそれぞれが市民に向かって頻繁に、直接発信し続けたという点は確かな事実だ。
市民との連携を強めていったリーダーには「共感力」、つまり立場の異なる市民の不安や辛さを察し、思いやることができる能力があっただろう。さらにもう一つは「伝える力」、すなわち言葉やあらゆる術を尽くして伝え、説得し、行動させる力もあったのではないだろうか。広く市民全体に対し、細やかな共感力とコミュニケーション力を持てば、それは連帯に繋がるが、ある特定のグループに向かってだけその能力を発揮すれば、見事なまでの分断を加速させてしまう。”

 

本書に登場するリーダーたちの物語を概観して、栗田さんはこのように言う。

 

国民との直接対話の機会を設けたドイツ首相、子供向け番組に出演しコロナ対策をわかりやすく説明したベルギー首相、科学に基づいた冷静な対策でパニックから守ったスウェーデン首相、国民目線に立ち市民に語りかけ続けたニュージーランド首相……。
コロナ禍で優れたリーダーシップを発揮した者、そして反対に馬脚を現してしまった者たちの執政をつぶさに観察したこの記録は、いましばらく混乱が続く我々の社会に必要なリーダー像を教えている。

 

文/藤沢緑彩

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コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿

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栗田路子・プラド夏樹・田口理穂・冨久岡ナヲ・片瀬ケイ・クローディアー真理・田中ティナ

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