『人生脚本』著者新刊エッセイ 伴一彦
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ryomiyagi

2021/03/15

似て非なるもの

 

脚本家としてデビューして今年で四十年。え? 四十年!? 自分で書いてビックリです。何本のドラマを書いたんだろう。連続ドラマを三十シリーズ以上、単発は……面倒臭いから数えませんが。

 

小説は数えられます。自分の連続ドラマのノベライズ、電話の会話だけの短編小説集、小学生向けの児童書、昨年九月に上梓した『追憶映画館 テアトル茜橋の奇跡』(PHP文芸文庫)。

 

そして、この『人生脚本』。
書き下ろしは実に二十五年ぶりです。
書き慣れた脚本と小説の違いに正直苦労しました。
映像作品になって初めて完結する脚本と、それ自体が完成品の小説。脚本で重要視されるのはセリフですが、小説は地の文。その地の文もト書きとは似て非なるもの。同じ食材(題材)でも料理方法が違います。

 

何より大変だったのは枚数。一時間ドラマ八本分くらいの分量を書かなければならなかったことです。
また、脚本はプロデューサーやディレクターとの共同作業、小説は自分一人の孤独な作業……と思っていたのですが、編集者(鈴木一人さん)とキャッチボールしながら楽しく書けました。

 

『人生脚本』は途中まではイヤミスかと思う方がいるかもしれませんが、安心して下さい。でも、シリアスではあります。大学で同じゼミ生だった男女三人の物語。二人は結婚し、もう一人の男は親友として傍にいます。二人の一人息子が事故死したことから結婚生活に軋みが生じ、やがて悲劇的な出来事が起きます。

 

シェイクスピアの戯曲の数々(特に『マクベス』)、1950年公開の映画『旅愁』などに触発されて書きました。
人は誰かが書いた脚本通りに生きるしかないのだろうか?
是非お読み下さい。

 

『人生脚本』
伴一彦/著

 

【あらすじ】
嵐の夜、夫はなぜ列車事故に巻き込まれたのだろうか。自分は、彼に生きていて欲しかったのだろうか。事故をきっかけに明らかになっていく夫の足跡と、見え隠れする何者かの悪意。ベテラン人気脚本家が初めて挑んだ、謎が謎を呼ぶサスペンス長編。

 

【PROFILE】
ばん・かずひこ
1954年、福岡県生まれ。1981年ごろから脚本家としての活動を開始。テレビドラマを中心に多彩な作品を手掛ける。『うちの子にかぎって…』『パパはニュースキャスター』など、代表作多数。

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