現代を生き抜くための根幹の力とは?

三砂慶明 「読書室」主宰

『自分の意見で生きていこう』ダイヤモンド社
ちきりん/著

 

ついに、2011年にはじまった、ちきりんさんの「現代を生き抜くための根幹の力」シリーズ四部作が本書『自分の意見で生きていこう』にて、完結しました。
ちきりんさんの著書の中でも、もっとも大切な本だと思うので、はじめて読む人のために、なぜ、ちきりんさんの本が素晴らしいのかについて、自分なりの意見を述べてみたいと思います。

 

ちきりんさんの「現代を生き抜くための根幹の力」の主題は、根本的には一つだと思っています。
それは、自分なりの意見で、自分の人生を選択して生きられるようになるには、どうしたら良いのか? です。
私たちの人生の重要な問題には、「正解」がありません。だから、どう歩けば、最短経路を歩けるのかの地図も存在しません。

 

でも、世の中にあふれる情報を見渡していくと、まるでどこかに「正解」が存在しているかのようです。
誰よりも早く「正解」にたどりつくために、人は競って大学に行ったし、社会人になってからは、ビジネス書を読み漁って、「最先端の理論」に飛びついて、誰かの一歩先を行こうと必死になりました。一つの理論がダメになれば、その次の理論に飛び移り、それもダメになれば、その次への繰り返しです。
就職したり、結婚したり、住む場所を決めたり、病気になったときも、つい、誰か偉い人に聞けばリスクゼロの正しい答えを教えてくれるのではないかと、どこかにある「正解」を探したくなります。

 

しかし、そもそも問題には、「正解のある問題」と「正解のない問題」しかないのだと著者はいいます。そして、「正解のある問題」とは、2+2=4といった、答えがたった一つしかない問題のことであり、人生で私たちが直面する、多くの問題は「正解のない問題」だと著者は説きます。

 

どの会社に就職するのが正解なのか。誰と結婚したら幸せになれるのか。
考えるまでもなく、「正解」は存在しません。強いていえば、それを「正解」にできる可能性があるのは、それぞれの現実を生きる私たち自身だけです。
だから、大切なのは、まず私たちが直面している問題が、「正解のある問題」なのか、「正解のない問題」なのかを見分ける技術です。
そして、その問題が「正解のない問題」ならば、そこから先にあるのは、「自分の意見」しかありません。では、「自分の意見」で、自分の人生を生きていくにはどうしたらいいのか、について考察し、実践するために書かれたのが本書です。

 

もちろん、自分の人生をすべて自分で選択して生きるのは、リスクがあります。
誰のせいにもできません。
でも、人生の分岐点に立った時、両親がすすめるから、政府がそういっているから、有名人がそういっているから、とリスクを避けるために重要な意思決定を他者の意見に委ねてしまうと、ずっと「誰かのせい」にする人生が待っています。そして、その人生を生きるのは、誰かではなく、他でもない私です。

 

私はずっと、自分で食べたいものを自分で選べず、モヤモヤしていました。
学生のころ、本当は入りたかった部活に、人の目が気になって入れませんでした。
なぜ今も、そのことが忘れられなかったのか、私はちきりんさんの本を読んで気づかされました。私は、自分で自分の人生を決めてこれなかったのです。
誤解のないように付け加えると、ちきりんさんが勧めるのは、「リスクをとった特殊な生き方」ではありません。

 

「そうではなく、どんな生き方であれ自信をもって、『これが自分の人生だ!』と断言できることが重要なのです。たとえその生き方が世間の多数派と違っていても、誰からも賞賛されなくても、もしくは、なんだか時代遅れに思えてしまっても、自分自身が『これこそ自分で選んだ生き方なんだ』と確信できていればそれでいいのです。
華々しい人生も、華々しいことなんてなにひとつない人生も、自信と誇りをもって進める限り、すばらしい人生です。」

 

はじめてメガネをかけた日、私は世界が明るくはっきり見えました。
私にとって、ちきりんさんの「現代を生き抜くための根幹の力」シリーズ四部作は、まるではじめてかけたときのメガネのように、世界を明るくはっきり見せてくれました。
誰かの意見に引きずられることなく、自分自身で考え、自分自身の人生を選択するのには勇気が必要です。でも、その先には私だけの人生が待っています。

 

人生に迷ったり、壁にぶつかったときは、本書を読んでください。
この本を読み終わると、目の前に真っ白な地図がひらけます。繰り返し何度も読み直したい一冊です。

 

『自分の意見で生きていこう』ダイヤモンド社
ちきりん/著

この記事を書いた人

三砂慶明

-misago-yoshiaki-

「読書室」主宰

1982年、兵庫県生まれ。本と人とをつなぐ「読書室」主宰。 大学卒業後、株式会社工作社などを経てカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社入社。梅田 蔦屋書店の立ち上げから参加。これまでの主な仕事に同書店での選書企画「読書の学校」やNHK文化センター京都教室の読書講座などがある。著書に読書エッセイ『千年の読書 人生を変える本との出会い』(誠文堂新光社)がある。写真:濱崎崇

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