「3つのコツ」だけで脱・カメラ初心者 『カメラはじめます!』

吉村博光 HONZレビュアー

『カメラはじめます!』サンクチュアリ出版
こいしゆうか/著 鈴木知子/監修

 

 

50歳手前なのに子は幼い。小学生と幼稚園児だ。蓄えがあるわけでもないのに、もうすぐ定年なのである。将来を思うと暗澹とした気持ちになるので、将来のことは考えないようにしている。最近は、過去を反省することさえなくなった。

 

そんな私にとって、最大の関心事は「今」である。
「実存は本質に先立つ」これでいいのだ。

 

写真は、今を楽しむためのツールである。美しい風景を切り取る。子らと戯れに撮った1枚を眺めて笑う。しかし、である。我が家には、ミラーレス一眼があるのに撮り方がわからず放置されている。スマホ頼みの現状である。数年前から、この状況を改善したいと思っていた。

 

本書『カメラはじめます!』は、そんな私の救世主になった一冊である。

 

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これから季節は、夏から秋の行楽シーズンに向かう。私は老体だが、子はかわいい盛りである(しつこい)。今年こそはカメラをマスターしてスバラシイ写真を映して、「パパすごい!」といわせたいと思い、本屋さんを物色していた。

 

そんな折、ひときわ楽しげな表紙のこの本が、目に飛び込んできた。オーラが漂っている。ただ、ふとオビを見ると「マンガでわかるデジタル一眼カメラの教科書」とあった。

 

おっと。

 

正直、私は少し腰が引けた。だって、だって・・・一眼を買ったときにも、わかりやすそうなマニュアル本を私は買ったはずなのだ。でも、駄目だったのである。「教科書(マニュアル)=つまらない」という図式があるではないか。面白くなければ、駄目な私である。

 

本を開いてめくってみた。撮影例(before/after)も豊富でわかりやすそうだ。しかし、前の失敗に懲りて、なかなかレジまで進めない。「本代はケチるな」が、我が家の家訓であるにもかかわらず。

 

<before> 提供:サンクチュアリ出版
<after> 提供:サンクチュアリ出版

 

気がつくと私は、著者「こいしゆうか」の名前をスマホで検索していた。

 

うほっ。この人、写真家じゃないじゃん!「職業:イラストレーター、キャンプコーディネイター、プロデュース、ライター、漫画家、レポライター」とある。また “「日本酒」の本が出ました”と書かれている。「マツコの知らない世界」への出演履歴も。

 

私の小さな胸は、一気に安堵感で満たされた。この多趣味でゆるくて楽しげなオーラに促されるように、私は『カメラはじめます!』を冒頭からゆっくりと読みはじめた。すると、読み物としてマンガとして面白いということがわかったのである。

 

まず冒頭で「カメラを楽しむのに難しいことは一切必要なく、必要なのはある3つのことを覚えるだけ」と断言され、私は、どれだけ安心したことだろう。カメラ初心者の著者が写真家に手ほどきを受け、「ボケ」「明るさ」「色」の3つのコツを覚えるストーリーである。

 

私が使ってみたとき、一眼カメラの「オートモード」はなんか微妙だった。本書を読めば、そこから卒業して自分の理想に近い写真を撮れるようになるのだ。子供や花などの主役が引き立つ憧れのボケ写真も、テリが輝く美味しそうなお料理写真も、思いのままだ。

 

本書を読んで、一眼カメラを片手に町へ出よう!
嫌なこともいっぱいある人生だが、今が10倍楽しくなること、うけあいである。

 

 


『カメラはじめます!』サンクチュアリ出版
こいしゆうか/著 鈴木知子/監修

この記事を書いた人

吉村博光

-yoshimura-hiromitsu-

HONZレビュアー

出版取次トーハン就職後、海外事業部勤務。オンライン書店e-honの立ち上げに参加。その後、ほんをうえるプロジェクトの初期メンバーとなり、本屋さんの仕掛け販売や「AI書店員ミームさん」などの販促活動を企画した。一方でWeb書評やテレビ出演などで、多くの本を紹介してきた。50歳を機に退職し今は無職。2児の父で介護中。趣味は競馬と読書。そんな日常と地続きの本をご紹介していきたい。


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・HONZ http://honz.jp/search/author/

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