akane
2019/03/07
akane
2019/03/07
ぼくの私的なエピソードに入っていく前に、発達障害や自閉症といった言葉について、ここで一度確認しておこうと思う。もちろん、ぼくは発達障害の専門家でないので、記述の正確性について、あまり当てにしないで欲しい。あくまで障害を持つ子の親の立場で、専門外の人間が勉強して、生活実態も加味して書いているだけである。
認知件数の増大にともなって、これらの言葉を一般的な学校や会社で耳にする機会は増えたが、言葉が拡散すると、当然意味の拡散も起こる。使い勝手のいい言葉は、色々な場所で使われ、当初の意味とは違う意味をも持ってしまうことがよくある。それは、ぼくが専門とするインターネットの世界でもそうだ。「ホームページ」なんて、いい例である。元の意味と、いまみんなが使っている意味はだいぶ違う。
結構な知的職業に就き、自ら知識人を任じている人との対談で、「自閉症ですか。引きこもりなんですね」と言われたり、「自閉症とは、生きる力の弱い子のことである」と解説している記事があったりして、唖然としたことがあるが、自分に関係のない事柄って、そのくらいにしか理解していないのがふつうだよなとも思う。実際には、やたらと元気で明るい自閉症の子も、無闇にガタイが良くて運動好きの自閉症の子もいるのだが。
日本の病院で診察を受けると、米国精神医学会の診断基準(DSM)をもとに診断名がつけられることが多いので、発達障害や自閉症に関心を持ったら、DSMの内容を知っておくといいと思う。
しかし、これも結構めんどうくさいのだ。DSMは医師向けの診断マニュアルだが、マニュアルである以上、定期的に見直しが入る。現在の最新版はDSM-5(2013年)で、これに従って診断名などがつけられるのがよいと思うが、日本の病院ではいまだ1つ前のDSM-Ⅳ-TR(2000年)に依っていることも多く、やや言葉が混乱しているように感じる。医師だって、常に知識をアップデートし続けている人ばかりではないし、新しい診断基準が気に入らず、敢えて古い診断基準を使い続けている医師もいる。
まずDSM-Ⅳで、特に日本での症例の多そうな障害カテゴリをいくつかあげてみよう。ぼくは、学習障害(LD)と注意欠陥および破壊的行動障害(ひどい言い方だが、これは古い診断基準で、DSM-5では注意欠陥多動性障害〈ADHD〉と改められた)には詳しくないので、精神遅滞と広汎性発達障害について書く。
・精神遅滞
・学習障害
・広汎性発達障害
・注意欠陥および破壊的行動障害
精神遅滞は、今でいう知的障害である。法で定められているわけではないが、知能検査(これにも、言語性知能検査と動作性知能検査がある)で70以下になると、知的障害があるとされ、障害者手帳などが配布されることが多い。もちろん、人の知能にはばらつきがあるが、知能指数は70~130の間に95%の人が収まる設計になっている。知的障害を持っている子は、この中に入らないことになる。もちろん、知能指数が高すぎて標準値から外れる子もいる。海外では、こちらのパターンの子を特別支援学級に入れるケースもある。たしかに、うまく大多数の子に溶け込めない、という意味では手助けが必要だろう。
ただし、では知能指数70の子がいきなり生活困難かというと、そんなこともない。
知能指数の計算は、
精神年齢÷実年齢×100
で行う。
たとえば、実年齢20歳で、知的な能力が14歳程度の人がいたとすると、
14÷20×100=70
で知能指数70となる(実際にはこの計算式はその人の実年齢が高くなるとおかしな値をはじくことになるので、いくら歳を取っても式では16~20歳あたりで止めて計算する)。
確かに20歳のときに、14歳くらいの知的能力しか備えていないのであれば、生活に支障が生じるだろう。たとえば、入学試験をクリアしての大学進学などは厳しいかもしれない。
しかし、一方で14歳くらいの能力があれば、相当生きて行けそうだ。自分が14歳のときのことを考えても、1人で飛行機に乗って旅行もしたし、プログラムを書いて報酬をもらったりもしていた。読書も観劇もできるし、人前で喋ることも可能である。一般的な知的障害者のイメージとは異なり、けっこう楽しくやれそうなのである。というか、療育施設などで彼らと話す機会は多かったが、中度知的障害くらいの子であれば、いかようにも楽しい会話が成立する。
こんな表を見たことはないだろうか。
IQ 51~70 軽度知的障害 教育可能
IQ 36~50 中度知的障害 訓練可能
IQ 21~35 重度知的障害
IQ ~20 最重度知的障害
知的障害の子の8割方は、軽度知的障害である。このくらいだと、健康状態が良好な子がほとんどだ。中度~重度となるにしたがって、体の機能などにも合併症が見られることが多くなる。
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