ryomiyagi
2020/07/03
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2020/07/03
■『里見八犬伝』(映画 1983年)
製作:東映/プロダクション:角川春樹事務所/監督:深作欣二/脚本:鎌田敏夫、深作欣二/原作:鎌田敏夫/出演:薬師丸ひろ子、真田広之、千葉真一、志穂美悦子 ほか
かつて時代劇には《伝奇冒険もの》というジャンルが存在していた。
『児雷也(じらいや)』『真田十勇士』『新諸国物語』……、妖術、忍術、秘術を駆使しながらヒーローが魔物と戦う冒険を繰り広げるこれらの作品は、特に当時の子供たちを熱狂させてきた。
だが、段々と時代劇がリアル志向になるにつれ、いつの間にか消え去ってしまっていた。
深作欣二監督は、その原点である滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』に基づいた鎌田敏夫の小説『新・里見八犬伝』を原作に、今度は伝奇ものを蘇らせようとしている。
館山城主に殺された武将の妻子(夏木マリ、目黒祐樹)が妖怪となって復活、魔力をもって城を乗っ取ってしまう。
城主の一人娘・静姫(薬師丸)はなんとか逃げ延びた。
そして、姫を守ることを宿命付けられた八人の《犬士》(真田、千葉ら)が続々と集結。妖怪たちから城を奪還すべく、戦いを挑む。
物語の機軸になるのは、当時の若手人気スターだった薬師丸と真田のラブストーリー。
2人の瑞々しい魅力が画面を彩り、そこに千葉や志穂美らJAC勢によるワイヤーを駆使したアクロバティックな大アクションがちりばめられるという、実に現代的なタッチの伝奇時代劇となっている。
そして深作は、考証や堅苦しいルールは一切取り外し、おどろおどろしくも煌びやかな衣装・メイク・セットによるケレン味の塊の世界を提示。
イマジネーションを縦横無尽に発揮し、「ファンタジーとしての時代劇」の魅力を存分に見せつけている。
とにかく、犬士たちを待ち受ける城に仕掛けられた罠の数々が楽しい。
地下水路の下から現れる大蛇、狭い地下道を転がりくる岩石、落ちてくる天井、崩れ落ちる巨大な柱……。
アミューズメントパークかと見まがうようなカラクリが城の随所にちりばめられていて、犬士たちに次々と襲いかかるのだ。
それはまるで、当時大ヒットしていたハリウッド映画『インディ・ジョーンズ』シリーズのような《冒険活劇》である。
単なる《ジャンルの復興》に留まらない、当時の子供たちをワクワクさせるようなロマンに満ち満ちている。
【ソフト】
KADOKAWA(ブルーレイディスク、DVD)
【配信】
アマゾンプライムビデオ、DMM.com、iTunes、U-NEXT、TSUTAYA、ビデオマーケット
(2020年5月現在)
※アマゾンプライムビデオ は、アマゾンプライムビデオ チャンネルの登録チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」「シネマコレクションby KADOKAWA」「+松竹」「d アニメストア for Prime Video」「JUNK FILM by TOEI」「TBS オンデマンド」を含んでいます。
●この記事は、6月11日に発売された『時代劇ベスト100+50』から引用・再編集したものです。
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