八丈島のくさやが味わえる「くさすぎて」泣ける店「くさやバー」
寺井広樹の東京いい店泣ける店withおとよ

最近、いつ涙を流しましたか?現代人に必要なことは、もっと「泣くこと」。涙を1粒流しただけでストレス解消効果が1週間続くと言われています。
「家にも職場にも泣く場所がない」「思いっきり泣きたい!」そんな声をよく耳にします。そこで、厳選した“泣ける店”を紹介。案内人は、これまで1万7000人を泣かせてきた“涙活”発案者である寺井広樹、そして、助手の“おとよ”こと、とよしま亜紀。
店主の感動的なエピソードで泣ける店、懐かし過ぎて泣ける店、辛すぎて泣ける店……、東京の泣ける店を、美女の涙と共にお届けします!様々な泣きをご堪能あれ。

 

八丈島のくさや屋直営「くさオシャレ」なバーへ

 

今回の涙活は、泣き美女の定島美穂子、助手のおとよと共に、池袋にある「くさやバー」へ。ココはその店名の通り、くさや専門のバーなんです。

 

くさやは伊豆諸島産の魚の干物のこと。くさや液という独特のニオイがする発酵液に魚を漬けた後、天日干しにしたものです。

 

なんて語ってしまいましたが、実は、これまで一度もくさやを食べたことがないんですよ。すると、「私もです」と美穂子とおとよも口を揃えて言い出しました。

 

ということは、3人とも、くさや初体験になるんですね。どんなくさ~いニオイがするのか、楽しみです。

 

さて、お店はビルの中にあります。エレベーターに乗ると、「臭いものに蓋 それを取りに来た。」という文言が目に飛び込んできました!

 

 

「『ゲテモノ』から『くさオシャレ・くさカッコいい』を目指します!!」って、この気合! エレベーターの上昇と共に、くやさとお店への期待も高まっていきます。

 

 

ドアを開けて入ってみると、店内はオシャレな雰囲気。

 

くさやというので昔ながらの昭和テイストな雰囲気を想像していたんですが、まさに「くさオシャレ」じゃないですか! 女子会やデートにも使えそうですね。

 

 

ココは、伊豆諸島の一つ八丈島にある「藍ヶ江水産」というくさや生産者直営のバー。そのため、店長の丸山聖矢さんいわく、八丈島産のくさやを味わうことができるそうです。

 

「くさやは島や生産者によって、味が変わってくるんですよ。くさや液はニオイの元で、八丈島のくさやは、他と比べると塩分濃度が高い10~13%のくさや液に漬け込んでいるのが特徴です」

 

さらに、「くさや液は味を左右するので、毎日くさや液をかくはんして、酵素を活性化。味わいが増すようにしています」と続けます。

 

日々、手塩にかけたくさや液に漬け込まれて作られたくさや……、とても楽しみになってきました!

 

 

左が店長の丸山さん。

 

人生初のくさやのニオイに涙したものの、口にした途端、笑顔に!

 

ところで、店内にはニオイが感じられませんが……。

 

「くさやは焼くと、ニオイが強くなるんです。そのため、専用の個室で焼いて食べてもらっています」と丸山さん。

 

カウンターの後を見ると、個室が。

 

専用の個室、通称「くさやVIPルーム」。腰かけることもできます。

 

丸山さんからおすすめされたのが、「熟成 生くさや」です。

 

「『熟成』とか『生』のキーワードに弱いんですよ、私。プレミア感が増すというか」とおとよ。それ、分かります!

 

この「生くさや」は、通常のくさやとどう違うんでしょうか。

 

「生くさやは、くさや液にムロアジを48時間漬け込んだ後に、干していないんです。だから、やわらかく仕上がります。通常のくさやは焼いた後に手で剥いて食べるんですが、生くさやは箸で身をほぐすことができます」

 

焼くのを待つまでの間、丸山さんがくさやのお通しを出そうとしてくれましたが、お通しはあとでいただくことにして、初めてのくさや体験はこの「生くさや」でいってみましょうよ!

 

“熟成 生くさや(税抜1280円)”
くさやVIPルームに入ると、ストップウォッチをテーブルの上へ。これで10分間、焼くのだそうです。

 

焼いているうちに強烈なニオイが発生。くさやVIPルームは密閉されているため、くさいニオイがどんどん籠っていきます。

 

すると、「あ、コンタクトがずれて……。ちょっとお手洗いに失礼します」とおとよが立ち上がりました。いや、あなた、今日はメガネでしょうが! 逃しませんよ。

 

この取材のメインです。このニオイを思う存分、嗅いでください。さあ、息を大きく深く吸って~!

 

「鼻が曲がりそうなニオイが……」とおとよがぼそっと呟きます。

 

「く、くさすぎる」と美女の目が少し潤ってきました。

 

独特のニオイに圧倒されながら、くさやが焼けるのを待つ3人。

 

 

10分経って焼けたところで、いよいよ生くさや初体験。あまりにもくさすぎてに箸を持つ手が少し躊躇してしまいます。

 

 

けど、思い切って生くさやを口に運ぶ、美穂子。涙でにじんだ目をぎゅっと閉じて、恐る恐る生くさやを口に運びます。

 

 

「あ、意外! 旨みがぎゅっと濃縮されていて、イケます! 酸味もあってクセになる味ですよ」と美穂子。

 

確かに口に入れると、それが味わいになって、くささが感じられなくなりますね。

 

すると、おとよが「コレ、お酒に合いますよ」と一言。

 

早速、八丈島の芋焼酎「情け嶋」 (税抜680円)を飲み始めます。焼酎はくさやとの相性抜群だそうで、お店では八丈島の焼酎をはじめ、大島、神津島、三宅島、青ヶ島と伊豆諸島の焼酎が味わえます。

 

 

「香ばしくてふくよかな味わいのある芋焼酎が、くさやの旨みを引き立ててくれますね」と美穂子。

 

「これは泣ける美味しさです」とニコニコ顔のおとよ。

 

アレンジ料理と酒に従来のくさやのイメージが一変!

 

お店では、くさやを使ったさまざまなメニューが用意されています。くさやアヒージョ、くさやピザ、くさやポテサラ……。いろんな食べ方ができるんですね。従来のくさやの見方が変わりそうです。

 

 

早速、くさやアヒージョを頼んでみました。

 

“くさやアヒージョ(税抜980円)”

 

「あまりニオイはしないですね。アンチョビの代わりに入れたくさやがいいアクセントになって、これもお酒が進みそうです」とうれしそうな美穂子。

 

 

そして、その他の島焼酎も飲む、美穂子とおとよ。二人とも酒好きで気が合うようです。

 

くさやには焼酎が合うと言われていますが、アレンジ料理にはワイン、テキーラ、シャンパンもよいそうです。ここにも、これまでのくさやのイメージを覆す、まさに「くさオシャレ・くさカッコいい」が表れていますね。

 

「何度でも来たいお店ですね」とおとよ。

 

いい気持ちになったところで、お会計を。お店には、ニオイ対策として消臭スプレーのファブリーズが置いてあります。この気遣いがうれしいです。

 

 

お店を出たら、「二次会はどこに行きましょう」と、おとよが張り切っています。

 

ああ、また今夜も朝まで、おとよのはしご酒に付き合わされるんでしょうか。なんだか涙が出てきました。

 

●お店のデータ
住所: 東京都豊島区南池袋2-16-1 長岡ビル4F(地下鉄有楽町線又は副都心線「池袋駅」から徒歩3分)
営業時間: 17:00~翌3:00(L.O.1:30)
定休日:年中無休
電話03-6912-6636
URL:http://kusaya-bar.jp/

東京いい店泣ける店

寺井広樹・とよしま亜紀

【寺井広樹】
泣いて心のデトックスを図る「涙活」を発案。『涙活公式ガイドブック』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)、『泣く技術』(PHP研究所)、絵本『ナミダロイド』(辰巳出版)など著書多数。
【とよしま亜紀】
雑誌・書籍編集兼ライター。現在、師匠である寺井氏の元で“涙のスペシャリスト”として修業中。著書に、あの世とこの世の情けに泣ける『宮城の怖い話』『新潟の怖い話』『静岡の怖い話』(TOブックス)。

イラスト:えんどうまめ
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