もし大船渡が出場していたら、ベスト8に進出できたか? ゴジキが振り返る2019年夏の甲子園(番外編)
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

大阪府代表・履正社高校の初優勝で幕を閉じた第101回の甲子園。様々な選手、チームが球場を沸かせてくれました。そんな今年の大会には、いったいどのような特色がみられたのでしょうか。
今回は特別に、高校野球の分析に定評があり、通称「お股クラスタ」の1人でもあるゴジキ氏(@godziki_55)が“出張寄稿”してくれました。
さらに番外編として、韓国で行われるU18W杯(ワールドカップ)を控える日本代表を独自に選びなおします!

 

 

◆もし、佐々木朗希擁する大船渡が出場していたら?

 

「世代No.1」の呼び声が高い佐々木投手を擁する大船渡は、惜しくも甲子園出場は逃したが、ノーシードから岩手県予選決勝まで進むという大躍進を見せた。

 

その要因としては、佐々木投手だけでなく複数人、試合を作れる投手がいたことがあると思う。

 

特に、シード校である久慈高校と当たった準々決勝では、佐々木を投げさせずに勝利を収めた。その試合では大和田投手が5回まで相手打線をパーフェクトに抑える快投を見せ、追いつかれた後にマウンドを託された和田投手も粘りの投球で接戦を制した。

 

私は、佐々木投手「以外にも」これだけ投げられる投手が2人もいることから、もし大船渡高校が甲子園に出場していたら面白かったのではと考えている。

 

星稜高校の甲子園本大会の勝ち方に類似しているのだが、チーム全体が「佐々木のために勝つ」という思いが非常に強く、それが結果に結びつき、大会中に成長している学校という印象もあったからなおさらだ。

 

残念ながら県予選決勝で敗退してしまったが、佐々木投手の話題性や人気、公立学校ということを考慮すると、もし出場していたらかなりの後押しがあっただろう。

 

実際に宮城県代表として出場した花巻東高校と同じ組み合わせだと仮定してシミュレーションしてみると、大船渡高校の特徴からしても、2回戦で当たる仙台育英戦が山場になるだろう。

 

初戦は間違いなく佐々木投手が先発し、初めての甲子園ということもあり「圧倒的な投球」をして鮮烈な甲子園デビューを見せる、というイメージが思い浮かぶものの、その裏側には張り切りすぎたが故に球数が多くなる結果も予想できる。

 

そして、大船渡高校の監督の起用傾向だと2回戦はおそらく佐々木投手は投げさせないのかなと思う。県予選であれだけ大事に投球させいたこともあり、仮に初戦突破したとしても2回戦は大和田投手や和田投手を起用していたと考えられる。

 

ただ、初戦から2回戦の間が中4日ということを佐々木投手が最初から考慮に入れて投げ、球数を90球以内に抑えながら勝てたとするならば、2回戦も登板は可能だと思う。そうなっていた場合を考えると、この山場を超えられたらベスト8進出くらいは夢じゃないのかもしれない。

 

そして、佐々木投手に対する見解をすると、年々投手が投げるボールのスピードが上がってきているとは言え、高校生ではとてもまともに打てないボールだなと見ている。

 

夏が始まるまで私は、「完成度の奥川、ポテンシャルの佐々木」と評価していたが、奥川投手同様に高校生とは思えないぐらい完成度も非常に高く予選での失点も29回を投げて2失点しかしていないところも素晴らしく、ポテンシャルも兼ね備えており、7~8割ぐらいの力感でも150km台を出してたように思えた。

 

私自身、これから始まるU18で日本代表として躍動するのはもちろんのこと、プロ入りしてからもさらにスケールが大きくな選手になり、トップクラスで活躍していくのが非常に楽しみである。

 

◆ゴジキが勝手に選ぶ理想のU-18

 

※実際のU-18侍ジャパンはコチラ

 

※U-18選出外の選手は★表記

 

【投手】

佐々木朗希(大船渡)
この世代のエースとして期待。特にオープニングラウンドのアメリカ戦や、スーパーラウンド以降の大事な試合を任せたい。

 

奥川恭伸(星稜)
誰もが知る好投手だが、甲子園決勝まで進んだことによる疲労が心配である。佐々木投手同様、強豪国との対戦での先発登板が予想されるため、かなりの期待がある。

 

西純矢(創志学園)
この世代の先発投手の軸の1人。要所で奪三振を取る力が非常に優れているので、大会終盤の大事な試合では後ろに回るのも面白そうだ。

 

宮城大弥(興南)
個人的には、この世代の左腕投手では一番と言っていいほどの実力があると感じる。特に、高い奪三振率を誇る投球のバランスはピカイチである。

 

池田陽佑(智辯和歌山)
夏に向けて球速を上げてきており、先発とリリーフどちらも高いパフォーマンスを発揮する投手である。球速や球種のバランスが非常に良い。

 

飯塚脩人(習志野)
基本的にリリーフの属性が高い投手だが、千葉県予選では準々決勝と準決勝で先発完投しており、先発としても高いレベルで投げられる。

 

林優樹(近江)
球速は140kmに満たないものの技巧派としての投球センスが素晴らしい。滋賀県大会では26回を投げて無失点という快投を披露した。

 

前佑囲斗(津田学園)
夏の甲子園大会でも注目されていた投手の1人である。最速152kmだが、球速以上に良いものを感じる。三振も奪える投手である。

 

【捕手】

★東妻純平(智辯和歌山)
大舞台での経験が豊富な打撃型捕手である。特に、ここぞという場面での勝負強い打撃は非常に良く、捕手として以上に打者として素晴らしいものがある。

 

★有馬諒(近江)
守備の上手さはもちろんだが、非常にリードが上手く、リーダーシップ性もある選手だと思える。林投手との信頼関係の築き方を見ると、投手の相性に合わせるのが非常に上手い選手なのではないかと見ている。

 

【内野手】

★内倉一冴(履正社)
履正社の主砲である井上選手の後ろを打っていた選手である。非常に高いミート力を持っており、一塁手として選んだ。

 

★黒川史陽(智辯和歌山)
大舞台の経験が豊富であり、1年生の時から非常に高い打撃力を誇っていた。また、二塁手、三塁手として守れる点も素晴らしい。

 

石川昂弥(東邦)
春のセンバツ優勝投手で、打撃面でもチームを引っ張る選手である。おそらくU-18では、中軸として期待されるだろう。当然ドラフト候補でもある。

 

坂下翔馬(智辯学園)
二遊間を守れる選手でありなが、バッティングも非常に良い。ミートが上手く、初見の投手でも難なく打てそうだ。

 

韮澤雄也(花咲徳栄)
派手さはないが、攻守に渡り素晴らしいセンスを持つ。特に打撃面では高いバットコントロールでチームを牽引していた。

 

遠藤成(東海大相模)
投手や三塁手もこなせるユーティリティプレイヤーである。打者としても非常にバランスが良い。

 

【外野手】

★来田涼斗(明石商)
2年生ながら、春夏4強の明石商を引っ張るトップバッターである。準決勝ではバックスクリーンに放つ本塁打を記録するなど非凡な素質が感じられ、来年も楽しみだ。

 

★桃谷惟吹(履正社)
令和初優勝校である履正社高校のトップバッター。初回の出塁率が非常に高い選手である。また、パンチ力も兼ね備えている。

 

★井上広大(履正社)
個人的には今年の甲子園MVPをあげたいぐらいの選手である。決勝戦での奥川投手からの本塁打も記憶に新しい。打率.429 3本 14打点と大活躍であった。もし代表に選ばれていたら、4番打者としての姿を見てみたかった。

 

★野村健太(山梨学院)
高校通算53本塁打を誇る長距離砲。どっしりとしたフォームから長打が見込める選手でありながら、甲子園に出場した大会では高い打率も残している。

 

中森投手(明石商)を入れるか迷ったが、遠藤選手や石川選手が投手もできるため9人も枠は取らなくて良いと思い、外した。

 

起用方法に関しては、全8~9試合なので先発は佐々木投手、奥川投手、西投手を軸に回していき、池田投手や飯塚投手がリリーフで試合を締める展開が理想的ではないだろうか。

 

特に佐々木投手、奥川投手は実力が高い国々との試合で登板させていきたい。

 

さらに、大会規定で球数制限もあるため、大差がついた勝ち試合の場合は、野手登録ながら投手としてもプレイできる遠藤選手や石川選手の登板も視野に入れていけば、起用の幅はさらに広がるだろう。

 

捕手は東妻選手と有馬選手の2人にして、攻守のバランスを良くした。

 

また、内野手は遊撃手に良い選手が揃うこの世代で武岡選手(八戸学院光星)や森選手(桐蔭学園)を敢えて外し、遊撃手として韮澤選手、ユーティリティに守れる黒川選手、坂下選手、遠藤選手、石川選手を選出。

 

さらに、一塁手には近藤選手(八戸学院光星)や上田選手(愛産大三河)などの素晴らしい選手がいる中、履正社で5番を打っていた内倉選手をチョイスした。

 

そして、外野手は優勝校の履正社から4番として活躍した井上選手や1番として活躍した桃谷選手を選び、唯一の2年生として来田選手、6番や7番ぐらいの打順で一発や長打を狙えるタイプの野村選手を選んだ。

 

オーダーも次のような2つのパターンを組んでみた。

 

【Aプラン】

1番 レフト 桃谷
2番 センター 来田
3番 サード 石川
4番 ライト 井上
5番 ファースト 内倉
6番 指名打者 野村
7番 セカンド 黒川
8番 キャッチャー 東妻or有馬
9番 ショート 韮澤or坂下

 

【Bプラン】

1番 レフト 桃谷
2番 ショート 遠藤
3番 サード 石川
4番 ライト 井上
5番 ファースト 内倉
6番 指名打者 野村
7番 センター 来田
8番 キャッチャー 東妻or有馬
9番 セカンド 黒川or坂下

 

個人的なベストオーダーはAプランだが、バランサーではある遠藤選手を2番に置いたBプランも、下位打線に得点力のある並びになる。

 

実際の選考では、遊撃手が6人である中一塁手や二塁手が0人であることに疑問が上がっているが、私は「同じタイプの」遊撃手を複数人選出していることが、真の問題点だと思っている。

 

一口に遊撃手と言っても野球選手の中ではトップクラスの能力がある選手たちなので、急造で他のポジションへ挑戦することも可能だろう。しかし、似たような打撃をするタイプが揃っていては、オフェンス面で幅が広げられないのである。このような点から、上記の選出や起用プランを書かせていただいた。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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