夏の高校野球・甲子園は開催するべきだったかを考察
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2020/05/20

20日、春の選抜大会に続いて夏の甲子園大会の中止が発表されました。
高校野球界そして何より球児たちへの大きな影響が考えられる中、今後はどういった「救済案」が考えられるのでしょうか?お股クラスタの一人、ゴジキ氏(@godziki_55)に寄稿してもらいました。

 

 

■学生・アマスポーツ界の主役である高校野球だからこそ開催へと動くべきだった

 

新型コロナウイルスの影響により、同じく学生の部活動の晴れ舞台であるインターハイは、既に開催中止を決めていた。高校野球もそれに続く形で、5月20日に中止が決まった。

 

ただし野球の場合は、他の競技(インターハイ)のようにすぐに大会中止ではなく、開催を前提とした上で、無観客試合を含む様々な案で進んでいた。センバツに引き続いてのことである。
結果的には中止になってしまったが、大会の開催を前提に動けた一番の要因は、やはり長い歴史や文化から構築された人気の高さやブランド力・コンテンツ力があるからではないだろうか。

 

高校野球の立ち位置は、「教育の一環」の「部活動」だが、毎年大多数のお客さんを集める人気イベントでもある。特に夏の大会期間中はプロスポーツを差し置いてスポーツニュースのメインを飾るくらい、学生のスポーツという括りを超えた存在だ。これまでの歴史で構築されてきた「夏」=「甲子園」=「高校野球」というイメージが持つ力も強い。
地上波のバラエティ番組で特番が放送される背景には「アマチュアスポーツ」では異例の人気があり、スポンサーの後押しも強い。

 

高校野球はコンテンツとして強い魅力を持つ。県大会の予選から甲子園出場~優勝までの各校のストーリー性、一発勝負のトーナメントの儚さ、意外性があるプレー、高校時代という青春への共感、ヒーローの誕生など数えきれない要素によって、老若男女問わず感動を与えてきたことは間違いない。
学生スポーツやアマチュアスポーツというカテゴリーにおいて、高校野球の「ヒト・モノ・カネ・情報」を大きく動かすブランド力やコンテンツ力は群を抜いている。

 

現状、メディアを通して日本中が「自粛ムード」であることも関係して、他のイベントや大会が「開催」にこぎつけた前例はない。そのような段階で、世間の動向から外れたマイノリティとなれば、多かれ少なかれ確実にバッシングが起きる。

 

世間がイベントに対して自粛ムードを抱く中、賛否が分かれると予測はつく。だがそれでも、様々な対策を行いながら夏の大会を開催していくべきだったと考える。なぜなら、タイミング的にも、また先述した「高校野球」が学生スポーツやアマチュアスポーツに与える影響力を考えても、他競技に対して模範となる形で先陣を切る必要があったからだ。

 

もし現状の変化に応じて、高野連含む高校野球全体が積極的な対策を行いつつ大会が開催されたら、今後の開催の可否が不透明な他競技のスポーツ大会や他のカテゴリーのイベントにも良い影響を与えることができ、相乗効果が見込めたのではないだろうか。個人的には、甲子園が「屋外球場」だという点も踏まえて、開催をして欲しかった。

 

高野連のように他競技に対しても影響力のある協会や団体が率先して様々な最善策を獲りつつ、プラス方向(≒開催)へと動くことは非常に重要である。これはスポーツ界に限らず、様々なカテゴリーや局面、例えばビジネスにおいても共通することだろう。
その行動が早ければ早いほど、後に続く者たちも対応できる可能性は高くなる。今回のように国内全体の雰囲気が暗くなっている状況下で、いかに早く策を打って前向きに行動して空気感を打開していけるかは、今後の鍵になっていくだろう。

 

■懸念される球児たちのメンタルと進路をケアするには

 

とはいえ実際問題として今年の夏の大会・甲子園大会が中止となってしまった今、出場予定校に対する配慮を考える必要がある。

 

高校3年生は最後の晴れ舞台なだけに、悔しい思いしかないだろう。甲子園出場や優勝を目指していた選手達はなおさらである。

 

救済策はあるはずなので、それらを積極的に実施し、この世代で悔しい思いをした球児達に甲子園で思う存分プレーをしてほしい。例えば、県大会から甲子園大会という長期の開催は難しくても、自粛ムードが落ち着きそうな8月から県大会のみ開催といった施策を行なっていく価値はあるだろう。
例えば、近年の大阪府大会は非常にハイレベルなことで知られる。2017年のセンバツ大会決勝は大阪桐蔭対履正社のカードであり、2018年には大阪桐蔭が春夏連覇。昨夏は履正社が制覇した。彼らの戦い振りを見ると、府大会ですでに甲子園大会の上位レベルに達していることがわかる。そのことからも、開催する価値は非常に高いだろう。

 

また(原因は夏の大会・甲子園大会の中止に限ったことではないが)、ドラフト候補選手を含めた進路にも大きな影響が予測される。
これまでは、甲子園という目標に挑むこと、またその大会に出場することによって選手のポテンシャルが最大限に引き出され、結果的にスカウト陣の目に止まった選手が多くいる。このままでは、そうした「可能性」を見逃すことになってしまう。

 

対策として、契約前の練習参加を一般化していくことも一つの手段だ。具体的には、大学生の就職活動中でよく行われる「インターンシップ」のようなものだ。この機会に選手の能力やポテンシャルを吟味していくことによって、選手とスカウトの両者が納得いくドラフトを行う補助となるだろう。

 

このような状況だからこそ、「アマチュア」と「プロ」を分けている「常識」や「規律」となっている部分を解消していき、両者の協力で乗り越えていくことが重要だと考える。

 

繰り返すと、新型コロナウイルスの影響で残念ながら今年の大会は中止という結果になったが 、現在はスポーツの大会や各種イベントを「開催する」ことが非常に大事だと思う。
特に学生の大会では、選手たちに対して不必要な現実を与えないことや代わりとなる大会を用意することによって、僅かながらでも夢を与えていくことが大切なのは間違いない。そのためにも、新たな施策や案を「試すこと」に踏み出すことは大きな意味を持つ。必要なのは実行する「一歩目の勇気」である。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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