akane
2018/07/09
akane
2018/07/09
Genre: Folk Rock
Desire – Bob Dylan (1976) Columbia, US
(RS 174 / NME 143) 327 + 358 = 685
Tracks:
M1: Hurricane, M2: Isis, M3: Mozambique, M4: One More Cup of Coffee (Valley Below), M5: Oh, Sister, M6: Joey, M7: Romance in Durango, M8: Black Diamond Bay, M9: Sara
2016年にシンガー・ソングライターとして初めてノーベル文学賞を受賞した、ロック史上最高峰の詩人にして、数々の名曲・名演を世に送り出した音楽家、卓越した歌手、そしてつねに目が離せない波瀾万丈の人生を歩む「芸術神に愛された男」――そんなボブ・ディランの長きキャリアにおける、ピークのひとつがこれだ。邦題を『欲望』とする本作は、彼にとって17枚目のスタジオ・アルバムとなる。
本作の特徴は、ディラン作品において特筆すべき、大がかりなコラボレーション作業のもとに制作されたことだ。なんとあの彼が、楽曲の大半を共作している。『オー! カルカッタ』などで知られる、ソングライターであり舞台監督でもあるジャック・レヴィとともに、全9曲のうち7曲を書いているのだ。カヴァーやトラッド曲を歌うことはあっても、書き下ろし曲で他者とここまで多くの共作をおこなうのは、ディランのキャリアのなかでもきわめてめずらしい。
たとえばM1、殺人罪で投獄されたボクサー、ハリケーン・カーターの冤罪を訴える詞が、熱く明瞭に、エモーショナルに展開されていく人気曲に、共作の効果があらわれている。誕生日に惨殺されたマフィアの殺し屋ジョーイ・ギャロに思いを馳せるM6など、ドラマ性の強い曲が目立つのは、レヴィとの化学反応のせいだろう。
この共作が生まれた理由は、75年にディランが指揮した伝説的なコンサート・ツアー「ローリング・サンダー・レビュー」の影響による。ジョーン・バエズや元バーズのロジャー・マッギンほか、名だたる音楽家が参加したこのツアーは、ほぼ宣伝なしで、全米各地の小さな会場を回る、というものだった。そしてマッギンの友人であり、このツアーの第一部の監督をつとめたのがレヴィだ。ツアーの本番がスタートする直前におこなわれた本作の制作は、大勢のツアー関係者がスタジオに呼ばれつつ、進められていったそうだ。つまり、ディランと仲間たちの「コラボの季節」が生んだ1枚が本作だということだ。ちなみに、ツアーは撮影されて映画『レナルド&クララ』の一部となったのだが、同作の脚本を、ディランはサム・シェパードと共同で書いている(そしてシェパードは、ツアーの同行記も上梓した)。
本作は「最も売れたディランのスタジオ・アルバム」の1枚としても知られている。5週連続の全米1位を記録、ダブル・プラチナムにも認定された。
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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