【第4回】油を食べた日は、油を摂るんです
友利 新『女医が教える食の処方箋』

 

みなさん、こんにちは。今回はいよいよ上手な油の取り方についての具体的な処方箋をお出ししていきたいと思います。

 

◎オメガ6をオメガ9に変えていく

 

オメガ3とオメガ6は、1:4のバランスで摂るのがひとつの目安とされています。逆にオメガ9には摂取量の指標はありません。

 

今までお話してきた通り、オメガ6というのは意図と反して勝手にたくさん身体に摂り入れてしまうもの。そこで、「これはオメガ6だな」と思ったものは、オメガ9を含む油に変えていくことが重要といえます。

 

例えば、今まではオメガ6を含む植物油のドレッシングを使っていたところをバルサミコとオリーブオイルに変えてみたり、ご家庭で調理するときサラダ油で炒めるのではなく、オリーブオイルを使うようにしたり。オメガ9の摂取量に指標はありませんが、たとえば代表的なオリーブオイルには腸の働きをよくするポリフェノールがたっぷり。摂取すれば体が喜びます。このように摂りがちなオメガ6と積極的に代替えしていったほうがいいのです。

 

◎オメガ6を摂りすぎた日は、オメガ3でカバー

 

さて、問題です。ランチで中華料理を食べた場合、あなたはどの油を摂取したことになるでしょうか? これまでこの連載を読んでくださったみなさんはすぐにおわかりでしょう。そう、中華料理に多用されるのは、ゴマ油やサラダ油。つまり、オメガ6の摂りすぎです。

 

油っぽいお料理を食べると、「今日は油を取りすぎてしまったから油は控えよう」という考えになりがちかもしれません。しかし、それは間違い。みなさんには、「今日はオメガ6を取りすぎてしまったから、オメガ3を摂ろう」という思考になっていただきたいのです。そうすることで、オメガ6によって炎症に傾いていた体が沈静の方向に傾き、バランスが良くなるためです。

 

例えば、夕飯はお魚を食べてEPAやDHAからオメガ3を摂取する。寝る前にアマニ油やエゴマ油のサプリなどから摂るでもOKです。少し意識するだけでもみなさんの体はだいぶ変わってくると思います。

 

◎食べ物からも摂れるオメガ3

 

また、オイルは、食べ物からもとることができます。例えば、焼肉を食べるときは、必ずエゴマの葉っぱで包んでお肉を食べたり、コンビニで食事を済ませるときはサラダチキンではなく、サバの味噌煮缶を選んだり。

 

ただ、ツナ缶は気をつけないといけません。魚ではありますが、使用している油が何のオイルなのかがわからないと危険です。最近では、ノンオイルのツナ缶も登場しているようですが、できれば青魚の水煮缶などを選ぶといいでしょう。ほか、ナッツ類も効果的。小腹が空いたらオメガ3を含むくるみやアーモンドを食べてオメガ3を補填しても良いでしょう。

 

◎ある患者さんとの出会いから

 

良質な油はバランスが命――それを痛感したのはひとりの患者さんとの出会いでした。

 

10年近く体中にかゆみのある症状に悩まされているという患者さんが、ある日、私のクリニックに来院されました。たくさんの湿疹が出ているのかと思いきや、何もないんです。皮膚には何の異常もなく、話を聞いたら精神的なものでもなさそう。どちらかというと体は痩せ型。暴飲暴食が原因でもない。

 

試しに「どういったものを召し上がっていますか?」と聞いてみると、胃があまり丈夫ではないため、たくさん食べられないとおっしゃられました。食べるとすぐにお腹がいっぱいになって胃もたれしてしまうため、カロリーの高いものを少しだけ食べるようにしている、と。高カロリーのケーキを食べてお腹を膨れさせ、野菜も取らないといけないからとコンビニでサラダを購入。市販のカップスープも一緒に飲んだりしてご飯を済ますとお話されました。「お肉とお魚は食べますか?」と聞いたところ、あまり召し上がっていないようでした。

 

「これはおかしい」と思い、体のオメガ6とオメガ3の割合を検査してみました。すると、日本人の平均的なオメガ3とオメガ6の割合は「1:4~6」なのに対し、その方はなんと「1:10」! オメガ6の割合がとても高かったのです。

 

慢性的なかゆみの原因は、ケーキやサラダのドレッシングに含まれる植物油、つまりオメガ6の摂りすぎによる炎症だったのです。原因が判明したので、積極的にオメガ3をとるように食事指導を行い、EPAやDHAを含むサプリを飲んで頂いたところ、3ヶ月で痒みがぴたりとなくなりました。その後も1~2ヶ月は様子を見るために通院されましたが、継続的な食事改善により、痒みがぶり返すことはありませんでした。

 

このような謎の湿疹や炎症が起こってしまっている方は、オメガ6の摂りすぎを疑ってみましょう。この症状は、特に若い女性に多い傾向があります。

 

◎糖質オフダイエットの危険性

 

ずっと健康でいるためは、毎日の食生活から病気や不調を予防するのが基本です。女性がやりがちな流行のダイエット方法にも、“油の落とし穴”が隠れていることもあります。

 

一時期流行った「糖質オフダイエット」。ざっくりいうと、「糖質の摂取量を減らし、脂質をたくさん摂りましょう」というダイエットです。糖質オフをすると、一時的には体重が減ります。しかし、肝心の脂質の取り方についてのアドバイスは、ほとんどないように感じます。

 

カロリーを気にして糖質オフを実践されている方は、サラダチキンなど鶏肉を食事のメインにすることが多いかもしれません。しかし、体は痩せたとしても、油の面から考えるとオメガ6ばかりを摂っていることになる。結果、肌のくすみや全身の湿疹につながり、長期化すると動脈硬化を引き起こす原因になりかねないので注意が必要です。

 

きれいになるためのダイエットも、“油の落とし穴”によっては逆効果になってしまいます。糖質オフダイエットをしている人ほど、体に入れる油の質には要注意。オメガ6を含む鶏肉ばかりではなく、EPA・DHAなどオメガ3系の油を多く含む青魚を食べることをおすすめします。なんども言いますが、きちんと油の性質を理解し、バランスよく摂取していくことが重要です。

 

◎ココナッツオイルと糖質は一緒に摂らない!

 

近年ブームとなったココナッツオイルについも触れておきましょう。みなさんは、糖質と一緒にココナッツオイルを食べたらダイエット効果に意味がないことはご存じでしたか? それこそ、このオイルは糖質オフと組み合わせて摂るのがよいのです。

 

ココナッツオイルを摂取して痩せる理由は、ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸にあります。この中鎖脂肪酸には「ケトン体を生成してエネルギー源にする」という特長があります。ケトン体とは、“体脂肪を分解する”ことで作られるもの。これがダイエットにつながるポイントです。しかし、ここで注意したいのは、ケトン体は、体内のブドウ糖がなくなったときに作られ始めるということ。

 

ブドウ糖とは、私たちの体を動かすエネルギー源。ごはんやパンなどの炭水化物に含まれる糖質は、体内でブドウ糖に変わることでエネルギーになり、体や脳の働きを維持してくれます。体の中にブドウ糖が多いと、体はブドウ糖からエネルギーを吸収し始めるようになっています。ブドウ糖が残っている状態ではなかなか中鎖脂肪酸が機能してくれないのです。

 

ココナッツオイルで痩せると言われる理由――それは、糖質(ブドウ糖)が少ない状態で中鎖脂肪酸を摂取し、そしてその中鎖脂肪酸が体脂肪を燃やしてくれるから。けれども、中鎖脂肪酸と一緒に糖質を摂取してしまうと、体が糖質(ブドウ糖)のほうを優先して燃やしてしまうため、中鎖脂肪酸はその力を十分に発揮できません。

 

中鎖脂肪酸の性質を最大限に生かすのであれば、糖質とココナッツオイルを一緒に摂るのは控えるべきです。糖質制限をして、体内のブドウ糖を少なくする。その上でココナッツオイルを摂取すると、脂肪が分解されていくのです。

 

今回はオイルについての具体的な摂取や食べるときの注意点をご紹介してきました。すべてに共通していえることは、きちんとそのオイルの性質を理解してから摂取すること。

 

さまざまな食事法やダイエット方法が登場し、現代の日本人の食生活も多様化しています。その中で常に自分自身に問いかけてください――「今、体にはどんなオイルが必要なのか?」「きちんとオイルのバランスがとれているのか?」と。

 

これは、良質なオイルと上手に付き合うために必要なことなのです。

女医が教えるオイルの処方箋

友利 新(ともり あらた)

医師(内科・皮膚科) 琉球大学医学部 非常勤講師。沖縄県宮古島出身。 東京女子医科大学卒業。 同大学病院の内科勤務を経て皮膚科へ転科。 現在、都内のクリニックに勤務の傍ら医師という立場から、美容と健康を医療として追求し、美しく生きるための啓蒙活動を雑誌・TV などで幅広く展開中。 また、2014 年の出産を機に、安心安全なベビースキンケア商品を欲し、「ベビー予防スキンケア」というコンセプトで自ら研究開発、商品化。そして起業し、医師、母、社長、と多忙な毎日を送っている。 2018年8月には、原材料の油にこだわり、化学調味料、酸味料、着色料、香料全て不使用のカレー「くせになるこだわりの スパイス&オイルカレー」(http://shop.mediskin.jp/product/detail/49 )を開発。2019年4月には、化学調味料、香料、増粘剤不使用でオレイン酸とαーリノレン酸の含有率にこだわった「くせになるこだわりのオイルドレッシング」(http://shop.mediskin.jp/product/detail/51)を開発。2004年第36回準ミス日本。 2016年第9回ベストマザー賞【経済部門】受賞。 子育て応援・ママ応援大使。二児の母。美と健康に関する著書も多数。
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