BW_machida
2021/06/30
BW_machida
2021/06/30
どこかで一度は耳にしたことがある、そんな数々のヒット曲を手掛けてきたソングライタープロデューサーのShusuiさんが原案を担当した本書は、ふつうの絵本とはすこし趣がちがう。親子で一緒に歌って踊れるように、なんと本の最後のページにQRコードがついているのだ。表示されたURLにアクセスすればオリジナル曲に加えて、読み聞かせ音源まで聴くことができるという、読者にとってなんともありがたい作りになっている。もちろん、しっかり歌詞もついてくる。
物語はとある日曜日、三人の女の子が海に遊びに来た場面からはじまる。一番上のモーちゃんは魚に詳しい海の生きもの博士。二女のノンノンは泳ぐのが大好きで、三女のレータンは仲良しの犬、ショコラと一緒にウミガメの背中に乗ることを夢見ている。ネコの海賊を名乗るウルマに出会った子どもたちは、大きなヤシの実が変身して現れた海賊船で冒険にでることになる。
「さいきんは うみのみずが あたたかくなってしまって わたしたちの すむところが どんどん なくなってきたのじゃ やさしさからできた サンゴのふりかけをかけると サンゴたちもげんきになって きれいなうみによみがえる というでんせつがあるのじゃ」
そう語るのは、海の長老リュウグウノツカイ。海の生き物たちの暮らす場所が大変なことになっていると知った子どもたちは「サンゴのふりかけ」なるものを見つける決心を固める。
オニヒトデ、ジンベエザメ、ダイオウイカ、イルカなど海のなかは大小さまざまな生きものが行き交い、とても賑やか。しかも、海の生きものたちの名前がおもしろい。子どもたちに「サンゴのふりかけ」を教えたリュウグウノツカイはリュウゾウさま。海のギャング、ホオジロザメのワルワルコとメガマウスのホシガリコは子どもたちを攻撃してくる。それを見て笑っているのは、ウツボのウツボッチャマだ。イカからもらったお菓子「いちゃがりがり」も気になる。おせんべいに似ているらしいけれど、どんなものか気になる。
目的地にたどり着いた子どもたちはなぜかスパイスのきいたタコライスを振る舞われる。「サンゴのふりかけ」までもう少し。物語の鍵になるのは、優しいマナティーが教えてくれた「こまったときは『シマヌククル』ということばを おもいだしてね」という言葉だ。「シマヌククル」といったい何なのか。
子どもたちの潜った海は想像の世界かもしれないが、現実の世界でもサンゴ礁の消失が危ぶまれている。原因は地球温暖化による海水温の上昇だ。この絵本と一緒にオリジナル曲を楽しみながら、親子でぜひ海のなかの出来事を想像してみてほしい。
『ちゅらうみのサンゴ』
Shusui/原案 佐々木一聡/絵 RUI/文
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