ヤフー人事トップが「1on1ミーティング」をはじめるキッカケとなった「部下からの一言」とは?
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最近しきりと耳にする「1on1ミーティング」という言葉。上司と部下が1対1で定期的に話し合いをすることを仕組み化した人事制度ですが、果たして効果はあるのでしょうか? 「そんなこと制度にしなくても俺はやっている」「私の会社でやっても意味なんてない」と思っている方、いませんか?

 

『残業の9割はいらない』の著者でヤフーの人事トップ・本間浩輔さんは、部下とのあるエピソードがきっかけでこのミーティングをはじめたところ、大きな効果を実感しているそうです。

 

ヤフーの場合は、先述の通り、私が人事の責任者になった二〇一二年から、上司と部下が週に一度、三〇分間対話する「1on1ミーティング(以下、1on1)」を全社に浸透させてきました。

 

この1on1は、もともと私が「ヤフースポーツ」の責任者だった頃に始めたものが原形となっています。

 

始めるきっかけとなったのは、部下とのコミュニケーションにまつわる私自身の苦い経験です。あるとき、私がメンバーの一人に対して「このままでは評価は上げられない」というようなネガティブなフィードバックをしたところ、本人はたぶん不満だったのでしょう、「そういう本間さんはふだん何をやっているんですか」と言ったのです。

 

それまで私はチーム内のコミュニケーションはうまくいっているだろうと思い込んでいました。また、私自身は社外を飛び回って仕事を取ってくるのが大好きだったのですが、そういう仕事の仕方もチームに理解してもらっているはずだと過信していました。

 

しかし、実際はそうではなかったわけで、私は大いに反省するとともに、コーチングの本に書いてある「コミュニケーションは頻度」とはこういうことなのかと実感しました。

 

そこで、チームのメンバー全員ともっと頻繁にコミュニケーションをとろうと考え直して、時間が空けば、メンバーの一人ひとりに「ちょっとお茶でもどうかな」などと声をかけ、オフィス近くのカフェで話をするようになったのです。効率を考慮すれば、一〇人を集めてミーティングをした方がいいことはわかっていました。しかし、場合と目的によっては、一対一(1on1)のミーティングを選んだ方が効果は高いはずだと考えました。

 

この元祖1on1を始めると、メンバーにはとても好評でした。当初は、どちらかというと私の思いを伝えることを目的としていたのが、いつの間にか、部下の話を聞き、部下を理解する場に変わっていったのです。幸運にも私はカウンセリングを学んだことがあり、キャリア心理学の勉強もしていたので、その手法をベースに「あなたは将来どんな仕事をしたいの?」とか「そのためには今どうすればいいの?」といった問いかけを繰り返し、メンバーはそれに答えるというやりとりでしたが、「え、そんなことも打ち明けてくれるの?」とこっちが驚くくらい、みんな自己開示をしてくれたのです。おかげで、チームでビジョンが共有できたり、個人の強みを生かしたチームづくりができたりするようになり、抜群の効果でした。

 

同じ頃、外資系のIT企業に勤めている知人から「うちの会社にはいいルールがあって、月に一回、上司が何でも話を聞いてくれる」と聞いてからは、1on1が秘めているパワーに確信を抱くことができました。

 

ですから、人事本部長になったときも、迷うことなく1on1を全社に導入することができたのです。

 

現在、ヤフーのオフィスには、1on1がしやすいようにデザインされたスペースや部屋が設けてあり、各部署のあらゆる階層で1on1が実施されています。そのため、上司と部下のコミュニケーションは比較的よくとれていると思っています。

 

また、一般的に現場の人事力を高めるためには、上司が管理する範囲、経営学でいうところの「スパン・オブ・コントロール」を上司の能力などに応じて調整していく必要もあります。日本企業では一九九〇年代にフラット化が進んだ結果、一人の上司が管理しなくてはいけない部下の数が増えてしまい、それによって、上司が部下をよく見ることができにくくなっているからです。

 

ヤフーでは、上司のスパン・オブ・コントロールを三~六人ぐらいにすることを一つの基準にしていますが、今後、「えらべる勤務」や「どこでもオフィス」などの制度を現場の人事力で裏側からしっかり支えていくためには、組織設計をさらに高度なものにしていくべきだと私は考えています。

 

IT企業や外資系企業では当たりまえになっている「1on1ミーティング」。あなたの会社にも導入してみてはいかがでしょうか? 会社単位では難しくても、あなたの部下とやってみる、あるいは上司に提案してみるのも一つの手ですね。

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本間浩輔(ほんまこうすけ)

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