愛する技術を習得すれば、ふたりの愛は永遠になるかもしれない

馬場紀衣 文筆家・ライター

『どうすれば愛は長続きするか メイク・ラヴの心理処方箋』講談社
著/バーバラ・デアンジェリス

 

 

恋をしているとき、人は輝いている。たとえ恋人と一緒にいなくても、日々、刻一刻が愛に満ちた刺激的な時間になるからだ。けれど、恋や愛にはべつの側面がある。不倫、浮気、嘘、失望……恋する相手に拒絶されたらどうしようという絶え間ない不安。そして最後に来る、かもしれない別れの恐怖。愛はいつか終わると感じているなら、それは愛を長続きさせる技術を習得することで解決するかもしれない。

 

本書にはさまざまなカップルが登場するが、どの人間関係もけっして特別な例ではない。私たちのすぐ隣で起こっているような、よく見聞きする恋人たちのすれちがいだ。妻のことは愛しているがセックスに悩みを抱える夫、うまくいっているはずなのに何かが違うと感じている人、愛あってはいるけれどもう恋はしていないというカップル。

 

「機能的には正常なのに最初のころのトキメキが消えたのが悩みだという場合、その悩みはほとんどセックスとは関係ない。相手にたいする不満や怒り、不信感、解決されていない喧嘩や不安といった葛藤を押し隠していることが原因だ。真の原因を一緒になって探って改善することによって、性的な悩みといったものは自然に解消されていく」

 

著者は情熱的なセックスとは情熱的な人間関係の現れであることを指摘したうえで、情熱というのはベッドに入ってから始まるものではないと述べる。常にパートナーを愛するにはどうすればいいのか、その方法を知ることで情熱的な人間関係は成り立っているというのだ。

 

思い出してほしい。私たちは車の運転をどのように習得しただろうか。靴紐の結び方、文章の読み方、楽器の弾き方……どれもきっと「誰か」から教わったはずだ。それなら愛を持続させる方法はどうだろう。パートナーと心身ともに愛しあう愛の行為は、料理をしたりスポーツをしたりするのと同様、ひとつの技術なのだと著者は述べている。いったん覚えてしまえば自然にできるようになるけれど、習得するには時間がかかる。けれどそのコツを覚えてしまえば、その報酬はとてつもなく大きい。人は、自分が望む結果に向かって「愛」を意識的に育てない限り、何度でも同じ過ちを犯すことになるというのだ。つまり、破局だ。

 

人間はとても移り気な生き物だから、パートナーとの関係を常に意識していなければ、愛がどれほど尊いもので、楽しいものかなんてすぐに忘れてしまう。とはいえ、恋人とより親密になる方法はいたってシンプルだ。たとえば毎日ほんの少しでいいから、相手と過ごす時間をもつこと。パートナーの髪を5分間とかしてあげるのもいい。気持ちを伝えるメモを贈ったり、一緒に楽しめる趣味を探すのもいい。

 

「愛はもっとも偉大な魔法」というのは著者の言葉だ。もし人を愛するコツを学ぶことができれば、人は偉大なマジシャンになることができる。パートナーとのあいだに信頼関係を築けるようになるだけでなく、自分自身をも愛せるようになるのだと著者は本書で説いている。

 

『どうすれば愛は長続きするか メイク・ラヴの心理処方箋』講談社
著/バーバラ・デアンジェリス

この記事を書いた人

馬場紀衣

-baba-iori-

文筆家・ライター

東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。

関連記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を