イタリアの美味しさを二度味わうことができた「甘くて、苦くて、深い素顔のローマへ」

瀬尾まなほ 瀬戸内寂聴秘書

『甘くて、苦くて、深い素顔のローマへ』イカロス出版
水谷渚子/著

 

「イタリアに行く」

私がずっと叶えたかった希望の一つで、去年の年末には「30歳のうちにイタリアで本場のピッツアやジェラート、ティラミスを食べる」と目標をたてた。

 

 

食べることが大好きな私は、特にスイーツには目がない。一日ごはんは一食であとの二食はお菓子で済ませ、まわりからは呆れられるほど。朝からケーキ、最高! とテンションがあがってしまう。最後の晩餐はデザートビュッフェ、目の前にたくさんのスイーツが並んでいるところを想像するだけで、うっとりし、幸せな気分になる。

 

 

イタリアは6月が一番いい季節だと聞き、また友人とのスケジュールも合ったので、年明けから50回以上瀬戸内寂聴先生に頼み込みやっと許しを得て長期間の休みをもらった。秘書という立場で長期間先生のもとを離れることは迷惑をかけるし、またスタッフの人数が少ないため負担をかけてしまうので長期休暇はめったにとれないので、イタリア行きが決まったときは嬉しくてしょうがなかった!!

 

イタリアに行く前に現地に詳しい編集者におすすめのガイドブックを紹介してもらった。それが「甘くて、苦くて、深い素顔のローマへ」水谷渚子著。ページをめくると見開きで掲載されているおいしそうな写真にまず目がいく。『いちばん好きなジェラート屋』や『とろんとまろやかなグラン・カッフェ』、また『福福しい顔になるボロネーゼ』と見出しを読んだだけでも心がウキウキしてしまう。ページに写る写真を見ているだけでよだれがでそうになる。イタリアへの出発日まで毎晩本を開き、気持ちを高めていった。目を閉じるとローマの風を感じたり、時折ピッツアのチーズの匂いを感じるほどだ。

 

ローマに着いてコロッセオやバチカン市国やスペイン坂、トレビの泉など観光名所を回ったが最大の関心はもっぱらスイーツだ。
イタリアではどこでも老若男女問わずジェラートを食べている。特に、夕食を終えた後のジェラート店では長蛇の列が並んでいた。イタリアでの夕食開始時間は比較的遅く21時頃。だからジェラート店も23時、24時まで営業しているところも多かった。

 

 

私たちも「郷に入れば郷にしたがえ」とばかりに何度もジェラートをほおばった。友人は「こんなに一日で何度もジェラート食べることないよ」と笑っていた。
ホテルの前にある量り売りのおいしいピッツアも食べ、ジェラートも食べ、残るはイタリアを代表するお菓子、ティラミスだ。この本で紹介されている『虜になるティラミス』Pompiは。ローマだけでも何店舗もあり、今回はスペイン坂近くにあるPompiへ。そこはテイクアウト専門の店舗だったためその日にフィレンツェへ移動する特急電車の中で食べることにした。冷凍でも販売していて、電車に乗る2時間後には自然解凍で食べごろだ。

 

さて期待の味は…? 実際食べてみると、イタリア人が絶賛するほどの味ではなかった。いわゆる、「普通」だったのだ。Pompiのティラミスは日本のコンビニのティラミスとさほど味が変わらなかったなんて言うとローマ市民に怒られるだろうか。

 

昼間から友人とお酒を飲む、贅沢@ローマ

 

あまりに何度もこの本で読んで期待しすぎていたのかもしれない。しかし意外にそれほどがっかりはしなかった。本で読んだことを現実の違いを実際自分自身で体験するというのも旅の醍醐味だ。実際の旅に出る前に、私はこの本によって何度もローマへ行ったような気分になった。まるで自分がその場にいるような魅力的な写真と心をつかむ紹介文のおかげだ。イタリアの美味しさを二度味わうことができたのだ。それは「読書による旅」と言えるのではないだろうか。

 

『甘くて、苦くて、深い素顔のローマへ』イカロス出版
水谷渚子/著

この記事を書いた人

瀬尾まなほ

-seo-manaho-

瀬戸内寂聴秘書

京都外国語大学卒業と同時に寂庵に就職。瀬戸内宛に送った 手紙を褒めてもらったことがきっかけで執筆した初エッセイ『おちゃめに100歳!寂聴さん』は18万部のベストセラーに。連載『まなほの寂庵日記』(共同通信社)は15社以上の地方紙に掲載されている。困難を抱えた若い女性や少女 たちを支援する「若草プロジェクト」理事。大好物は「何よりも胸をときめかせる存在」というスイーツ。座右の銘は「ひとつでも多くの場所へ行き、多くのものを見、たくさんの人に出会うこと」。1988年、兵庫県生まれ


・瀬戸内寂聴公式インスタグラム:@jakucho_setouchi

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