日本シリーズ、巨人は万全の体制でも2勝が限界だった? ソフトバンクとの格差を分析
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2019/11/11

ソフトバンクの4連勝で幕を閉じた日本シリーズ。シーズン1位でCSも順調に突破した巨人ですが、全く歯が立ちませんでした。一体、巨人には何が足りなかったのでしょうか?
「お股クラスタ」の1人でもある巨人ファンのゴジキ氏(@godziki_55)が寄稿してくれました。

 

 

令和最初の日本シリーズは、福岡ソフトバンクホークスが読売ジャイアンツに4連勝。日本一を掴み取った。

 

これによって、ホークスは2010年代だけでセリーグの6球団全てと日本シリーズを戦い、勝利したことになる。2010年代のプロ野球はソフトバンクの時代だったと言っても過言ではないだろう。

 

今シーズンは2位でリーグ優勝こそ逃したものの、CSと日本シリーズといったポストシーズンでは、現在のプロ野球でトレンドを先取っている「スラット・スプリット型」の投手を中心とした、隙のない野球を見せてくれた。

 

前評判からソフトバンクに分はあったものの、日本シリーズは改めて巨人との実力差を思い知らされた。

 

■限られたリソースをフル活用した巨人

 

今年の巨人はCSまでは順調に勝ち進んでいた。これは戦力で他を圧倒したというよりは、シーズン中からそうであったように、細かい運用力を武器とするところが大きかった。

 

シーズン序盤に、トップパッターの吉川尚輝が離脱(結果的に、復帰することなくシーズンは終わった)。この非常事態に、原監督は亀井義行を起用。そして、捕手専属だった大城卓三のコンタクトヒッターとしての資質を見出し、一塁手を兼業させつつ5番に置いた。これらの策が功を奏して、チームの調子は5月から上がっていった。

 

また、救援陣はシーズン当初から問題視されており、チーム全体で見ても最大の課題であった。

 

そこで、元々は先発として調整していた澤村拓一や、近年は先発ローテを張っていた田口麗斗、先発投手としては限界が来つつあった大竹寛を中心に救援陣に回して整備。

 

クローザーの第一候補であったクックの序盤離脱もあった中でデラロサを獲得し、さらに厚みが増した。接戦の試合に対する勝率や確実性が上がっていった。

 

また、坂本勇人、丸佳浩、岡本和真という2~4番の並びは基本的に固定し、坂本は及第点以上、丸と岡本は及第点の活躍を見せていた。

 

先発陣では菅野智之の調子が例年より上がらない中、山口俊がキャリアハイの活躍を見せた。

 

このような運用と采配、それに応える選手の活躍でシーズンは優勝。CSも順調に勝ち進んで日本シリーズ進出を決めた。

 

■ソフトバンクとの実力差

 

ところが日本シリーズでは、これまで通用していた戦い方が難なく攻略されてしまった。最終的に、策がゼロに近い状態だったのは否めなかった。

 

シーズンやCSでは、山口俊やメルセデスといった先発陣がゲームメイクした上で澤村、田口、大竹と言った中継ぎ陣とクローザーのデラロサで逃げ切る勝ち方ができていた。

 

しかし、日本シリーズでは得点をあげられなかったこともあるが、これまで絶体絶命のピンチで抑えてくれていた田口麗斗、大竹寛が難なく打たれてしまった。中継ぎ陣のコマが使えなくなってしまったのは、巨人側からしたら痛手だったに違いない。

 

さらに、打撃陣では坂本、丸が絶不調なため、打線もなかなか繋がらなかった。

 

これまでの巨人は坂本、丸が安定しており、劣勢や拮抗していた試合で打っていたのでなおさら厳しかった。

 

ソフトバンクの目線で見れば、巨人のキープレイヤーを1戦ごとに攻略していった印象である(シリーズ前に私の考えていた、巨人のキープレイヤーについてはコチラをご覧いただきたい)。ソフトバンクは短期決戦ならではの「試合巧者」ぶりを発揮していた。

 

エースの千賀滉大と高橋礼は実力通りの投球をして、救援陣も盤石のリレー。巨人打線は手も足も出ない状態だった。

 

巨人打線からしたら、先制点こそあげたもののバンデンハークが先発だった第3戦や、初回あまり調子が良くなかった和田毅が投げた第4戦で攻め切れなかったのも大きな敗因だろう。

 

また、ソフトバンク打線は巨人に先制点を与えたビハインドの展開でもメンタル面が揺らぐことなく、難なく逆転する「勝者のメンタリティ」を存分に発揮していた。

 

特に第4戦以外は、スタメン選手の8人が代表選出の経験を持つという質の高さを見せた。加えて、首位打者獲得経験を持つ長谷川勇也、内川聖一や球界屈指のコンタクトヒッターである中村晃といった選手を要所で出せる層の厚さも光っていた。

 

■巨人が日本一になるために足りないものは?

 

現在の戦力でリーグ優勝まではできたものの、日本シリーズでは力負け。巨人はやはり、戦力の底上げが不可欠である。

 

序盤に長期離脱をした吉川尚輝の穴はやはり大きく、田中俊太や山本泰寛をはじめとした若手二塁手では、ワンランク上の相手には通用しない部分があった。

 

当初の構想であった1番吉川尚輝、2番坂本、3番丸、4番岡本、5番亀井の並びと、下位打線に阿部慎之助はもちろんのことゲレーロやビヤヌエバ、陽岱鋼といった長打力のある選手を駆使しても、ようやくこの日本シリーズで2勝できるかどうかくらいのラインだろう。

 

投手陣に目を向けると、今シーズン高いパフォーマンスを残し、日本シリーズでも及第点の投球をした山口俊や、試合中盤まで安定して馬力のある投球ができるメルセデス、本来は不動のクローザーとして投げていたデラロサは実力面で通用している部分があった。

 

だが、ワンランク上の打線に対して「必要最低限の球威や球速」が満たされていない投手は、この日本シリーズで共通して攻略されている。

 

山口俊や戸郷翔征といった「スラット・スプリット型」投手の枚数を、ソフトバンク投手陣のように増やしていくのも一つの手段であるだろう。

 

さらに、第4戦で怪我からの復帰登板ながら力投を見せた菅野智之の完全復活も当然必要である。

 

昨シーズンから2年間は、西武打線とソフトバンク投手陣がプロ野球球団の中でも頭一つ抜けている。また、リーグ別で見てもパリーグが2013年から連続して日本一に輝いており、セ・パの実力差は歴然である。

 

このような事態だからこそ、巨人だけではなくセリーグ全体の課題という危機感をある程度持ち、実力差を一歩ずつ縮めていかなければならない。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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