ryomiyagi
2020/06/10
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2020/06/10
一年の浪人期間を経て、2013年シーズンから巨人の一員としてマウンドに上がった菅野智之。1年目から二桁勝利を記録し、前評判通り先発ローテーションの柱として活躍した。
ルーキーイヤーのシーズンは、大学時代のように力で押していくのではなく、持ち前の制球力と多彩な球種で交わしていく投球スタイルで、シーズン途中まで最多奪三振争いを繰り広げた。最終的にはチームトップの勝利数、防御率、奪三振、勝率を記録。ポストシーズンは、クライマックスシリーズで前田健太、日本シリーズで田中将大と言った国内トップクラスの投手に投げ勝ち、その片鱗を見せつけた。
2年目は開幕投手を務めて、ルーキーイヤーよりもさらにレベルアップしたクオリティの高い投球を披露。リーグトップクラスの投球だったといえる。夏場に中指の炎症、シーズン終盤に肘の怪我による離脱があったものの、最優秀防御率を獲得した。
しかし、3年目は怪我や故障のリスクを考慮した上での投球スタイルに変わり、小手先で打たせて取る投球が目立った。そのため、先制点を与える機会も多く、勝ちがつかない試合も多かった。
成績自体はリーグトップクラスで、防御率は自身初の1点台を記録した。だが、菅野の本来のポテンシャルを考えると物たらない内容のシーズンだったといえる。また、プレミア12の代表に選出されたが、投球スタイルが通用せず、アメリカ戦では先制点を与えるなど苦い結果となった。
菅野の2013年〜2015年の投球内容を振り返ると、まさに「投球術」に拘った印象が強い。大学時代のパワーで押す投球ではなく、新人ながらも大人びた、かわす投球が目立った。これは、浪人時代に黒田博樹の登板試合を中継で見るなどして参考にした影響が強いだろう。
また、2014年終盤の怪我も影響し、「長く投げられる投球スタイル」も考えていたと見ている。ボールを動かしながらかわす投球は、怪我のリスクも低く、2013年〜2015年の巨人の内野陣の守備の固さを考えると非常に効率的であったのは間違いない。
ただ、力の入れどころなどが掴めておらず、大事な試合でも先制点を与える機会も多かった。その課題点が浮き彫りになったのが2015年にヤクルトと優勝争いをした時期やプレミア12だろう。この課題に対しては以降のシーズンで解決され、しかも、想像以上にとてつもない成長・進化を遂げることになる。
4年目は前年の反省を活かして、力のある速球も加えた投球スタイルになり、4月は4試合33イニングを自責点0、月間防御率0.00を記録して月間MVPに選出された。シーズン通しても、初の最多奪三振を含む、最優秀防御率も獲得し、誰しもが認める国内トップクラスの投手へ成長を遂げた。
5年目のシーズンでは、WBCに選出された。3試合に先発し、14回1/3を投げて防御率3.14の成績を残した。疲れがある中でシーズンが開幕したが、斎藤雅樹以来となる、3試合連続完封勝利を達成(4月18日対ヤクルト戦、4月25日対広島戦、5月2日対横浜DeNA戦)。
また、5月23日の阪神戦では、7回無死一、二塁のピンチの場面で、ギアを上げて3者連続三振で切り抜ける素晴らしいピッチングを見せた。
阪神戦の3者連続三振の映像
プロ入り2年目からタイトルホルダーで2017,2018年と2年連続沢村賞の菅野智之さんが本気出したらこんな投球しちゃうからな pic.twitter.com/eU5AsfFE34
— ゴジキ (@godziki_55) March 8, 2019
この年は、ランナーを得点圏に置いた場面で、127人の打者と対戦して被打率.156の成績を残し、ピンチの場面での勝負強さを見せた。最終的なシーズンの結果は、17勝5敗 防御率1.59と言ったキャリアハイの成績を残した。タイトルも最多勝と最優秀防御率の二冠を獲得し、自身初の沢村賞に輝いた。
菅野はこのシーズンから打者を圧倒するオーラは出てきたように感じられる。試合序盤はボール自体が緩くても要所でギアを上げていき、得点圏にランナー出しても点を取られる気配が全く感じられなかった。さらには、三振を取りたい場面は三振を取って併殺を取りたい場面は併殺を取る投球をしており、高い水準で変幻自在だった。
6年目のシーズンは、キャンプから新球種であるシンカーの習得に重点を置いていた。しかし、シンカーを習得したことにより開幕から調子が上がらず、開幕2戦で自責点9という結果になり、シンカーを封印した。その結果、4月13日の対広島戦では、8回1失点10奪三振の投球内容でシーズン初勝利を挙げた。その後も調子を上げていき、29回2/3連続無失点を記録。最終的には、15勝8敗 防御率2.14 勝率.652、202回 200奪三振 の成績で最多勝利、最優秀防御率、最多奪三振の投手三冠と文句なしの沢村賞を獲得した。さらに、クライマックスシリーズのヤクルト戦では自身初のノーヒットノーランを達成した。
2016〜2018年の菅野の投球は、まさにエースに相応しい内容であった。特に、2017年と2018年の投球内容の力の入れ具合や投球術のバランス感覚は素晴らしかった。具体的には、ストレートの水準が一気に上がり、変化球も大きく曲がるスライダーとスラッターを上手く使い分け、縦のパワーカーブやスプリットも組み合わせて完璧に近い投球をした。
2019年は、これまでの勤続疲労の影響もあり、キャンプからスピードが上がらず、変化球も緩い軌道だった。持ち前の投球術で抑えていたが、ボール自体もよくならない状態が続いき、さらには腰痛による2度の抹消もあり、シーズンを通して不完全燃焼に終わった。
それでも最終的に11勝したのはすごいが、防御率は自己ワーストの3.89。入団から6年連続で到達していた規定投球回数も逃した。日本シリーズでは、背水の陣で登板し、序盤は強度のあるボールで抑えることができたが、中盤から疲れが見え始めて6回1/3を投げて自責点3で降板。故障や不調の中のシーズンではあった。
とはいえ、二桁勝利を挙げ、勝ち運や調子が悪いなりの成績を残し、優勝に貢献するあたりはさすがの一言である。
2020年のキャンプでは、新フォームに取り組んだ上で調整をした。その結果、オープン戦では、17回を投げて防御率1.59と復活の兆しも見えている。菅野が「エース」として復活するシーズンの開幕が待ち遠しい。
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